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98 太古の邪神VS外宇宙の超生命体





 シュン!!




虚空より真紅の髪と真紅の瞳に赤い装備に身を固めた少女と

ミスリルドラゴンが出現する。


場所はラースラン王国の王都アークランドルを望む大空。

炎髪姫ラニアの転移で一緒に来たミスリルドラゴンのルコアは

翼を広げ彼女を背に乗せながら絶句していた。


彼女達は勇者ゼファーをずっと遠方、ゼファーの妹レアが

匿われている冒険者の街バーゼルークへと送り届けた。


聖女アスアの懸命な治癒で腕ごとザックリ斬られたゼファーの

大怪我は即座に治されたが直接身に付けていた邪神の侵食は肉体

だけでなくゼファーの霊体へも影響を与える寸前までやれれていた

惨状。むろん聖女は治せるが無理に急いでは悪影響が出かねない。


そこで勇者を絶対安静としてアスアと残し二人だけで急いで戻って来た。

世界の命運をかけた戦い。勇者パーティーが目を背ける訳に行かない。


邪悪な本性を表したゼノスと対決していた満身創痍の闇大将軍。

世界を守るため闇大将軍と共闘すべく戻ったラニアとルコアであった。


厳しい戦いになるだろうと覚悟を決めて来たが……戻って見た状況は

想像を絶していた!


周りの時空を歪める悪の磁場を放つ二つの超存在が対峙している。

あまりの凄まじさにそれ以外は何も目に入らなかった。



ルコアには特殊スキルとして相手の力量やレベルを見抜く力がある。

だが邪神ゼノスと対峙する化物、いずれも強さの上限が見通せない。


(こんな事は初めてじゃ!)


ルコアは眩暈を覚えるほどの強大な力を有する奇怪な存在に戦慄した。

あれもまた世界を滅亡させうる存在だ。


「何なのあれは・・・・・・え?」


あまりの光景にラニアが呻きかけた時、信じがたい超高速で彼女達の

傍らに何者かが飛来した。あまりのも速く戦闘態勢を取る間も無い。


「!!!」


光り輝くクリスタル結晶で優美な流線型をした甲殻の怪人。

これもまた強烈な強さを持つと察したルコアが誰何する前に

相手は名乗った。


「勇者ゼファーの仲間である炎髪姫ラニア殿と輝竜姫ルコア殿とお見受けする。

私は闇大将軍と同じ新勢力ガープ三大幹部の1人で烈風参謀と申します。」


「…その名前、小耳に挟んだ事はある。じゃが優れた外交官とは聞いていたが

戦闘力も実に恐ろしいのう。流石はあの闇大将軍の同僚か。」


その戦闘力を見抜いたルコアに烈風参謀は最上級怪人クリスタルテラーの

姿のまま一礼し前置き無しに本題を切り出した。


「今、我々は最終手段として我々を支配していた強大なる悪、ガープ大首領を

蘇らせました。世界を破壊できるゼノスを倒すには同じ力を持つ大首領をぶつける

しか手段が無かったからです。」



「!!あれが貴様達の元支配者、異世界の巨悪か!!」


「っていうか世界を壊せる存在が2人もいる状態?!」


烈風参謀は頷くと彼女達に作戦への協力を求めた。なんとも性急な事だが

可能な限り手短に、急がねばならない。即断即決で協力を決めたラニアと

ルコアはその場で作戦内容を聞いた。その時は寸前まで迫っている。



対峙したままの邪神ゼノスとガープ大首領だが放射する妖気やオーラは

加速度的に上昇している。それは嵐の前の静けさであった。






(解析完了。……成る程ねぇ。)


ガープ大首領は『高度計算知能』で状況と相手の情報を把握した。


高度計算知能、それは短く『超推論』とも呼ぶ大首領の特殊機能だ。

僅かな情報から論理的な組み立てで推論を立てる。スーパーコンピューター

を超越する頭脳の中で推論を何兆回も繰り返し検証も何兆回も繰り返す。

その上で取得可能な現実情報と照合して1秒以内に全てを正確に知る。


事前情報を知らぬ初対面の人間と挨拶に一言の言葉を交わすだけで

その人物の生誕から現在までの経歴と体験、思考して来た事全てを

完璧に知る事が出来るといえば超推論がどれほどデタラメな高度技術か

分るだろうか?


