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薬物  作者: 炉谷義露
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壱夜

 現在の私は酔って居る。酒類は薬物の一種であるから、余り褒められた事では有るまい。日本国に於いて禁止為れて居る大麻と大きく変わらないと云うでは無いか。此れは忘我の果てに思い付いた、正に酔狂と為て受け容れて頂きたい。然う、正にとは私が断たず使わない言葉である。

 私は飲酒を為て居る時に限って、複数の事項を運用為得る。映画を眺め、作業を行い、恋人を構う。此れは尋常に非じ、狂って居る。私は欠陥為た人間である、薬物に縋らねば正常な人間にも並ばない塵埃に違いない。吐露を経ねば此の鬱積為た感情は覆し得ない。

 何う為て斯う為って終ったか分からない。辛く寂しい、隣りに恋人が。私の精神は満たされない。一個の人間が満たされるとは何であろうか。分からない、分からない。然う為て、私が認めた斯様の文章を見返すと意味が通らないか、其れすらも分からない。助動詞、動詞、私が慈しんで止まない言語が分からない。否、分からないのでは無い。酔って居るのである。

 此の儘を以て恋人と死にたい。感嘆符を投げ込みたいが、私の作風に……、三点リーダも懐かしい。思い返せば私が彼氏を省いたのは何時であろうか。彼女であろうか。分からない、立てば平行の感覚すら失われて終って居る。双眸の焦点も合わない。自身が怖い。

 怖い々々と申せば何も……、もう好い。此れで終いに為る。若しも読者が居らっしゃれば、申す弁明も有るまいが、何うか容赦を乞いたい。好い、好い、知らない。再び私が顧る事も無いであろう。僅かに体裁は、辛うじて整えたが知らぬ。恬然と澄まして遣ろう。耐えられない。文章が滅裂である。

 私が願うは、私が全くの歴史を伴って消滅為て終う事である。

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