表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ

この話は実在する人物、団体とは無関係です

「待ってよー奈月ぃ!綾ぁ!!」


長い廊下で音を立てながら走り去る一人の女子生徒、岡野恵利


そのまま目当ての人物の背中に抱きついた



「ちょっと…恵利」

抱きつかれた女子生徒、東堂奈月は持っていた教科書やノート等を床に落とした

ゆっくり恵利に顔を向けため息混じりに睨み付ける


「ひっどーい!その反応!!」

拳をぐっと握りしめ、うぅ〜と唸る恵利



「恵利…移動教室だから一緒に行こうって私たちが誘ったとき断ったのそっちでしょ?」

はい、と恵利の落とした物を拾い渡す塚本綾



「だってー先生に呼び出されてるの忘れてたんだもん」


「あんたってホント計画性ないよね」

勝ち誇ったかのように笑う奈月


「奈月、あんたの言えた義理じゃない…」

「あ、綾!余計なこと言わないで!!」

「奈月は優柔不断だからね」

「恵利まで!」


「っと…」

再び睨み付ける奈月にたじろいだ恵利

その拍子に誰かにぶつかった


「すいませ…ん」

「岡野達こんな所で騒いだら危ないぞ」


そこには同じクラスの安藤総悟が

大方次の授業の教室に向かっていると言ったとこだろう


「ごめん、安藤君大丈夫? あれ?また図書室言ってたの?」


硬直状態に陥った恵利に代わって奈月が再び謝る



「え…なんで分かったんだ?東堂すごいな…」


真剣な面持ちで考え込むポーズをとる安藤


「だってそれ…今借りてきた本なんでしょ?」

安藤の小脇に抱えられた分厚い本を指さして奈月が少しおかしそうに言った



「あ、あぁこれか!」

「もしかして安藤君って天然?」


大袈裟に頷く安藤に綾が小さく呟いた

しかし当の安藤には聞こえてなかったらしく未だ感慨深そうに頷いている



「で、でも本当に難しそうな本読んでるね」


綾の発言から話を逸らそうと奈月が再び本に話を戻した


「え、あぁこれは最近図書室に入った本なんだ

ずっと前から読みたいと思ってて」

「面白いの?」

「これはマイナーだからなぁ…あんまりみんなにはお勧めしないな」

ふーんと本の題名を覗き込む奈月

面白そうじゃないと判断したのかすぐさま顔を上げた



「よかったら今度俺が面白いって感じた本でも紹介しようか?」

「え、いいの?ありがとーじゃぁ是非!



この二人に!!」


「へ?」


思いがけない言葉に思わずすっとんきょな声を上げる安藤

綾はそれを尻目にため息混じりに奈月…と呟いた


「ごめんね、安藤君 この子昔っから活字ってダメなの」

「暇さえあればお茶でも始めちゃいそうなお嬢なの!」

綾の弁解にいつの間にか復活した恵利も加勢した


「だって本読んでたら眠くなるんだもん 綾、本好きだし紹介してもらいなよ」


苦笑混じりにこちらに目をやる安藤と恵利の目があった

「わ、私も本、読むんだよ!!!」

「へぇー岡野が?どんなの?」


「け、携帯小説…とか?」

「とか?」

純文学を好んで読む安藤に対して本であっても携帯小説を読んでいるとはなかなか胸をはって言えない


「あぁー恵利、よく読んでるよね 私はあれでも眠くなる…」

「そう!安藤聞いてよ!!奈月ったら私が号泣した携帯小説かしてあげたら“普通”ってだけ言って返してきたんだよ!?」


どー思う?と言う恵利の言葉に感想云々は置いといてちゃんと読破出来たんだ?と綾

「綾、それ失礼!」

「東堂も携帯小説読んだんだ?」

「うん、あいにく涙腺の刺激にもならなかったけどね」

奈月の言葉になんでかなぁーと恵利






「安藤君も携帯小説とか読むの?」

そろそろ教室に向かわないと授業に遅れるんじゃない?という綾の提案で一同は次の教室に向かうことにした

勿論話題は続いている


「俺?一回読んだなぁ女友達に勧められて でも俺も泣けなかった気がする」

「やっぱり?私は気付いたら読み終わってて、どこが泣き所かわかんなかった」

「奈月、多分あんたのは読み流し」

「違うの!ちゃんと読んだんだってば!!」

先ほどから言われっぱなしの奈月はむぅと頬を膨らませる


黙っていれば大人っぽくて美人な奈月だが、時折見せるこんな仕草のせいで子供っぽいと言う印象さえ抱かせる


「じゃぁ、その本の要約は?」

「うっ…えっとーー主人公のエリザベータが幼馴染みのローデリヒと擬留ベルトに恋心を抱かれて…血みどろ?」

「ずいぶん楽しそうな内容だね」

ちょっとは本を読みなよ、と綾

勿論奈月はやーだ、と顔を逸らした



「東堂って本当に本が苦手みたいだな…」

「へ?…あ、うんちょっとは安藤を見習えばいいのにね…」

「?…岡野は携帯小説以外に純文学とか読まないのか?」

「私?難しいからね、純文学って」


「あれ?恵利、なんか元気なくない?」

曖昧な返事と少しトーンの下がった声音に奈月が指摘する

綾もその後ろでその返事を待っているようだ



「え?そんなことないよー」

やだなぁーと恵利


奈月がそお?と言いかけたときチャイムの音が校内に響いた


「ほら早く」

恵利が先頭をきって走り出した

それにつられる様に他の三人も教室に向かって歩くより少し早いぐらいの歩測で走った




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