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27 苦き勝利の杯と突き刺さる一報





帝都バンデルから真西へ約3日の距離に風光明媚なスレン森林

という広い森が存在していた。


美しい森と鏡のような湖が揃い保養目的で帝室の離宮が構えられ

ている。


『スレン離宮』『三色月光の離宮』と呼ばれるそれは現在、

帝都を離脱したリーナン皇子派の拠点となっていた。


離宮の周囲には軍勢が駐屯する天幕が数多く設置され、森の要衝には

エルフの魔法戦士達が守りを固めている。森全体にも守りの結界が

張られていて美しい景色には似合わない緊迫感に包まれていた。



スレン離宮は美しい建物だ。アイボリー色の外壁にダークブランの屋根。

尖塔を持つ優美な外観で陽光が差し緑に輝く森の風景と相まって美術

工芸品のような美麗で豪奢な館である。



そのスレン離宮の三階、バルコニーの欄干に2人の小人が立っていた。

トンボのような半透明の羽を備えた人間の五分の一ほどの体格の小人、

ピクシー族である。種としてはエルフやフェアリーに近い知的種族だ。


2人は年の頃が17歳ぐらいの少年と少女だった。顔立ちは整って

いて明るい表情が更に容貌を引き立てている。身長は38cm余り、

ピクシーにしては長身で丈の短いトゥニカのような服を身に付けている。



ふいにバルコニーのガラス扉が開き1人の人物が現れた。


「ソア!リルケビット!2人とも無事に戻ってくれたんだね。」


現れたのは耳の尖った13歳~14歳ほどの少年だった。短く髪を

切り揃えていなかったら美少女と見間違えそうになる可憐な容貌を

している。


「大袈裟だぜリーナン殿下。俺達はピンピンしてるって。」


そう、この少女のようなハーフエルフの少年こそ果敢な決断と実行力で

知られる帝位継承者候補のリーナン皇子だ。


「本当に心配したんだから2人とも…」


リーナン皇子はニコニコ顔のまま2人に歩み寄り、右手でリルケビットと

いう少年ピクシーの胴体を鷲掴みにし左手で同じようにソアという少女を

捕まえてしまう。


「え?!」


「ちょっリーナン殿下??」


驚いた二人はリーナン皇子の顔をよく見るとニコニコ笑顔のまま

ピキピキと青筋を立てて静かに怒っているのが分る。


「何で勝手に偵察とか行っちゃう訳?よりによってロォス帝国街道の

決戦場とか。そんな超危険な事を僕はお願いしてないし、ましてや

命令しても無いよね?」


「悪かったって。けど引き篭もってたって仕方無ぇーし、俺達が

どんなに役立つか証明するいい機会だし…」


リルケビットの言い分はリーナン皇子を余計にピキピキさせた。


「人に心配させといてその態度は何?これは久しぶりにお仕置きが

必要なようだね。」


「いいっ?!」


「げっ?!」


「2人の小ちゃいお尻は僕の手の力強さと痛さを忘れちゃったみたい

だね。タップリお仕置きしてあげたら思い出してくれるのかな?」



「ちょっとタンマ!無事に帰ってきたんだから許してよ!」


「勘弁してくれぇ!!お仕置きされたらケツが痛くてしばらく

椅子にも座れねえんだよ!」



お仕置きと聞いた途端、リーナン皇子の手から逃れようとジタバタ

暴れだしたピクシー達の様子に皇子は深い溜息を吐き、グイッと

2人を顔の近くに引き寄せた。


「本当にっ!!本当に2人の事を心配したんだよ!!」


ピクシーたちの頭を丸呑みにしそうなほど口元に寄せリーナン皇子は

本音をぶつける。涙声だった。


