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赤松先生のお茶  作者: あきこ
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お父さん田舎へ

六月になった。


数カ月、もと旦那が養育費を振り込まなくなっていた。

滞ることは珍しくなく時々あるので、さほど気にも留めていなかったが

こう何カ月も振り込みがないとやはり生活に響く。何度も電話をするがでない。

優太がかけても出なかった。


三カ月位たったか七月になり何度も電話をかけてようやく繋がった。


「もしもし、俺な、田舎に引っ越してん」


私はびっくりした。


「ええ、何それ。考えられへん、あんた子供に言うてないやろ。

何で、子供に黙って勝手に行くの?


子供も中学になったばかりで、色々あるし、お金もかかるし、

私には一切関わらなくてもいいから

子供にはできることは何でもしてあげて、

たまには話を聞いてあげて、声をかけてあげて、

って、

あれほど言ったやん。あんた、どういうつもりなん?


もしかして借金取りから逃げるために?」


「それはちがうねん、俺も色々あるねん、

田舎の母ちゃんが具合悪くて転倒して骨折して入院したり大変やってん。

ほりっぱなしもできんしなあ 田舎で就職の口利きもあったから帰ることにしてん」


「それやったら、それを何でちゃんと子供らに説明せえへんの?」


「バタバタしてな 後から言おうと思ったんや」

子供に黙って行くなんてホントに有り得ない。無茶苦茶腹が立った。


子供達は時々、お父さんに誘われお父さんの住んでいるマンションに泊まりに行くことがあった。

その時は少しお小遣いをもらえたり近くの喫茶店のモーニングに連れて行ってもらえるみたいで

それが美味しいらしく、とても楽しみにしていた。

でも引っ越したので、もうそれもできなくなってしまった。

子供にお父さんが田舎に帰っていたことを伝えた。

 

「お父さん、田舎に引っ越したんやって」


「えっ、なんでなん?

だから電話かけても出えへんかったんやなあ

おかしいと思ったわ。もう帰ってけえへんの?」


「おばあちゃんが倒れて入院して具合悪いからお世話せなあかんって。

そんなん、聞いてなかったわ。もっと早く言えばいいのに」


「ふーん、そうなんや おばあちゃん大丈夫かなあ。

じゃあもうあのマンションに遊びにいけなくなるなぁ」


優太も妹の夏美も寂しそうに言った。


中学になった子供をおいて、何も言わずに突然勝手に田舎に帰ってしまい。

養育費も碌に払わず、さんざん借金取りの電話応対もさせられ私はこう思った。


私たちは捨てられたんだ。


養育費は滞るし子供に黙って勝手に田舎に帰るとは父親を放棄したも同然だ。


お父さんは私達を捨てて遠くに行ってしまった。


私は、離婚してるからまあいい。関係ないけど子供はそうはいかない。

子供は捨てないでほしい。私はもともと他人やから関係ない。

子供を捨てる親なんて考えられない。

離婚していてもしっかり父親をしている人はいくらでもいる。

お父さんらしく振舞ってほしかった。


ふとアルバムを見ると優太が三カ月くらいの頃

お父さんが嬉しそうに抱っこして、たかいたかいしている写真がある。

優太もお父さんも笑顔で笑っている。


九か月頃だっただろうか、初めてしゃべりだし私達に


「おとうしゃん おかあしゃん」

と一生懸命言っていた。


あの可愛かった頃のことはもう忘れたのだろうか?

大きくなるまで


せめて

二十歳になるまで成長を見届けてほしい。親としての責任だから。



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