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3 異世界いきなりゾンビ



ぞろぞろぞろぞろぞろ………。


死体の群れが要塞に迫ってくる様子が司令部のモニターいっぱいに

映し出されている。



「馬鹿な!!如何なる機械・ギミックも反応が無いじゃと!?」


敵を解析しつつ死神教授が吠え立てる。


「仕掛けも無いただの骨や腐乱死体が動くなぞワシを愚弄するか!腹立たしい!」




「解析を継続しながらでいい!状況確認したい!まず、要塞の外部防御は

どのくらい頼れる?物理空間で座礁した事による破損などは?」


烈風参謀は矢継ぎ早に現状を確認しつつモニターの切り替えを急ぐ。

予想通り要塞の至近の位置からも死体が出現している。時間が無い。




「亜空間での戦闘を想定した武装なので実弾兵器は無い。全てビーム兵器なのが

裏目じゃ。荷電粒子ビーム砲もイオンランチャーも大気の減衰を考えとらん設計

で火器管制と共に作り直さねば発射も出来ん!!」


「損傷箇所は?死骸どもが入り込んでくる様な亀裂とか大丈夫か?!」



「損傷は心配要らん。じゃが、、、第3戦闘機発進口がちょうど地面と良い位置に

あって正面玄関のようになっておる。不味い。」


「シャッターとかで閉鎖できねえのか?!」


「亜空間を徒歩で攻めて来る事は流石に想定していなかったからの。閉鎖機構は

無いわい。電磁バリアーも亜空間と干渉するとエネルギーをアホほど喰うから元

から設置しておらん。」




「まあ、だからソルジャーシャインの時空戦闘機に乗り込まれたのよね。」


自嘲気味に少し過去を振り返った烈風参謀は表情を引き締め、

コントロールパネルを駆使して戦力の再編を開始した。



「現有戦力を持ってただちに迎撃を行う。シャイン達との決戦の為に

世界中の人員を要塞に集結していたのが幸いしたな。だが決戦での

損耗で動かせる兵力は878名。治療中の負傷者や整備員の動員は最終手段か。」



「教授、怪人はどれだけ残っている?」



「残存しておるのは下級怪人のモーキン、カノン・タートル、ウオトトスの

3体だけじゃ。そのうちモーキン以外の2体は損傷の治療中で戦力投入出来る

のは最短で8時間後といった所じゃな。」



「わかった。教授は引き続き敵の解析と何か足止めの手段を頼む。そしてただちに

第一級戦闘態勢を発動し戦力になる者を大作戦室に集まるよう号令をかける。私は

全員が集合するまでに編成案と作戦案をまとめ防衛計画を準備しよう。では将軍。」


「烈風参謀の計画は全て認可する。ってか俺はこんな有様だからな。役に立たん。

一時的に指揮権を参謀に任せるからやれる事はやってくれ。責任を押し付けてすまん。」


「足止めか、、。よし!では『自走地雷』を使うとしよう。」



『自走地雷』とは対人地雷に自立AIとマシン脚を取り付けて敵の足元に

歩いて行く自爆兵器である。


積極的な待ち伏せ兵器という闇大将軍の矛盾したコンセプト発案を受け

教授が開発した物だ。背反する要素を技術レベルの向上によってまとめれば

傑作兵器となる可能性があるとの判断であったが、地雷の長所のうち

隠密性と低コストを打ち消しただけの微妙な物しか出来なかった。


しかし『自主的に敵を認識し転がって行く手榴弾』と考えれば白兵戦支援兵器と

して活用できると判断し量産されたシロモノだ。



「なるほど、自走地雷か。ついでに『ハイドル』も発進させちまえよ。

発進口だろ?」


「我らが『時空戦闘機ハイドル』か。良い考えじゃが…要塞暴走の時に

脱出を諦めたじゃろ?ゆえに補給も整備もパイロットの配置もしとらん。

すぐには出せんのじゃ。」


闇大将軍の提案を却下する死神教授に烈風参謀が反応した。


「航空戦力は欲しい。第3発進口に繋がっているB格納庫のハイドル12機の

出撃準備を進め出来次第に発進させるべきだ。それと自走地雷は今すぐに!

