14 闘魔将VS改造人間
ストックの残りが乏しくなってまいりました。
申し訳ないですが今後は週一を目安に不定期掲載とさせて頂きます。
「第一、第二戦隊、及び怪人カノンタートル出撃開始。」
要塞防衛の為に編成してあった3個戦隊のうち2つとカノンタートルを
烈風参謀は投入した。600名の戦闘員と怪人1名だ。
そしてグロリス要撃作戦を即座に設定できた立役者に礼を述べる。
「ジジルジイ殿、貴方に提供して頂いた闘魔将グロリスの特殊能力の情報と
対処方法の考察は作戦立案に大変有効だった。極めて短時間ながら要点を
纏めた的確な情報提供に感謝を。」
「いやいや、その過程でこちらのシニガミ教授殿と情報交換と討論は
興味深かった。も少し時間があればじっくり教授殿の英知に触れたい
くらいじゃ。」
「ワシの方こそ魔力についての説明に知的興奮を抑え切れん。あのヘンテコな
格好した魔王軍の将を始末したら魔法についての講義をお願いしたい。」
「その闘魔将グロリス討伐作戦が随分と豪快と言うかストレートじゃな。
作戦が決まったと同時に出撃されたカノンタートル殿じゃったか?グロリス
についての情報をレクチャーしてからお出しになった方が良かったのでは?」
「問題無い。グロリスについてのデータをカノンタートルは受け取っている。
そうだろう?」
『はいな。闘魔将グロリスの能力から司令室で爺様同士がずいぶん仲良う
なっとるのも全部把握しております。』
闇大将軍がジジルジイ大導師の疑問に答えるようにカノンタートルに呼びかけ
モニター越しに即答したカノンタートルの様子にこの世界の人々がどよめいた。
「我々には無線通信技術という物がある。距離があっても即座に情報の
伝達が可能なのだ。近々に打ち上げる人工衛星というものが準備できれば
この大地全てが通信可能範囲となる。」
それはマールート世界の人々にとって絶句するに値する驚愕の事実だった。
○ ○ ○ ○ ○
大魔王とその眷属によって構成されている魔王軍はこの
マールートの外の世界から襲来してきた。
元の世界で暴虐の限りを尽くし数多を滅ぼした魔の軍勢。
マールートと同じく万物に魔力が宿りその多寡によって
存在の大きさや価値が決まる常識の世界より渡来した
魔王軍。
魔王軍四天王の直属で単独でも1軍に匹敵するという
5人の闘魔将たち。
その1席を占める闘魔将グロリスは派遣されて来たハヴァロン平原で
二つ名の毒怪の呼称に恥じぬ妖艶で毒気を帯びし声で嘲笑していた。
「妾の派遣を強引に決められたボーゼル総司令は流石の四天王筆頭。慧眼よの。
ハヴァロンに何も無いと断定したクロサイト閣下や闇影衆は赤っ恥じゃわ。」
まるで粘液をかけられた鈴のようなヌメリけのある笑い声であざ笑い、
面白くて仕方ないと言った風情で目の前の光景を評した。
「しかしまあ、これほど巨大な異変が何故か小石ほどの魔力しか
放ておらぬ。読み違えるのも仕方なかろうて。」
グロリスの目前には山のように巨大な鋼鉄の城塞が建っていた。だが
この時点で彼女は大きな間違いを犯している。
グロリスが感応した魔力は平原の砂や小石が風に巻き上げられて
要塞上部や表面の凹凸に付着して放っているもので要塞自体は
一切の魔力を放ってはいない。
万物に魔力が宿り存在の大きさと魔力の強さが比例する世界から
来たグロリスにとって魔力が存在しないなど概念の外である。
ゆえに要塞から出現し向かって来るカノンタートル率いる迎撃部隊に対し
グロリスが取った対応は爆笑する事だった!
「あはははははははっ!!見かけは大層な化物共じゃが
感じ取れぬほど微弱な魔力。ただの案山子じゃ。こけ脅しにもならぬわ。」
グロリスが笑っている間に第一戦隊と第二戦隊は予定の射撃位置に付く。
第一戦隊が携行している武装は50ミリ自動擲弾銃。1発が手榴弾なみの
威力を持つグレネード弾を機関銃のように連続発射で撃ちまくる兵器。
それが300丁。
第二戦隊が装備するのは2人一組で運用する砲だ。歩兵携行武器としては
ガープ最強の携行式電磁レール砲。掠っただけでMBTが木っ端微塵になる
電磁砲が150門。
そしてカノンタートル。
左右に布陣した第一、第二戦隊よりも前方に立ち攻撃態勢を取る。
先に敵側が戦闘態勢に入ったのを見たグロリスはようやく笑い終わると
「興が乗らぬわえ。妾が直接相手する事もなかろう。」
言うなりグロリスは手に持った頭蓋骨を放り投げる。2つの骸骨は
地面に落ちる瞬間に変異し始めた。
大きさが数倍になり首の付け根付近から長い長い背骨が伸び、その背骨から
妙に鋭い肋骨が生えてゆく。
あっという間に2体の骨パーツで出来た大蛇のような化物が出来上がる。
「妾自慢のボーンゴーレム、サー・イデル共じゃ。ついでに妾の手勢も
お披露目しようかの。」
左手の甲を口元に当ててグロリスが言い終えた途端、その後方の
地面から何者かが大量に湧き出した。
出現したのは動く屍の群れ。しかしゾンビのように腐乱してはいない。
乾燥し硬い革のようになった皮膚が骨の上に張り付いているような姿。
空洞になった眼窩から不気味な赤い光を放つ屍共は知性があるらしく
整然と整列している。ゾンビより上位のアンデッドモンスターである
レブナントだ。その数は1000体。
さらに巨大な影も現れる。人間の数倍、身長10メートル余の死体。
巨人族のアンデッド、ジャイアントゾンビ。これがレブナント軍団の
前方に横一列で100体が並ぶ。
中央で高笑いするグロリスが何らかの力を行使しているのか真昼間だと
いうのにアンデッド軍団が陽光でダメージを受ける様子は無い。
「楽しそうに笑っとるな。自分らの力を過信しとるんやろなぁ。」
カノンタートルは余裕であった。
こちらは相手の情報がある。相手はこちらを何も知らない。
負ける道理があろうか?