(古代の召喚事故でやって来た暴食を司る悪神。ここまでは新勢力ガープの

皆も調査していたけれど…まさか神界に在していた時からから上位の神々をも

最高存在として喰らう野望を持っていたなんてね。許せないな。最終的に全て

私の支配下になる物を食い散らかそうなどと……)


置かれた状況についてはゼノスに対するような怒りや敵意を感じなかった。

むしろ上手い作戦を考えたと感心する。強制的に戦わさせられるのは

癪だが外部にアプローチ出来る状況の方がマシだ。閉じ込められたまま

所有物の世界を食い荒らされるよりは自分の手で対処出来る方が良い。



「私が支配する世界を食い荒らそうなど許さんぞ悪しき邪神め!!

私が世界を守る。貴様を私の・・世界から抹消してやろう!!」







〈ガープ大首領、トンデモナイ奴ダナ……〉


一方の邪神ゼノスも『全知』の特殊スキルで対峙する怪物が

ガープの元凶であるガープ大首領と知りその正体と目的を

知覚した。


この世界には無い概念や科学用語と共に知覚したガープ大首領

という存在。それは外宇宙にあった超高度文明が生み出した

兵器生物であった。高度の演算機能と絶対の攻撃能力を持ち

単独で戦略・戦術を立案し侵攻から征服まで全て遂行する超生物。


1体で全自動の侵略を行う生きた征服惑星量産装置。


そうして産み出された超生物に超高度文明への忠誠を

植え付け銀河征服計画の切り札として送り出される筈であった。


だが征服するプロセスで現地生物を支配し統治する

必要から与えた擬似人格が付与した膨大な情報と混じり合い

本物の人格となり、支配プロセスを精神の中核とした支配欲の

権化へと変貌。植え付けられた忠誠心を消し去り超高度文明に

牙をむいた。


その超生物は超高度文明を滅ぼし侵略を開始。支配を受け入れぬ

星間文明をも次々と滅ぼして行った。降伏した惑星には超生物の

脳細胞で作られる『統治体』を配置し全てを統治体が支配する

完全統制とし、自主的な発展や可能性を奪い住民の自由思考をも

奪って支配してきた。


その超生物こそガープ大首領。


ガープ大首領は地球という惑星で計算違いに敗退したが

別次元に潜伏して逆襲を企てようとしてこのマールート世界を

発見する。異世界の存在を感知したガープ大首領は戦略方針を

大きく転換した。


マールート世界を支配し地球も支配し他の異世界も探し出して

支配する。無論それぞれの世界の全宇宙支配が前提だ。


果てしない支配欲の怪物。


邪神ゼノスは怒りに打ち震える。全ての世界はゼノスの食べ物だ・・・・・・・・

それを下らない支配欲でゴミのように汚そうとしている。絶対に

許す事は出来ない。



  (我ガ喰ラウ世界ヲ貴様ノ支配欲デ汚スナド断ジテ許サン!!

   貴様カラ我ガ世界ヲ守リ抜ク!消エ失セロ!ガープ大首領!!)





対峙する邪神ゼノスとガープ大首領は自分勝手な理屈で

世界の守護者を自認し、むき出しの敵意を爆発させた!!!


