知り合いだと思って声掛けたら違う人とか逃げ出したくなる
土曜日。
仕方無いので朝早く起きて、女性陣の昼御飯を作り置きした。
同時に二人分の弁当を作る。
学生なので、昼に外食は贅沢だと思ってしまうから。
それに料理を待つ間、倉田と話が続かない恐れがあるので弁当にした。というか何か話す話題はあるのか? 喋っている所を見た事は無いぞ…
律子さんと琴美さんが来るのは十時。姉はまだ寝ていたので、キッチンに書き置きを残して八時半に出る。
自転車に乗って更江駅へ。学校の近くなので直ぐに着いた。
まだ来てないかな。おっ、あれかな?
自転車を停め駅前のベンチへ行くと、長い髪の女子を発見。
「おー倉田。早いなー…あっすみません間違えました」
倉田じゃなかった…気まずい、でも待たなきゃいけないから少し離れたベンチに座った。
恥ずかしい…人違いとか……あれ? あの人って…
何処かで見た事があったな……あっ! この前変なヤンキーに絡まれてた可愛い子だ!
偶然なんてあるんだなぁ…でも出来るだけ遠くを見よう…気不味いから。
「…」
「…」
少しして、隣に誰かが座って顔を凝視している。近い…いやマジで近い…倉田かと思って横を向いたら先程の女子だった。ちょっと、離れて…
「あ、あの。何か?」
「私…倉田」
「……え? ……倉田?」
「…うん」
は? 嘘だろ…
少し恥ずかしそうにチラチラを見る姿は、学校とはまるで違う。
前髪をピンで留めているので顔がよく解る。白い肌にパッチリとした二重。吸い込まれる様な茶色い瞳。少し小さな鼻。口角の上がった唇。
儚く美しい印象だった。
うわ…超可愛い…さらに喋る事が無くなったぞ…
「わ、悪い。学校と印象が違って気付かなかった…」
「…うん。大丈夫」
「いやー…倉田って凄い美人だなー」
「ありがとう…」
視線を下にして少しだけ笑顔になっていた。顔が少しずつ赤くなり、嬉しそうにしている姿に見惚れてしまう。
これは…ちょっとヤバい…
「…とと君も、格好良いよ」
「…えっ」
顔を上げた倉田瑞穂は、本当に嬉しそうに笑っていた。
連投終わりです。
ゾンビの話が完結したら、流れの武器屋の完全版が書けるんですが…百合百合という強敵が居るので先は長いです…