「よっぽど『超魔力障壁』と『滅びの瞳』に自信があるんやろうけど
油断大敵やで?」
カノンタートルはかつて地球で初めて特務戦隊ソルジャーシャインと対峙し
相手を見下した挙句に敗退した苦い思い出を噛み締めつつプロトンビーム砲の
発射体制を取った。最大出力での砲撃はこの世界では初めてである。
(参謀はんの計算通り行くかどうかやな)
カノンタートルはジジルジイ大導師によってもたらされたグロリスの情報、
特に超魔力障壁について考えながらエネルギー充填を行う。
曰く、闘魔将グロリスは魔王軍の中でも最高クラスの防御力を持つ魔力障壁を
持ちこれで身を護りながら『滅びの瞳』と呼ばれる力で敵を毒化や麻痺、石化
させて仕留めるとの事。
グロリスの超魔力障壁は英雄クラスの武技による斬撃や攻城用の投石器による
巨岩すら跳ね返し最上位魔法のギガブラストやメテオすら通さない。
唯一、勇者ゼファーの騎竜であるミスリルドラゴンの放つ電光ブレスだけが
グロリスの障壁を貫いたが威力が百分の一まで減衰されてしまい、本来なら
砦を丸ごと消し飛ばす威力がある電光ブレスがグロリスに対しては僅かな
掠り傷を付けただけで終ってしまった。
(頼むで、百分の一!!)
「ちゃんと減衰しといてなぁ!!」
叫ぶと同時にカノンタートルの砲身から青白く輝く極太ビームが
放たれた。
「うぬぅ?」
自分に向け真っ直ぐ放たれた攻撃と思われる光線に尋常でない予感を
感じたのであろう。グロリスは超魔力障壁を最大の力で張り、さらに
2体のボーンゴーレムを盾の様に前方に並び立たせる。
しかし、まさにその瞬間、目も眩む光りと圧倒的な破壊力がグロリスを
中心に炸裂した!!
ズガアアアアアアアアアアアアン!!!
大爆発の振動はガープ要塞内まで轟き響く。
司令室の者は全員無言で爆発の様子を写すモニターを見つめる。
マールートの人々は呆然と、ガープ構成員や三幹部は満足げに
カノンタートルのもたらした破壊の力を確認していた。
カノンタートルの主砲は名前こそプロトンビームと称するが実体は反陽子砲だ。
標的以外に対消滅しないようプラズマ砲弾に包まれた反陽子を撃ち出す兵器。
ビーム砲弾の中の反陽子は極めて微量だがその対消滅で発生するエネルギーは
熱量に換算すればおよそ20兆ジュール。TNT5キロトンの破壊力になる。
つまり全力で発射すれば威力は戦術核級だ。本来なら距離400メートル
などという至近距離で放つ武器ではないのだ。
5キロトンの百分の一で0.05キロトン、つまり1トン爆弾50発分の
大爆発がグロリスを中心に巻き起こり直径50メートル近いクレーターを
生み出し付近のアンデッド軍団の三分の一が消滅した。
さらに残存するアンデッド達も高温の輻射熱を受け火ダルマ状態だ。
どうやらレブナントは知性はあるが炎に弱いらしく火を消そうと
暴れている。
炎にもがき苦しむ死人の群れ。まさに地獄の光景だがそこに追い討ちが始まる。
ガープ第一戦隊の50ミリ自動擲弾銃が一斉に火を吹き、撃ち出されたグレネ
ード弾が雨あられと降り注ぎ連続した小爆発で魔王軍陣営が埋め尽くされる。
巨大なジャイアントゾンビ達も第二戦隊の電磁レール砲の直撃を受け次々と
消滅していく。物理弾最強の射撃の前にジャイアントゾンビの巨体も針で
刺された水風船のように一撃で粉砕されるしかない。
もはや戦闘は順調に推移し残敵掃討へと進む。
・・・かに思われた。
「っ!!」
司令室の烈風参謀がモニター下のマイクを引っ掴み、
「カノンタートル!ただちに攻撃を再開せよ!グロリスがまだ生存している!」
クレーターの中心で地に臥していた人影がゆらりと立ち上がる。
あれほどの大爆発の直撃を受けながらも闘魔将グロリスは生きていたのだ!




