反省
以降、酔う度、勢力の随意に駄文を書き付けんと思って始めた薬物であったけれど、翌朝から咽喉の激しい痛みに加えて、何うやら細菌かウイルスに敗れたらしい事を発端に辞める事と決めた。鼻腔が詰まって、咳嗽が止まらず、関節が錆びて、頭痛が脳髄の奥部に座り込んで終った。遂には咳嗽の激しさに因って横隔膜が痛み出し、此れは参ったと思い続けて一二日、未だ治らないのであるから真実に参った。幾らか快く為った部分も有るが、斯う長く引くとは思わなかった事に加えて、三年は無い経験であったし、斯様に長く煩わされる事は未だ嘗て無い事態であったから体力を著しく奪われた。咳嗽が思い出した様に出、頭部を下げれば頭骨の中が痛む。
加えて酩酊為、咽喉の痛みに起きた翌朝は宿酔が酷く、常に嘔吐の気配が胃腑で蟠って居た。全身は辛いが立って歩けば更に辛い。便所へ行くにも難儀為る。私は何うにも嘔吐が嫌いであったし、拙かった。呼吸が遮られて双眸から落涙為、胃酸の匂いが口腔と鼻腔に充溢為る感覚を味わいたくなかった。味わわされるよりは、嘔吐の気配に虐げられて居る方が良かった。飲み込んだ食物の細片が鼻孔から排出為れる様子が嫌いであった。
更に恋人が心配為る様子も私の精神を参らせた。有り難い事であるけれど、私は私の行いに因って苦しみ悶えて居るのであるから、然う神経を割かなくて良いと思った。罪悪の感情が満腔へ漲った。当然の断罪と為て、部屋の一角で黙然と苦しむ私を放置為て欲しかった。寧ろ、煩わしいから屋外で遣れと責められても構わなかった。
斯う為て、私は三面から責め立てられて心身が衰弱為た。暫く経て恢復は為たが、再びは味わいたくないと思う。私は酷い宿酔に遭う度、恋人へ懲りたから二度と飲酒は為ないと宣言為て居る様に思われる。然う為て、咽喉に引っ付く咳嗽の破片を覚え乍ら麦酒の味わいを思い出さずには居られないのであるから、私は全く救えん。