実は2人にはエルフの血が混じっている。リーナン皇子とは縁戚で

あり一緒に育った乳兄弟だった。イタズラ好きのソアとリルケビット

の姉弟に幼いリーナン皇子はよく泣かされた。そんな時いつも2人

は強い罪悪感に苛まれる。


本当はお仕置きなどよりリーナン皇子に泣かれる方が辛い。



「…悪い。もう無茶な事はしないから泣かないでくれよ。」


「本当にごめんね…。」


「絶対だよ。今度の戦いは洒落になってないんだ。ドラゴンが

空中戦艦と戦って全滅するような激戦地に2人が勝手に向かった

と聞いた時は心配で一睡も出来なかったんだからね。」


「!!っ。殿下、それ違うわ!!」


「ドラゴンを滅ぼしたのは空中戦艦なんかじゃない!俺達はそれを

知らせようと思ってたんだ!」


「どういう事?」


「口で説明するよりアレ・・やった方が早い。」


「『垣間見る想い』だね。そこまで魔力を使う話となるとよほど

の事なんだ。」


『垣間見る想い』とは夢を司る精霊の力を借りて行う精霊魔法、

術者が見た特定の映像記憶を相手に見せる魔法である。


リーナン皇子は2人を解放しバルコニーにあった丸テーブルの上に

降ろす。リルケビットの右手とソアの左手が繋がれソアの右手は

リーナン皇子の左手の人差し指と繋がり皇子の右手の指先をリル

ケビットの左手が掴んだ。


三人の少年と妖精がママゴト遊びをしているようにも見えるが

彼らの表情は真剣だ。三人は目を閉じ歌のような精霊魔法の

呪文を唱え『垣間見る想い』の魔法を発動させる。


魔法発動に成功した瞬間、リーナン皇子の脳内に鮮明な映像が現れた。


大軍が対峙する戦場の風景。一瞬、右端にソアの横顔が見える。

どうやらこれはリルケビットの見ていた光景のようだ。


戦旗から判断すると向かって右側の大軍がメッサリナ派軍らしい。

そしてその先頭には…


(あれが報告にあったデーモン軍団か?思った以上に…)


リーナン皇子は魔術師が召喚したと伝え聞いていたデーモン軍団の

様子が予想とは違っていた事に驚いていた。確かに異形だがもっと

無秩序な存在だろうと考えていたのだ。だが目の当たりにする彼等は

統制が取れており行動はとことん合理的だった。


(召喚した魔物というより精強な軍隊のようだ…)


映像はここで劇的な展開を見せ始める。ザルク軍側から

21頭ものドラゴンが出現し死闘の幕が上がったのだ。


そしてその凄惨な戦いに戦慄する事になる。


全身を粘液で覆った凶悪で不気味な魚の怪物がドラゴンを追い詰める。

強力なはずのドラゴンブレスを平気で受けながら奇怪な攻撃で次々と

ドラゴンを切り刻みドロドロに溶かして行く魚デーモン。


(何?何?何だこれ??)


リーナン派もまたザルクのドラゴンと戦ってきた。そのブレスの恐ろしさ

や竜体の強固さは知り抜いている。知っているからこそ、それを蹂躙する

魚デーモンの危険度が分るのだ。


恐ろしいのは魚デーモンだけではなかった。その配下達も筒のような武器から

火を吹きながら飛翔する短槍のような物を撃ち出し空に逃げたドラゴンを追撃

する。飛翔物体はドラゴンを追尾し次々と炸裂してドラゴン達を苦しめていく。


あのゴールドドラゴンのガリッガーまで殺害しドラゴン隊を排除すると

デーモン達は大人しく脇に引き込む。自分達の仕事を終え邪魔にならぬ

ように整然と。無秩序に暴れたり暴走する事は最後まで無かった。バケ

モノでありながら極めて理性的に振舞う様子にリーナン皇子は脅威を感じる。


(…奴等、魔王軍の怪物よりも統制が取れてるな。)