間髪を入れず凄まじい攻撃の応酬が始まる。



ガープ大首領が次元断裂攻撃を連続で放つ。それ1発で大魔王クィラを

揺るがせた闇大将軍の時空崩壊砲と同等の威力の攻撃だ。しょっぱなから

殺意が高過ぎる猛攻撃!そこに容赦は一切無い。


キュアアアアアアと背筋の凍るような硬質の音を響かせながら

迫る大首領の次元断裂。敵の肉体が存在する空間の次元ごと

裂く攻撃に普通の対抗手段など存在しない。だが普通ではない

ゼノスは自身の肉体の表面の次元断層に一時的な口を出現させ

絶大な威力を持つ大首領の攻撃を直接喰らって打ち消した。


食い切れなかった僅かな分の攻撃がゼノスに当たり苦痛の呻きを

上げさせるが大したダメージが入っているように見えなかった。


だがゼノスに入った次元断裂攻撃の余波を磁場シールドを展開して

受け止めた烈風参謀ことクリスタルテラーは威力の重さに絶句する。


その余波1発で魔王軍四天王のひとりが倒されかねない破壊力が有ったのだ。

だが大首領の攻撃は雨あられと邪神に降り注ぐ。余波も発生し続けるだろう。

クリスタルテラーは改めて決死の覚悟を決め飛び出して行った。



先手を取られた形だが当然ゼノスも凄まじい反撃に出る。


闇大将軍らを粉砕した衝撃波を産み出した妖念動力を収束し

ガープ大首領に向け放射した。


陽炎のような空気の揺らめきが竜巻状に大首領へと殺到。

本来は無色透明の妖念動力に周囲の空間が歪められ竜巻に

見えているのである。


 オギャアアァァ…    オギャアアァァ…


気味が悪い事に妖念動力の竜巻が上げる音は赤ん坊の泣き声に

そっくりであった。大首領におぞましい攻撃が到達する。



邪神ゼノスの怪異な初撃。


それに対しガープ大首領は自身を虚数構成体に変え回避し、そのエネルギーを

虚数空間に引き込んで自身のエネルギーに変換する、あの死神教授の得意技で

対抗しようと目論んだ。だが邪神の攻撃に虚数変動がある事を感知すると即座に

実数基に身体を戻し、攻撃のエネルギー構成に対応した力を付与した加速素粒子を

ぶつける攻性防御に切り替え対応した。


(全知とやらで虚数空間関係の防御法を突破する術を見出したか。だが

各種の攻性防御は分っていても突破できまい?まあ私もエネルギーを

大幅に消耗するがゼノスめもそれは同じ筈だ。)