敵がもう入口まで来ている!!」




 ○  ○  ○  ○  ○



要塞中枢部・大作戦室


武骨な講堂といった感じの広い空間。映画でも見るような

巨大なスクリーンが正面と両側面にあり正面の舞台の上には

幹部の烈風参謀と死神教授。


その目前に整列しているのは作戦に参加する怪人モーキンと

900名弱の戦闘員たち。



下級怪人モーキン


その名の通り猛禽類を思わせる巨大なクチバシと鋭い眼光を持ち全身を羽毛と

強固な外皮に覆われた怪人だ。両手両足には刀のような巨大な鉤爪を備えてい

るが翼は小さく放熱フィンの役割しか果たして居ない。


飛ぶ事を捨て凶暴な肉食動物となった恐鳥類のディアトリマやケレンケンのような

攻撃的な印象を受ける姿。


鉤爪はモース硬度15、ダイヤモンドと同等の硬さとダイヤより遥かに強固な

靱性を備えており切れ味も抜群。だが恐ろしいのはその鉤爪の付いた腕を

モーキンは高速で伸ばす事ができる。


最大射程10メートルで音速を遥かに超えた超々高速での鉤爪攻撃が可能。

その威力は戦車の複合装甲を簡単に切り裂き2秒で原形も分らないスクラップに

変えてしまう程である。


また防御能力も特筆すべき点があった。


改造前に微弱な念動力を持っていた事を活用し、それを増幅、指向性を持たせた

『防御力場』で全身を覆い、あらゆる実弾兵器を完全無効化してしまう。

機関銃だろうとバルカン砲だろうと戦車の徹甲弾だろうと全くきかないのだ。


その気になれば機甲師団を単体で壊滅する程度の実力はある。


もっとも下級に分類されているのにも理由はある。


エネルギー兵器に対しては脆弱なのだ。敵であったソルジャー・シャインの

標準装備であるレーザーソードや高X線レーザー銃には手も足も出ない。


ゆえに先の決戦の際は後方配置とされ唯一無傷の怪人としてこの場に居る

という訳である。




そのモーキンが鉤爪ある手を挙手し発言しはじめた。


「あの、この場の皆を代表して発言するっス。俺らもう破壊工作活動を

やるのは嫌っス。足を洗いたいんスよ。」


「…貴様も口調が変わったクチか、。」


「すんません、よく聞こえなかったッス。」


死神教授のボヤきに反応しているモーキンや戦闘員たちに烈風参謀が

言葉をかける。


「皆の気持ちはよーっく分っている。心配するな。これは非合法活動の

作戦ではない。」


「あ、そうなんスか?」


「うむ、皆も要塞が暴走し通常空間に出てしまった事は知っているな?

実はここは地球とも違う異世界である事が判明した。そして今、我々は

敵の攻撃を受けている。」



参謀の言葉と同時に巨大スクリーンに外の様子が映し出される。

動く死体や骸骨が押し寄せ、それに向かって足の生えた自走地雷が

次々に突っ込み自爆して敵を食い止めているとんでもない様子だ。


この光景に皆がざわざわとし、遠慮ない言葉が飛び交う。


「うわっゾンビだ!」


「マジッスか!?」


「ゾンビにスケルトンってファンタジーな異世界かよ?」



「どうじゃ皆?これは防衛せんといかんじゃろ?それにゾンビどもを

よーく見てみい。衣服や鎧の残骸を身に纏っとる奴もいるじゃろ?

つまり、、、」


「生きた人間の文明があるって事ッスね?」


「そうじゃ。ゾンビ型生物が衣服を着ているとは解釈できん。知能が

低すぎるからな。『生前』があったと考えるのが自然じゃ。」



「そして奴等が我らが知るフィクションのゾンビのように生きた人を

襲うかも知れぬ。腐敗した姿で動き回れば疫病を蔓延させるかもしれん。」


「ワシらは戦う力がある。なあ、ゾンビどもと戦ってこの世界の人々を

助けてやろうじゃないか。」



「作戦を、、、」


「んん?」


「作戦を聞かせて欲しいッス!!人助けやるッス!!」



「よろしい。まず、あまりにも時間が無い。ゆえに編成は簡易、作戦は簡潔だ。

まず878名の戦闘員諸君を300、300、278の3つの戦隊に編成し

それぞれ戦力の中核として怪人を1体ずつ配置する。」


烈風参謀はモーキンを指差して


「第一戦隊にモーキン、暫定として第2戦隊に死神教授、第3戦隊にはこの

烈風参謀が怪人に変身して配置に付く。そして3つの戦隊が交代で出撃し、

戦闘機発進口と要塞外周に展開して防衛線を形成して迎撃する。」



「敵は日没と同時に出現した事を鑑み、日の出と共に撤退する可能性が

高いと判断した。ゆえに作戦目標は翌朝の日の出まで戦線維持する物とする。

ただし、」


ここで彼女は不敵な笑みを浮かべて


「可能と判断した場合は作戦目標を敵の殲滅へと切り替える。以上だ。

さっそく出撃準備にかかってくれ。」







3つの月に照らし出される草原を埋め尽くす死者の群れ。


至る所が欠損し腐敗している死体というだけでも恐ろしいのだが

それが立ち上がり迫り来るのは気の弱い人間なら卒倒するほどの

恐怖であり嫌悪を受ける姿だ。それが妙にぎくしゃくとした重い

動きでのろのろと歩いていく。


生命の気配を感じるのかゾンビたちは草原に出現した要塞に

ずるずると寒気のする足音をたて迫った。しかし要塞側からも

規則正しい足音が進み出てくる。



かっちょん、かっちょん、かっちょん、かっちょん



足の付いた対人地雷の列が歩調を合わせて要塞内部から

出て来るとゾンビに向かって速度を上げ突撃自爆を決行する。


恐怖感や嫌悪感の無い地雷のAIにとってゾンビなど

ただの動きの遅い標的でしかない。


目標が被らないよう散開し攻撃してゆく。地雷1発の爆発につき2、3体の

ゾンビが吹き飛ぶが新手が続々と押し寄せ間隙を埋め尽くす。終らぬ攻防。


繰り返されたこの攻防に新しい展開が幕を開けた。



武装した戦闘員を引き連れた鳥のような姿の凶悪な怪人が

ゾンビたちの行く手に立ち塞がったのだ。



「クエーケケ!!薄汚いゾンビども!!この『切り裂きのモーキン』が

切り裂いて死体に変えてやるッス!!覚悟するッスよ!!」







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