表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/18

慈悲深いゾンビ様に感謝するが良い。

 



 授業が終わり、いつもの俺、中村、源は共に家路に向かう。家は離れてはいないので、帰る方向は一緒。中学から続く日常だ。


「発砲事件現場どうなってるかな?」

「パーン! の現場な。例のブツはそのままなんじゃねえか?」


「ちゃんと土に埋めたぞ」

「地雷原じゃねえか」


 事件現場を通り過ぎ、少し経った時に俺達は立ち止まる。

 前方に見慣れたシルエット。

 遠目からでも解る巨体。

 源が後退った。


「あれ、太田イタンじゃねえか? 吉野も居るし何やってんだ?」


「…教室以外でタイタンに遭遇とか序盤でラストダンジョンに行く様なものじゃねえか毎日毎日あの身も凍る様な視線に耐えているのに道端でもあの視線を受けろと? ふざけるんじゃねえ俺は飛び立つあの空の彼方まで!」


「戸橋、まずいぞ。源がワンブレスで何か呪文を唱えながら怯えている」

「これは極大呪文のお目見えか! さぁ源、今こそ解き放て!」



 騒いでいたら当然の如く太田が俺達を発見。

 ブンブンと風を切る手の振り方。あの手に当たったら源は弾け飛ぶだろう。


「あっ、源くーん!」


 ドドドという効果音が付きそうな勢いで駆けてくる。視線は源にロックオン。

 追尾ミサイルのような…いや、まるでダンプカーが迫っている様な圧迫感。


「おまいらぁ! まぁたあしたぁ!」

 源は逃げ出した。歯を食い縛り、必死な表情。

 太田の好きな人が自分じゃなくて良かったと心から思った瞬間だ。


「またなー」

「気を付けろよー」


 別の道に逃げていく源を眺め、太田が到着するのを待つ。

 おいおい減速しろよ…これ当たったら飛ぶぞ。交通事故レベルだぞ。ちょっ、まじ止まれ! 怖い怖い怖い!


 ……ふぅ…止まったか。中村を見るとラリアットの姿勢…やめとけ、一応女子なんだぞ……


「あ、あれ? 源君どうしたの?」

「…用事あるって」

「…そっかぁ」


 太田の口調は普通だが、部活…柔道の時は人が変わる。因みに中学の時、全国大会に出た時のあだ名はジャイアントダンプなので、タイタンの方を気に入っているらしい。伝説の巨人の方が良いのか。


「そういや部活は?」

「真由美ちゃんの家で勉強するのよ。赤点の部員ばかりだったらしいからしばらく自主練習だって」


「余裕ぶっこくからだな。吉野が待ってるぞ。ほら行け今行け早く行け直ぐに行け。じゃあな」


 源が居ないので、俺達に用は無いのだろう。つまらないという表情を浮かべ、あっさり吉野の元へ戻っていった。


「なぁ…俺がタイタンの事好きっていう噂が流れているんだよ」

「ゴリラとタイタンだからじゃね?」


 だらだら雑談しながら家に到着。中村にまた明日と言い、家に入る。そこにひょっこり顔が覗いた。


「ただいまー。姉ちゃんどうした?」

「泰人、プリン買ってきて」


「断る」

「断るを断る!」


 姉ちゃんが現れた。仁王立ちで玄関に立ちはだかる本日のラスボスか。


「甘いものが食べたいんだ!」

「自分で行けよ」


「それが嫌だから言っている!」

「じゃあ一緒に行くか」


「それはもっと嫌。ゾンビ状態のあんたとは一緒に歩きたくない」

「なにそれ」


「デリケートな時期なのよ」


 結局プリンを買いに行く事にした。

 勝ち誇った顔をした姉に見送られ、学ランのままコンビニへ。


 コンビニまでは歩いて15分。途中に中村の家があるが、わざわざ一緒に行く事も無いので1人で歩く。


 途中には吉野の家もある。


「あっ、ゾンビ!」

「おー、タイタン。奇遇だな。じゃあな」


「杏里ちゃん、戸橋君いるの?」

「おー、ひき…吉野。奇遇だな。じゃあな」


「ちょっ、まっ!」


 歩みを止めないようにしていたのに、吉野が止めやがった。姉ちゃん直ぐ怒るから止まりたくねえんだよ……まぁ吉野を押しのける訳にもいかず立ち止まってやろう。慈悲深いゾンビ様に感謝するが良い。


「どこ行くの?」

「コンビニ」


「ふーん。1人って珍しいね」

「あいつら居なかったら大体ボッチだぞ」


「…ねぇねぇ、戸橋君って倉田さんと仲良いの?」

「いや、話した事も無いぞ」


「そうなの? でも昼休みに顔合わせて無かった?」

「あー…倉田の髪が綺麗だなーって眺めてたら、目が合っただけだよ」


「へぇー…そうなんだ」


 吉野は髪をいじって何かをアピールして来たが話は終わりだ。さっさとコンビニ行こう。



「いらっしゃいませー」

「お願いしまーす」


「ありがとうございますたー」


 今店員さん噛んだ?

 プリンを買って家に向かう。

 もちろん先程と同じ道を通る訳で…


「戸橋くーん、もう帰るの?」

「おー吉野、駄目じゃないか。戦士を先頭にしないと魔法使いは直ぐに攻撃を受けてやられるんだぞ」


「ごめん、ちょっとよく解らない」


 なんだ吉野、待っていたのか。後方に太田が居たから、源風な事を言ったが通じなかったな。まだまだだな太田。


「…じゃあ」

「あっ、あのさ。週末図書館で勉強しない? 赤点は嫌なの! 戸橋君って頭良いでしょ? 教えて!」


「…そうだなー。家に居ると集中出来ないし、あいつらにも聞いてみるよ」

「え? いや、違うの。杏里ちゃんは部活あるから私1人なの。だから源君を誘うと悪いじゃない? それに中村君って視線が怖いからちょっと…」


 やっぱり視線に気付いていたか。中村に教えてやろう。

 まぁつまり図書館にて吉野と二人で勉強。

 もし週末に姉が友達を家に呼んで勉強会をしようものなら俺は家から追い出される可能性大か……


 それに週末の中村と源は忙しい。中村はアルバイト。源は徹夜でゲームをして、録り溜めしたアニメと特撮を観ているし。


 特に断る理由も無いか。

「じゃあ…土曜日に図書館の中で集合かな」

「ありがとー! 戸橋君、勉強教えてね!」


 勉強をする約束をして、帰宅。教えるの苦手なんだけれど…まぁ良いや。


「ただいまー」

「泰人、おかえり。例のブツは手に入ったかい?」


「ほれ」

「ふっ、大儀であった」


 プリンを受け取りご機嫌な姉は。友達来たらどっか行ってねーと、いつもの通り理不尽な事を言い放つ。というか朝聞いたぞ。忘れたのか?


「いや、良いけど…いつも姿を消す身にもなってよ」

「えー、だって泰人ってさぁ…週末は人間に戻って格好良くなっちゃうから友達に人気なのよ」


「週末はってなんだよ。元々人間だし…それに人気なら俺に出会いがあるかもしれないじゃないか」

「えー気まずいじゃない。友達と弟が付き合うとか…」


「…確かに」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