リルケビットの視線でもある映像は戦況ではなくデーモン軍団に

ばかり向いている。それも無理は無いなとリーナン皇子は思う。

なにせインパクトが強すぎだ。そのまましばらく見ていると

場面が緊迫した。配下から報告を受けたらしい魚デーモンが

こちらを向いたのだ。あの恐ろしい怪物に発見され真正面から

目が合ってしまったと思った。


ここで映像が途切れる。


「ソア!リルケビット!この後どうなったの?!危険な目に遭わされた

とかは?」


魔法が終了すると同時にリーナン皇子は叫んでしまう。


「もちろん、全力全身で逃げ出したさ!」


「無我夢中で飛び続けて気が付いたら逃げ切れてた。」


「いや、身体が無事なのは分ってる。そうじゃなくて奴に睨まれた

時に変な魔術や呪いとか受けたんじゃないかと心配したんだよ。」


リーナン皇子の懸念にソアがあっけらかんと答えた。


「それなら大丈夫じゃない?奴ら魔力が無かったから。」


「は?それマジ?」


ソアの言葉にリルケビットも驚いていた。


術式に頼らない魔力の感知能力はピクシーのような魔法に親しんだ種族でも

まれで個人差がある。ソアと双子の姉弟でもリルケビットにはまったく魔力

感知の能力は無い。


「魔力が無い?では奴らは魔力で実体化したデーモンじゃないのか?!」


リーナン皇子は深刻な表情で考える。先ほどの映像に現れた魚のような

怪物は半漁人などより攻撃的なフォルムをしていた。確かに自然界にも

攻撃的な形状の生物はいる。しかしそんな生き物でも食事や休眠、生殖

など生活に必要な部位は整っている。


しかし、あの魚デーモンと呼んでいた怪物は戦闘や攻撃に必要な部位

ばかりが肥大化した歪な存在だった。魔力で実体化したデーモンだと

思っていたから違和感が無かったが…


(まるで何者かに戦闘用に改造された・・・・・ような異質な存在。)



