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お隣さんの純情ギャルが美味しく頂いてくれるので  作者: みかん屋
第一章 金髪ギャルがお隣さんだったので
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第3話


 ホームルームが始まると、担任の女性教師が簡単な挨拶と入学式の説明を手早く済ませる。

 そして、クラス全員が廊下に出され会場へ向かう。


 入学式自体はそれほど特徴的なことがあるわけではない。

 校長先生のながーい挨拶と、ご来賓の皆様のありがたーい祝辞の言葉をお聞きするだけだ。

 一つ、印象的だったのは生徒会長のあいさつだ。

 二年生の女子生徒が生徒会長だったが、遠目からでもわかるくらい堂々と、そして落ち着いた雰囲気を纏っていた。

 カンペを見ながらしゃべっていた校長と違い、生徒会長さんは常に目線を新入生である僕たちの方に向けていた。


 見かけだけ落ち着いているように見える僕とは大違いだった。


 ともかく、そんな感じで入学式は滞りなく終わり、教室に戻った僕たちは学校の詳しい案内を聞く。

 特に、学食の説明にはしっかりと耳を傾けた。

 自炊をしない僕にとって、健康的な食事が安く食べることのできる貴重な場所だと判断したからだ。


 そして、入学式当日の日程は午前中で終了する。


 ホームルームが終わると、教室内は騒々しくなる。

 僕は、帰り支度をしながら隣の席を確認する。


「今日この後どうするー?」

「どっか、遊び行かない?」


 桂川さんの席には、友達と思われるクラスメイトが2人集まってきており何か相談をしている。

 すると、僕の席にも近づいて来る人物がいた。


「スオー、何してんの?」


 僕に話しかけてきたのは同じクラスの女子。

 制服をきっちりと着こなし、一見すると怒っているのではとも見える無表情な彼女は僕が良く知る人物である。

 なので、僕はいつものように冗談を飛ばす。


「どちらさまですか?」

「そう言うボケはいい」


 僕がとぼけた顔をしながら言うと、冷めた視線を浴びせられながらあしらわれてしまった。


「相変わらずそっけないな、みぞれさんは」


 雨宮あまみやみぞれは僕と同じ中学の出身だ。

 みぞれとは中学の時も三年間同じクラスで、高校で四年目に突入した腐れ縁だ。


「なら、もう少し面白い事言いなよ」


 みぞれは首元まで伸びた黒い髪を弄りながら、相変わらずの無表情でそう言った。


「僕に笑いのセンスを期待しないで欲しいなぁ」

「アタシの面白いの定義には笑い以外も含まれてる」


 みぞれは、折り目正しく来ている制服を整えながら僕と会話を交わす。


「なら、昨日見たロシア人のおもしろ動画の話を――」

「それ知ってる。戦車砲で廃屋吹き飛ばすやつでしょ」


 僕は一瞬言葉を失ったが、すぐに次の話題を思い出す。


「なら、ロシアのとある家の庭に出来た穴――――」

「を爆弾で吹き飛ばすやつ以外ならそのまま話を続けて」

「ロシア人フィギュアスケーターの――」

「結婚話は別にどうでもいい」

「実はヨシフ・スターリンの名前は――」

「ペンネームだった」


 僕はことごとく話題の腰を折るみぞれに不貞腐れながら言う。


「僕が知っていることでみぞれが知らない話なんかあるわけないんだから、僕にボケる以外の選択肢は無いんだ」


 みぞれはとても物知りだ。

 学校の勉強もさることながら、それ以外の知識も貪欲に収集している。

 本人曰く、『知らないことを知らないままにしておくのが気持ち悪い』らしい。


「というか、なんで悉くロシア人関連の話題なの?」

「引っかかったな! スターリンは――」

「グルジア出身。でも生まれた当時はロシア帝国だからグルジア系ロシア人でロシア人の定義からは外れない」


 僕は机に頭を突っ伏した。

 それを見て、みぞれは満足したのか楽しそうな声をこぼした。


「まぁまぁ楽しかったから許す」

「あれ、いつの間に僕は許されないといけない立場になってたの?」


 顔を上げてみぞれを見ると、やはりそこにはいつもの不愛想な顔があった。


「放課後になっても、あいさつに来なかったから」

「えー、僕はみぞれさんの舎弟かなにかですか?」

「――違うの?」


 なにそんな当たり前のこと聞いてるの? って言いたげな顔をされても困る。

 僕は、やれやれといった面持ちで言う。


「みぞれだって、今朝は僕のところに来なかったじゃないか」


 すると、みぞれは顔を背けて小声で言う。


「知らない女子と話してたから」

「そんな人見知りの子供じゃあるまいし」

「気を使ってあげたの。スオーが女子と仲良くなる貴重な機会だったから」


 僕を小馬鹿にしたようにみぞれは言った。

 僕は、むきになると負けだと判断して極めて冷静に反論する。


「みぞれ以外にも女友達は居たよ。それに気を遣ってくれるなら話題が切れそうになる前に話に加わってくれてもいいんだよ」


 しかし、みぞれはすでに僕の話から興味を失っていたのかスマホを弄っている。

 僕は、力なく頭を下げる。


「帰るよ」


 みぞれが冷静にそう言うと、僕は荷物をまとめて立ち上がる。

 ふと、左隣の席を確認するがそこには桂川さんの姿はすでに無かった。


 多分、さっきの友達とどこかに行ったのだと判断した僕は、お隣さんの居なくなった席を眺める。


「何してんの?」


 すでに僕の席から離れていたみぞれがそんな僕の姿を見て不思議そうに言う。


「いま行くよ」


 先に教室の扉を通ったみぞれの後を急いで追いかけた。


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