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第64話 :ルキア

「ねぇ、ルキア。」


久しぶりに背中にコアのいる、空はとてもとても綺麗だった。

そんな空を飛んでいると、コアが私の名前を呼んだ。


『何です?』


この声が何度も私を欲してくれて、その度に私はここに、

コアの傍に存在する事を許されている気がして嬉しくて仕方なかった。


「ルキアは契約するときに、自由と真の絆を欲しがったよね。」


コアに出会うまで、こんな気持ちになるなんて思わなかった。


『はい。』

「いつもいつも思うの。私、ちゃんと与えられてる?」


何となく気づいてはいた。コアはもう、進む道を見つけて進もうとしてるって。

だけど彼女は優しいから、私の事を考えてくれたんでしょう?

いつだって自分の事より、私の事を考えて、あの日の約束を守ろうとしてくれる。


『もう、進む道を見つけたんですね。』

「・・・」


あの日に約束してくれた。貴女は私に自由と真の絆を与えてくれるって。

マスターなんか信じてなかった私を、信じさせてくれたのは貴女だった。

“ルキアは唯のドラゴンです。・・・唯、色が白いだけのドラゴンです。”

ハイドンさんの前で、コアがそう言ってくれた時思ったの。

あぁ、コアがマスターでよかったって。


『ねぇ、コア。貴女にとって、私に与える自由とは何?』


そんな貴女はいつだって私に命令なんかしなくて、いつも『お願い』だった。

そんなに気を使わなくていいのに、って思うくらいに、彼女は私に命令をしない。

ドラゴンに命令をしないマスターはきっと彼女くらいだろう。

それはきっと、私が自由を欲したから。

だけどコアは間違ってる。

私はいつだってコアのために、コアの傍にいるんじゃないのに。

私は私がコアの傍にいたいから、傍にいるのに。


「それは・・・・ルキアの意思を強制しないこと。ルキアの時間を制限しないこと。」


そうね、貴女はいつもそう。

いつだって私の意志を尊重して、考えて、自由だという。


『それなら・・・それなら、私は私の意志で貴女の傍にいるんです。貴女が決めた道が、私の望む道ですよ。』


貴女は知らないのよ、私がどうして貴女の傍にいるのか。



「ルキアはここに残ってもいいんだよ。ルキアは向こうに戻ってもいいんだよ?

空を飛んでいても・・いいんだよ?」


それは決して貴女に私が必要だからなんかじゃなく、私に貴女が必要だから。


『本気でそんな事を?』

「え?」


貴女が背にいない空は、こんなに綺麗じゃない。

貴女を初めて背に乗せて空を飛んだとき、母が言ったことが分かったの。

それなのに貴女は私が必要ないと、今更私を突き放すの。

私は貴女がいなければ、幻の白竜と化してしまう。

私は貴女がいるから、コアをマスターとして持つドラゴン・ルキアでいられる。


『ここに残って、何をするんですか。』


貴女のいないこの場所に残るなんて、何の意味もない。


『向こうに戻って、貴女の帰りを待ち続けろと?』


傷つく貴女を守る事もできず、ただ遠いあの場所で帰りを待っていられない。


『貴女を背に乗せずこの空を飛び続けろというんですか?』


貴女が背にいない空なんて、二度と飛びたいなんて思わないの。

空を飛ぶことの喜びを教えてくれたのは、貴女でしょう?


「私と出会いさえしなければ、ルキアはそんなにボロボロにならずに済んだのに・・・!」


そう、コアの心のどこかでずっと悔やむ心があった。

それは私と契約を結んだ事。けど、それは決して私に不満があるからじゃない。

なんて優しいマスターで、何て優しい少女なんだろう。

私が自分と出会う事で傷ついていると、悩み続けていたなんて。


『運命の神ラスティを、コアは信じますか?』


あの日、私が貴女と出会えたのは運命の神のおかげだと思う。

神は決して意味のない出会いはもたらさない。

土まみれで、白くもない私の前に現れて貴女は言った。

“・・・あなたが、私を呼んでたの?”

きっと私は心のどこかでコアを、真のマスターを呼んでいた。その声を運命の神はちゃんと彼女に届けてくれた。


「うん。」

『私とコアが出会ったのも、運命の神が出会わせたんですよ。』


母は死ぬ前に私に言った。

“何を引き換えにしてでも、彼に出会えてよかった。”

マスターなんて、きっと最悪な生き物なのだと思い続けていた。

母は何度も傷つき、何度も空を飛べなくなった。白く美しいその翼を赤く染める事も、黒く汚す事もあった。


「・・・」


それでも最後の最後まで、あの空に彼との思いをはせていた。

今なら、その気持ちが痛いほどに分かる。

どれだけ傷ついても、苦しい思いをしても、この白い翼が赤く黒く染まっても、私は空を飛びたい。


この背にコアを乗せて。



『私は貴女の選んだ道を共に飛びたいんです。それを貴女に駄目だと強制することはできない、そうでしょう?』

「ルキア・・・」


私が死ぬとき、私はきっと空を見て言うに違いない。

“何を引き換えにしてでも、コアに出会えてよかった。”と。

そう思えるようになったのは、コアと出会ったから。


『貴女についていくもいかないも私の自由ですよね。だから、私は私の意志で貴女について行く。』

「ありがとう。・・・ルキア。」


傍にいたいの。私が私であるために。貴女が『ルキア』与えてくれた名を、呼ばれ続けるために。


「王家の血を継ぐ者が南にいるって聞いたの。私はその人を見つけて王位につかせたい。

一刻も早く、この国に平和を取り戻したいと思う。」


貴女に怖い物はない、だから私は何も怖くない。


『さすが、我が主ですね。』

「主じゃなくて、パートナーだよ。私、ルキアのパートナーとして恥じないマスターになりたい。」


初めて出会った時から、貴女は私にそういってくれた。貴方のくれたあの言葉を忘れない。

“マスターになるならその時は、ドラゴンはルキアじゃないと嫌なの。”

逃れられないほど強く射るように私を見たあの目は、今でも真っ直ぐ私を見てくれている。


『今でも充分ですよ。』


この人と、空を飛びたい。

あの日、私はそう思った。その気持ちは今もずっと変わらず、強くなっている。


「・・・こんなマスターですが、ついて来てもらえますか。」


もう自由も何もいらない。私がずっと欲していたものは、今、充分すぎるほど手の中に。

絆は気づけばそこにある。そうでしょう?


『もちろんです。』


貴女が私のマスターでよかった。貴女のドラゴンになれてよかった。

貴女を背に乗せて、こんな空を飛べる事が今とても幸せなんですよ。

朝焼けの空は広く広がっていて、うろこ雲が静かに漂っている。

そして道はどこまでも長く長く続いている。

そんな空を、貴女といつまでも飛んでいたいの。


お母さん?私は空を飛んだよ。この背にマスターを乗せて。

どれだけ傷ついても、それでも飛ぶ事を諦めたくない。

コアの隣で、飛び続けたいと思うの。これからもずっと。


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