「ソア、リルケビット。帰ってきたばかりで申し訳ないんだけど…」


深刻な表情のままリーナン皇子は2人のほうを向いて、


「2人なら『精霊門』を通れるよね?至急この事を妖精国ミーツヘイムに

報せてきて欲しい。妖精王クリーク陛下の助言を賜りたいんだ。」


「任された!ちょっくら一飛び行ってくるぜ!」


「了解。助言だけじゃなくて援助もいっぱいしてくれるよう

頼んでみるね。」


「ちょっと!妖精王陛下が謁見して下さるかもしれないから

くれぐれも礼儀を忘れないで頼むよ。」



賑やかなピクシー達が飛び去るとバルコニーに落ち着きと静寂が

戻ってくる。


「メッサリナ皇女よ…」


ソアとリルケビットが飛び去った空を見上げながらリーナン皇子は

呻いた。


「貴女はいったいを帝国に招き入れてしまったんだ?」


そして皇子は不安を払うように頭を一つ振り、緊急の幹部会議を

招集するために伝令を呼ぶのだった。





  ○ ○ ○ ○ ○




固く城門を閉ざした帝都バンデル。ザルク派の守備兵が不安げに

見守る中でメッサリナ軍の大軍勢が到着し包囲を始めていた。


後続が次々と現れるが現時点で既に守備側を圧倒する兵数だ。


そして上空にはラースラン空中艦隊が臨戦態勢で待機。艦隊に

とって空から帝都を撃つのは容易であった。なにしろ帝都の魔

道対空兵器や帝宮を守る魔力障壁は他ならぬザルク派によって

破壊されていたのだ。ドラゴンにとっても脅威となるゆえに。


対地攻撃は容易だが外国の援軍がメッサリナ軍より先に帝都攻撃

をするのは政治的にいかにも不味い。


よって、艦隊は空から厳重に包囲し監視するに留めている。


続々と増えてゆく攻略側に対して守備兵は1万。それに帝国街道の

戦いから逃げてきた敗残兵が数千ほど合流していたが所属はバラバ

ラで編成されておらず士気も最低。戦力として使い物になるか未知数

の兵力。いまザルク派に残された戦力はたったこれだけであった。




帝宮の最奥、皇族が憩う豪華な居間にザルク皇子を膝に抱いた

ヤネル側妃が座っていた。その場にいる侍従や直衛の騎士たち

の表情は暗く誰も言葉を発しない。


「母君様、私達は竜に変身して空に脱出しましょう。私たちが

いなければ敵軍は皆に攻撃しないでくれるかも知れません。」


「殿下、空は敵の空中戦艦が見張っています。空への脱出は

危険です。」


「それでは奉公人に粉して脱出しては…」


「なりませぬ。殿下の威信を損なってしまう方法は論外です。」


「ですが母君様…」


幼い皇子の身体は不安なのか小刻みに震えていた。母である

ヤネル妃は慰撫しようと皇子の小さい身体を抱きしめる。


そこに場違いなほど明るい声が響いた。


「ははっ、ヤネル妃様の申す通り威信は大切ですぞザルク殿下!」


「ザン・クオーク選帝侯。」


入室して来たのはザン・クオーク選帝侯だった。彼は不安など

微塵も感じていないかのような明るい調子で皇子に歩み寄る。


「ご案じ召さるな。帝都の城壁は堅固で高く精兵1万五千が守備して

おります。当分は持ちこたえましょう。その間にラゴル王朝に連絡を

取り新たなドラゴンを派遣してもらえば1発逆転です!」


「…そう上手く行くでしょうか?」


「大丈夫です。殿下は総大将なのですからドッシリ構えて我ら

臣下の者に全て任せておられませ。」


パンパン


ザン・クオーク選帝侯が手を叩くと甘い匂いと共にメイドが

ワゴンを押して入ってきた。


「腹が減っては何とやら。殿下の為におやつを御用意いたしました。」


ワゴンの上にはザルク皇子の好物、梨の糖蜜煮とホットミルクが載っている。


ザルク皇子は目を輝かせてワゴンを見、そして少し不安げに母を見上げた。

ヤネル側妃は優しく微笑み、


「お召し上がり下さい殿下。母は少しザン・クオーク殿と話をして参ります。」


そしてザルク皇子は嬉しそうにテーブルに着き、その目前に好物が並べられた。


ヤネル側妃は立ち上がりザン・クオーク選帝侯と隣の談話室に向かう。


談話室に入る直前、ヤネル側妃は愛する我が子を振り返り見る。


数瞬、ザルク皇子が両手でカップを持つ幼い仕草でミルクを飲む

姿を慈愛の瞳で見つめた後で談話室の扉を閉めた。


談話室内はやや狭いが豪華な調度品が揃いアンティークな

バー・キャビネットには超が付く高級酒が揃っている。密

談に使う部屋なので窓は無く完全防音の仕様になっている

空間である。


扉を閉め防音によって皇子に声を聞かれる心配が無くなった

ヤネル側妃は前置きも無しにいきなり本題を切り出した。


「ザン・クオーク選帝侯。私の首と貴方の首の二つをメッサリナに

差し出せばザルク殿下の助命は叶いましょうや?」


「我らの首ですか?」


流石に驚いてザン・クオーク選帝侯は目を見開いた。

そしていかにも残念という表情で、


