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赤松先生のお茶  作者: あきこ
10/14

反抗(二)

時々、私はツタヤでDVDを借りた。


昔はレンタルビデオだったが


北野たけしの「血と骨」というタイトルのものがある。

私はそれを今までに三回も借りて見た。


怖いがどうしても見てしまい他人事と思えず恐ろしくなったものだった。

とにかく恐ろしい

ろくでもない父親の話だ。


自分の思うままに好き勝手に生きて、気に食わないことがあると妻や子供たちに暴言を吐き暴力震い

辛く当たるめちゃくちゃな父親の話だ。


そして、印象的なシーンが娘役の田畑ともこさんを階段から蹴り突き落とすシーンがある。

すごい勢いで転げ落ちていき歯が数本折れてしまう。

あの恐ろしい可哀そうなシーンを思い出したら

自分の家の事とリンクして涙がでそうになる。


優太は野球部にもほとんど行かなくなった。

学校にも碌に行かないのだから当然だ。


クビになるかと思いきや、その野球部は何故かゆるくてクビにはならなかった。


貴宏君は毎日家に来てくれて親切に時々声をかけてくれたり学校のクラスの様子や行事、部活、先生の事

色々なエピソードを話してくれたがそれでも行かなかった。


もともとが、特別運動神経が良いわけでもなく野球に興味があるわけでもない。

小学校の高学年の時にたまたま子供会のソフトボールをやって楽しかったのでその流れで何となく

野球部に入部しようと思ったらしい。


真面目な子はきっちり学校が終わると部活に取り組む。友人の貴宏君は

典型的なお手本だ。


優太は部屋に引きこもることが多くなり担任の加島先生がちょくちょく電話をくれるようになった。


「お母さん、優太、どんな様子ですか?」


「先生、全く言う事を聞かないんです。

朝起こしただけで壁をグーで殴って穴をあけまくって」


私はお父さんが突然何も言わないで、田舎に帰ってしまった事を話した。


「そうですか、きっとショックだったんですね。私も優太に声かけますので。また連絡します」


先生はいつも電話をくれた。


好きな時に起きて寝たいと時に寝る。寝るときは一日中でも死んだように寝る。


私も仕事があるので空いた時間まとめてご飯とおかずを作ってラップをかけた。


カレー、唐揚げ、焼きそば、八宝菜、シチュー、豚カツ、ハンバーグ等ありきたりなものを作れる日にとにかく多めに作った。


空っぽの皿を確認すると適当に好きな時にお腹が減ったら食べているのだろうと思った。

学校に行かないので誰かにいじめられたのか思って聞いてみたが、どうやらそうでもないようだ。


そのうち毎日友人が来るようになった。


まっとんとは仲が良く毎日来る。

朝は必ず遠回りだが来てくれて学校にいくよう誘ってくれたが

優太が真面目に行く様子は見られなかった。

夕方学校が終わるといつも自分のペースで家で楽しげに適当にくつろいでいる。


貴宏君も毎日来てくれるけど、ちょっと違う。しっかり学校へ行き勉学に励みその後部活動をしっかりと

終えてから家に来てくれていた。自分のやるべきことはすべてやっていた。

貴宏君だけオーラが出ているように感じた。あんな風になってくれたらどれほどいいだろう。


毎日一緒にいるまっとんに


「あんた友達やったら優太におまえ学校ちゃんと来い。とか、

このままやったらあかんやろとか

言わへんの?気にならへんの?」

と尋ねると


「べつに~ 優太言うても全然聞かへんもん。

優太あんなもんなんちゃうの?」

と、さらっとがっくりする答えが返ってきた。


きっと人は人自分は自分ということだろう。

人にはあまりしつこく干渉しない主義だろうか。

気の合う仲間とお互い自由に合った時間楽しみ共有して過ごすことができればそれが楽しいのだ。


子供の事では時々報告の為に輝幸に電話した。


現状の様子を輝幸に伝えて何とか助けてもらいたかった。

一応父親なのでお父さんが話したら学校へ行くかもしれない。


「そうか、俺もまた電話してみるわ」

と言ってくれ時々電話もしてくれたが、

特に何も変わりはなかった。


そのうち家にくる優太の友達が増え始めた。


家の壁あちこちに穴が増え始め家の中は異様な空気が立ち込めていた。


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