独断をするならせめて家事を手伝え
「「「ごちそうさまでしたー!」」」
全員おかわりをして食べ終え、コーヒーまで注文して来たので仕方無く全員分淹れる。
個人的にコーヒーは深煎りが好きだから、付き合わせよう。
「はぁ~…美味しい…」
「…深煎りなのに雑味が無い……ねぇ遥、いつもこんな美味しいご飯食べてるの?」
「んー? そうだねー。週6くらいで作ってくれるから…良いでしょ」
「羨ましい…ねぇ泰人君、彼女居ないんでしょ? 私と付き合わない?」
律子さんがテーブルから身を乗り出してアピールしてくる。あぁ…谷間…くそっ、とても魅力的な誘いだが…付き合ったら姉ちゃんに色々な情報が筒抜けになるのが怖い。
「駄目だよ律子。泰人がデートで家から居なくなったら私が餓死しちゃう。それに平日ゾンビみたいだから一緒に歩くの難易度高いよ。やめときな」
真顔で阻止しようとするとかひでえな……
「知ってるよ。遥の弟が居るって聞いて見に行ったから。それに一学期のテスト学年一位なんでしょ? 将来有望じゃない」
「でも律子、大地君どうするの? 告白されたんでしょ?」
「あぁ、もちろん断ったよ。まだ五回目だからね。十回目に告白されたら考える。望みは無いがな!」
姉ちゃんの視線が怖い。とても魅力的な誘い…でも律子さんの事よく知らないし。冗談半分だろう。
「すみません…好きな人居るんで」
「えー…好きな人ってどんな子? クラスに居る?」
嘘に食い付かれた…
「それは、秘密です」
「良いじゃんやすと教えてよー」
姉ちゃんそこは俺を守れよ…
「…秘密です」
「ふーん…じゃあ振られたら教えてねー。慰めてあげるよー」
なんとか見逃してくれた……琴美さんは楽しそうだな。彼氏が居るから完全に他人事…というか面白いネタ扱いか。
「あっ、泰人君料理教えてねー」
「彼氏さんに作るんです?」
「そうなの。ちょっとライバルが居てね」
「琴美…まだあいつと張り合ってんの?」
「いや遥、秋の料理食べてみなよ…自信無くすよ?」
「いや…そもそも秋は男でしょ…」
「あの三人いつも一緒だから噂が立ってたよね。大地が攻めで二人は受け…」
「もうやめてよー! 男に嫉妬する身にもなって!」
……それにしてもよく喋るなぁ。
普段味わえない普通の会話が尽きる事無く繰り広げられる。
なんだろう……みんなカフェに来ている気分になっているな。用事は済んだから早く部屋に行きたいんだけれど……
その内デザート作れと言われそうな雰囲気だし。
「ねぇーやーすとー」
「断る」
「…何も言ってないじゃない」
「ここで喋るのは良いんだけどさぁ…そもそも勉強会してたんじゃないの? もうすぐ三時だよ」
「大丈夫。私達勉強会しなくてもテストの点取れるし、って事でパンケーキ食べたい」
「食べたーい」
「食べたいなぁ」
「…」
仕方無い、パンケーキを作るか。型って何処にやったっけ…あったあった。丁度三つあるし…
生地を作って…
「やったー!」
「私もー!」
どした? 律子さんと琴美さんがスマホを見ながらハイタッチ。その後姉ちゃんも加わり三人でハイタッチしている。
「やすとー! 晩御飯も宜しくねー!」
「…いや、わざわざ言わなくても作るけど」
「三人分!」
「…は?」
何言ってんの? と言おうとしたけれど嫌な想像に行き着いた。いや、先ずは俺に相談する事だよね…
「あの、もしかして…」
「うん。二人とも泊まっていくから」
「よろしくねー」
「よろしくー」
「うぉっふ…まじすか」
逃げたい…