「それは難しいでしょう。私の首と皇位継承者たるザルク殿下

とでは価値が違いすぎます。」


「そんな…」


「ですがご心配めさるな。私にザルク殿下の威信を守り事態を

打開する妙案がございます。」


「そ、それは誠かえ?」


「ええ、もちろん本当ですとも。」


ザン・クオークはバーキャビネットからヤネル側妃が愛飲する

最高級の果実酒を酒杯に注いでヤネル妃に差し出す。


「これを飲んで落ち着き、ソファーにおかけ下さい。我が打開策を

ご説明申し上げます。」


ヤネル側妃は一息で酒杯を飲み干すと我が子を救う打開策を聞く

為に希望で満ちた笑顔でソファーに腰を下ろすのだった。






一方、包囲戦を展開しているメッサリナ軍本営。


全軍が到着次第に総攻撃を掛ける手筈になっており、その

準備の為に軍首脳が集結していた。


最高司令官としてメッサリナ皇女に実務を請け負うレク

トール選帝侯。各部隊の指揮官たちにラースラン王国の

ユピテル王子と艦隊指令のステッセル提督。


ラースラン関係者が居るのは総攻撃の際に帝都正門攻略に空中艦隊

を使う為だった。


超低空まで下降した戦列艦5隻の主砲を正門に向け一点集中砲火で

一斉射撃。破城槌の代わりに正門を木っ端微塵にし主力部隊が帝都へ

攻め入る。


友邦との戦地協力を目に見える形で喧伝し派手に戦いを決めてしまう

腹であった。その為に恐怖のデーモン軍団ことガープ戦闘部隊に出番

は無く打ち合わせのこの場に出て来てはいない。


軍議は滞りなく進行し後続部隊の到着予定から総攻撃の日時を

決定しようとした時に急報が入る。


「帝都から休戦旗を掲げた軍使が出てきました!」


伝令兵の報告に会議は一旦中断とされた。


「リットマス将軍!」


「はっ!」


レクトール選帝侯は自身の副将であるリットマス将軍に

命令する。


「お前が軍使の応対をせよ。交渉権限は与えるが重大な事は全て報告!」


「了解!」


この場合、帝国ではメッサリナ皇女やレクトール選帝侯は軍使

と直接に会わない。起死回生を狙っての暗殺がありうるからだ。

今回はリットマス将軍が対応し反応を見ながら交渉する。


将軍が交渉現場に向かうと本営では弛緩した雰囲気が漂う。


「…どうやら総攻撃は無くなったようですね。」


そう、この段階での軍使なら全面降伏の申し入れである可能性が

高い。そして一刻も早い戦火の終結を願うメッサリナ皇女がよほど

の悪条件で無い限り降伏を受け入れるだろう事は皆分っている。


手柄を立てる機会は消えるが帝都をめぐる戦いは終る。


総攻撃の試案をまとめた書類の整理などして待ち、戻ってきた

リットマス将軍の報告を受け…


「何と!!もう一度申してみよ!!」


一同は驚愕した。


「はっ!!ザルク派は全面降伏、ザルク皇子とヤネル側妃は

毒杯を飲んで自決したと軍使が申してきました。」


「ザルク皇子が毒を飲んで自害…本当なのか?!」


「軍使が言うに要望があれば2人の遺体の検分に応じるとの事です。」


「むぅ…。」


リットマス将軍は豪華な装丁で封蝋のされた巻物を取り出した。


「これは自決する直前にザルク皇子が出した声明文との事です。」


「読め。」


レクトール選帝侯が即座に命じた。もし魔法的な罠が巻物にあった場合、

被害を被るのはリットマス将軍。それが分かっていながら彼は堂々と巻

物を開き内容を読む。


「では、『私アルガン・ナル・ザルクは敗北を認め、自らの命を以って

責任を取る事を決意した。私の誇りと矜持、威信にかけ虜囚の辱めを受

ける事を拒絶する。全ての責めは私と我が母ヤネルにあり命を以って購

おう。故に我が旗の下で戦ったザルク派将兵ならびにザン・クオーク選

帝侯に一切の責任は無く彼らに慈悲のある寛大な処置を心より願う。』

以上であります!」


リットマスの報告が終っても誰も言葉を発せず沈黙が続く。


苦みを含むあっけない幕切れに皆言葉を失ったのだった。





その頃、ガープ艦でも緊迫した空気が張り詰めていた。


「連絡が届くのが遅れたのは無線封鎖と衛星が未整備なのが

原因ですね。しかしそれでも3日のタイムラグとは。これは

検討が必要でしょう。」


「それでどうなさいます?ウオトトス暫定指揮官。」


「タイムラグがある以上、いまさら慌てても無意味です。我ら

は仲間の力を信じて計画通りに行動するしかないでしょう。」


彼らの元に届いた一報は2つ。


二報・・と言うべきか。そのうちの一通は青作戦に参加して

ラゴル王朝に攻め込んでいる部隊からであった。


『侵攻は順調に進み竜都ドルーガ・ライラスを攻撃圏内に捕捉。

間も無く総攻撃を開始する。』



問題はもう一通であった。




『ガープ要塞に魔王軍襲来せり。』




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