読み解かれても理論的に無効化できない防御手段で対抗するガープ大首領。


だが直前での防御切り替えに僅かな妖念動力を防ぎきれなかった。

エネルギー損耗を覚悟で大首領は直接防御で受け止める。


『……不愉快だな。』


表面的には大首領に与えた影響は悪態の言葉を吐かせただけだが

その攻撃の凄まじさは加速素粒子の攻性防御で打ち消された

妖念動力の余波を受け、偉大な筈のオリハルコンドラゴン達が

風に舞う木の葉のようになりながらも必死に結界を張り何とか

消滅させて行った。もし防げなかったら王都アークランドルと

空中都市ドルーガ・ライラスは粉砕されていただろう。



超存在同士の攻防は激しさを増していった。


だが流れ弾や外を狙った攻撃は飛び出しては来なかった。

支配する、あるいは喰らう世界を連中は壊したくなかったのだ。


逆説的な皮肉で連中は世界を守るつもりだった。

しかし余波は容赦なく飛んで来る。


神竜達や妖精王クリーク、妖精宰相オーロアに勇者パーティーの

魔術師ラニア、そして魔術師ギルド総帥バーサーン最高導師ら

世界最高峰の魔法能力を持つ者達が全力を振り絞り余波に対処していた。


だが…科学的な余波をほぼ1人で必死に防いでいる者がいる。

最後のガープ大幹部、烈風参謀。彼女は増大する負担をものともせず

不退転の決意で獅子奮迅に巨悪の戦いの余波を独り防ぎ続けていた……




世界の命運を決める最終決戦が世界の果てなどではなく

人の住まう都市の至近で戦われた事はこの世界の歴史が

始まって以来の事であった。


当然、余波の余波が飛んで来る。付近の丘陵が丸ごと吹き飛ばされ

巨大な岩盤が雨あられと王都アークランドルに降り注ごうとしている。


王都の結界や空中艦隊の砲撃、魔術師ギルドの防御魔法でも防いでいるが

守りの主軸は王都の外に陣地を構えたままのガープ戦闘部隊。そして

妖精国ミーツヘイムの白銀騎士達と精霊使いアスニク姫。そして竜国の

ドラゴン達と勇者の騎竜ルコアだった。


ガープ陣地からミサイルや電磁レール砲がひと際大きな岩盤を打ち砕き、

アスニク姫の召喚した風の上位精霊ジンが吹き飛ばす。それでも残る

岩や石礫を稲妻のように飛ぶ白銀騎士やドラゴン達が撃破した。


幸い、余波は人の居ない方角にも飛び、こちらに向かって来る破壊にだけ

対処すれば良いから王都防衛の者達は少しだけ余裕があった。


岩盤の雨を凌いで一息つく精霊使いのアスニクは周囲の状況に呆れる。


「犠牲者は抑えてるけど人の住んでない所はメチャクチャじゃなの。

ラースラン王国も大変ね。」


それに竜国のミスリルドラゴンが応えた。竜帝王のルーフルだ。


「まず世界の滅びを食い止めるのが先決でしょう。それに人が死ななければ

復興出来ます。おそらく大国のアルガン帝国や新勢力ガープが豊富な復興資金を

提供してくれるでしょうから復興需要から好景気になるかと思います。」


強大なミスリルドラゴンで竜国の王でありながらルーフルは礼儀正しく

丁寧だ。逆にアスニク姫は幻想的に美しいハイ・フェアリーでありながら

口が悪かった。


「そんな楽観的によくなれるわね。勝つかどうかも分らないのに。」


そこにもう1頭のミスリルドラゴンが話しに入って来た。ゼファーの仲間

ルコアだ。


「負けた時の事を考えても暗くなるだけじゃぞ?勝ち残って明るい未来を考えよ。

既に充分に勝つ策を考えた強者達に全て託した。わし等はそれを信じるのみ。」


そう言い切ってルコアはルーフルの方を向き、ドラゴンの顔で

器用に悪戯っぽい笑顔を浮かべて


「新しき竜帝王ルーフルよ。直接言葉を交わすのは初めてじゃな。わしはルコア。

お前さんの大叔母にあたる者じゃ。」


「え?!」


「この度はゼファーの小僧っ子と一緒に大魔王クィラを倒せたし、わしを殺そうと

しておった元竜帝王ラゴルのアンポンタンはくたばった。この戦いが終わったら

一度里帰りしようと思っておるのじゃ。そう言う訳で新しい竜国を訪問させて

もらうで宜しくな。」


「ぜひとも。その為にもこの大戦を勝ち抜きましょう。」


そこにアスニクの緊迫した声が届く。


「いい感じのお話はそこまで!!次が来たわ!!」


ガープ大首領から邪神ゼノスに不気味に光る怪光線が発射された。

怪光線の正体は数百兆ガウスに達する磁力光線。その破壊力は

抜群だ。それを邪神ゼノスは周囲の空間に黒い口だけ・・

無数に発生さその口に自然現象に干渉する呪言を唱えさせ迎撃する。


結果、不気味な黒い口の大群は怪光線に一掃されたが光線攻撃の

消滅に成功した。しかし黒い口が潰される際に発生した衝撃が

余波として周囲に拡散。その殆どを烈風参謀が防いだ。


しかし不運な事に僅かに残った衝撃が王都付近に建設された石橋に当たり

爆裂粉砕。岩石の破片が王都を含む周囲に弾丸のような勢いで飛び散った!


王都を、人々の命を守ろうと守護する者達は全力で駆け出し

迫り来る破壊に怯む事なく挑み防いで行く。




周囲に破壊の大渦を巻き起こす超存在の死闘はその激しさを増しながら

世界の運命を揺り動し、戦いは最終局面へと突き進んで行くのだった。






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