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弱者救済

作者: 闘魂

電車で痴漢被害にあった。


私は痴漢の腕を掴み、大声を出して痴漢被害を周囲に訴える。


痴漢は「誤解だ!」「冤罪だ!」などと喚きながら、周りの人たちに押さえつけられる。


泣きじゃくる私は親切なおばさんたちに介抱されながら、次の駅で警察官に連れていかる痴漢の背中を見つめていた。


ネットでは、痴漢の冤罪とかで女性を叩くコメントばかりだけど、女性の証言を疑われ、いちいち被害者が証拠を用意しないといけなくなったら、即座に助けを求めることが出来ない。

しかも冤罪であった場合、女性が罪を問われるようになったら、それこそ怖くて痴漢被害者は黙っていないとけないじゃないか。


もちろん、私も痴漢をした人が、あの男の人だったのかはしっかりと確認していない。

満員電車だったし、たまたま腕を掴んだのが、近くにいたあの人だっただけかもしれないけど、私が被害者であることは間違いない事実なんだ。

被害者である私は守られるべき存在であるのは本当だし、それが正しくないといけない。



20年後、私は結婚し、子供も娘と息子、二人授かった。

順風満帆で幸せな毎日。


そんなある日、一本の電話がかかってきた。


父が痴漢で捕まったのだ。


その翌日、今度は夫が痴漢で捕まった。


さらに翌日には、高校生の息子が痴漢で捕まった。


彼ら3人は冤罪を訴えている。

しかし裁判をするとお金がかかるので、女性たちに示談金を払ったが、すぐに噂は広まった。

父は近所から犯罪者として見られ顔を隠しながらでないと外を歩けなくなった。

夫は会社にいられなくなり、再就職活動。

息子は学校でいじめが始まった。


それでも前を向いて頑張る彼らに、さらなる悲劇。


またしても、痴漢として3人が捕まったのだ---


冤罪を証明することなど出来ない。再び示談金を支払った。


少しでも人通りの多いところに行けば、すぐに訴えられる。人通りの少ない場所でも女性しか周囲にいなければお騒ぎされる。


何度も何度も支払う示談金。

持ち家も、自動車も、およそ財産と呼べるものは何もかも失った。保険も定期も解約。積み重なる借金。


ある日、夫と歩いていると、見ず知らずの女性が近寄ってきて、急に喚きだした。


「痴漢!この人に痴漢された!」


私が妻だと知り、舌打ちをして離れていく女。


警察に訴えたが、冤罪は罪に問われないため、どうすることも出来ないと言われた。



私は今、娘と二人で暮らしている。


最近、娘に彼氏が出来たらしい。私も会ったことがあるが、真面目でいい子だった。

娘には苦労を掛けてばかりだったので、幸せになってほしい---


ボロボロのアポートで最も高価な家電である私のスマホに、娘からメッセージが送られてきた。


≪どうしよう・・・彼が痴漢で捕まった・・・≫


弱者のためのシステムで、私も娘もさんざん苦しめられが、それは今後も続くようだ。


私はどうやら弱者じゃなかったみたいだ。

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