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太田ってリンゴ握り潰せるらしいぜ

 

 吉野がやる気になったお蔭で、思いのほか勉強は進んだ。一人でやるより、そんなに仲良くない奴が居た方が捗るという事か。


「戸橋君って…彼女居るの?」

「居ない。この問題は式の暗記だから、この式の暗記ね。頑張って」


「うん。頑張る」

 吉野は少し丸い文字を書きながら、ノートに何回も式を書いて覚えている。更江高校は偏差値が少し高めなので、1年生でつまずくと少し厳しいんだよなぁ。留年とかよくあるし…


 吉野はそれを分かっているのだろうな。覚える姿勢は真剣だから。


「兄弟いるの?」

「居る。とりあえず練習問題行ってみるか」


「……出来た。合ってる?」

「うん、完璧」


「やった。あの……褒めて」

「偉いぞー。次はこれな」


「えへへ」

 ……なんだ? 殺気のようなものが送られてきている気が……近くの男子達から……

 周囲を見渡すと、さっと目を逸らされた…誰だ殺気を送った奴は。女子に勉強を教えるという難易度高いクエストを変わっても良いんだぞ。


「少し休憩するか。定期的に休憩を取らないと身にならないから」

「うん。教えるの上手いねー」

「あ? 吉野が頑張っているからだろ」


「うぅ…それヤバい。あっ、そういえば番号交換してなかったね。交換しよー」


 スマホの電話番号交換をして、ペットボトルのお茶を飲みながら休憩。ついでにトークアプリを見ると、姉から帰りにプリン買って来いのお達しが…

 そうだ、今一番気になっている事を聞かなければ…


「なぁ、タイタンの握力…七十五キロって本当?」


「うん、本当らしいよ」

「すげえな…」


「兄弟って妹? 弟?」

「姉ちゃん。一応同じ更江の三年生だよ」


「えっ? 知らなかった」

 姉は学校でゴリラとサイコパスがセットだから関わろうとしない。だから中学から一緒だとしても知らないのは当然か。


 休憩も終わって、勉強を再開。

 吉野は一生懸命勉強しているので、そんなに赤点が嫌なのかと思いながら教えていった。


「今日はありがとね!」

「おー、じゃあまた学校で」


「また教えてねー!」

「時間が合えばなー」


 昼になり、吉野は家に昼ご飯があるというので、近くまで送ってから解散。

 俺はそのままコンビニへ行きプリンを三つ購入…姉の友達が居たらなんで一個だけなのか責められそうだから。


「ありがとうござりましたー」


 自転車でだらだらと進み、直ぐに家に到着。

「ただいまー」

 …靴が二つ。まだ居たのか…どうしよ。


 姉の部屋から声が聞こえるので、楽しく勉強しているみたいだな。会わなきゃ良いか…

 カウンターキッチンの中に立ちながら昼ご飯何にしようか考えよう。


 現在親父が出張で別の都市に行っている。母さんも付いて行ったからご飯を作る人は俺しか居ない。姉ちゃんには期待していないし…とりあえず昼ご飯をどうするかトークで連絡してみるか。


 泰『姉ちゃん昼ご飯どうするの?』

 遥『あっ、考えて無かった』


 泰『今台所』

 遥『よろ!』


 泰『友達は?』

 遥『聞いてみる!』


 ドタドタと上の部屋から物音がしている。昼何が食べたいかという激しい争いが起こっているようだ。


 何にしようかなー。食材は母さんが買っといてくれたけど…ご飯は朝五合炊いたから足りそうだし…


 ――ピロリン。

 遥『麻婆豆腐!三人前!』

 泰『はいよ』


 遥『よっしゃ!』

 泰『麻婆豆腐好きだねー』


 遥『あんまり辛くないやつ!』

 泰『はいはい』


 食材は買ったから足りる。

 先ずはシメジをミキサーでみじん切りに。赤味噌、オイスターソース、みりん、酒、醤油で合わせ調味料を作る。

 大きめのフライパンにごま油を引き、生姜とニンニクを少し入れて香り付け。その後にみじん切りにしたシメジとひき肉を合わせて炒めていく。

 熱が通ったら合わせ調味料を入れて、少し味を馴染ませたら豆腐を手のひらの上でサイコロ状に切ってフライパンに投入。


 刻んだネギとニラを入れて少し煮込み、水溶き片栗粉を入れてとろみを付けた。辛くない麻婆豆腐が完成。



「出来たっと…ん?」


 カウンターテーブルに目をやると、姉と友達二人が既に座ってこちらを見ていた。姉ちゃんの友達…確か名前は…ショートカットで少しつり目の美人なお姉さん飯島律子(いいじまりつこ)と、ロングヘアーで愛嬌のある可愛い顔の棚橋琴美(たなはしことみ)。なんかキラキラした目で見ている。


 集中していたから、なんか恥ずかしいな…どの辺りから居たんだろう…らびゅらびゅ五千%の鼻歌を聴かれていたら尚の事…


「…どうも…手は洗った?」

「勿論!」

「お邪魔してまーす!」

「ありがとねー泰人君!」


「…いえ、自分だけ作るのもあれなので。丼と別盛りどっちにしますか?」

「「「丼!」」」


「元気がよろしいようで」


 どんぶりにご飯をよそい、麻婆豆腐をかける。皆テーブルから動かない……手伝えや。

 姉ちゃんを見ると首を傾げて…ん? と、微笑んでいる…おい。仕方無いので麻婆豆腐丼を彼女達の目の前に置いていった。



「「「いただきまーす!」」」


 早速食べる女性陣を尻目に、とりあえず洗い物。

「これこれー! うまーい!」

「「……」」

 片付けが終わって、自分の丼を食べた。俺のは辛めに作ってある。

「ん? 二人ともどしたの?」

 友達二人が沈黙している…あれ、失敗したか?

 ……うん、安定の味だな。


「…うまい」

「…なんでこんなに美味しいの? ねぇ泰人君、麻婆豆腐の素ってどんなの使ってるの?」


「麻婆豆腐の素は使っていないですよ」

「…またまたー。素が無いのに麻婆豆腐なんて作れる訳無いじゃない」


「…いや、割りと簡単に作れますよ」

「こんなの簡単じゃない!」

「嘘よ!」

「おかわりー!」


 いや…普通に作れるから。素を使うのは小学校で卒業…なんだろう…睨まれた…


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