第50話 :コア
戻ってくる確信なんてない。
確かに生きている未来なんて保障されてない。それでも・・・・
「コア!」
「・・・セルス。」
何もない草原、ここは世界の墓場エンプティ。
もしかしたら、約束を果たせない私はここに眠るのかもしれない。
セルスの声も聞けなくて、空も飛べなくて、ただこの地に眠るだけなのかも知れない。
セルスがいつもよりずっと強く抱きしめてくれる。
その温度が伝わって、優しい気持ちにしてくれる。
「セルス、ごめんね。」
「どうしてお前が謝るんだよ。」
こうしてセルスが抱きしめてくれている腕を払うと決めたのは、私だから。
「あの日、お前は俺に“いってらっしゃい”と言った。
それはな、“おかえり”の場所も用意しておくってことだろ?」
「あの時は・・・作れるつもりだったの。」
「じゃぁ、今度は俺が言ってやるよ。・・・行って来い。」
セルスが“行って来い”と言った瞬間、空をかけていく風が強く強く吹き抜けて行った。
私が待っていたのはこの言葉かもしれない。
「“おかえり”の場所くらい作っててやるから。」
私はまた、あなたの腕の中に戻れるの?
“おかえり”と言ってくれる人がいる場所に、帰ってこられるの?
「1年も・・だよ?」
「たった1年で根を上げんのか?俺は5年でも、10年でも・・・100年でも。待っていてやるけど?」
5年後も、10年後も、100年後も。
貴方の未来には、当たり前のように私が存在してるんだね。
「ルキアが言ってた。“いずれ世界を背負う少女になる”って。伝説の白竜がそう言ってんだ。
自分の大事なドラゴンを疑ったりはしないだろ?」
「・・・私は、私はセルスの言葉だって疑ったりしない。」
貴方がくれた言葉は、いつだって嘘なんか1つもなかったものね。
いつだって真実を語ってくれて、誤魔化したりしなくて。
嫌な事、嫌だって。辛い事、辛いって伝えてくれた。
「なら、ルキアと俺を信じろ。それで、帰ってこい。」
この気持ち、どうすれば伝わるのかな?
「全部欲しいって言ったのはお前だから、お前は行け。それで・・・
俺は待っていてなんかやらないからな。迎えに行ってやる。」
覚えててくれたんだね、あの日私が貴方に言った言葉。
「セルス・・大好きっ・・!」
「知ってる。」
絶対死んだりしない。私は、全てを手に入れてセルスの隣に立ちたいから。
伝説のドラゴンマスターになりたいから。
「でも、また聞かせろよ。」
戻ってくる確信なんて確かにない。
生きている未来なんて保障されてない。
それでも――――――――――私は行こうと思ったの。
“おかえり”の場所があるんだから。大好きな人が行けと言ってくれるんだから。
全てを手に入れると言った。セルスを迎えに行くと言った。頑張ると言った。
きっかけなんて小さなこと。それがどれだけ大変な事でも、そんな小さなことで進めるの。
その想いが、きっと私をもう一度この場所に立たせてくれる。
ずっとずっと高くを飛んで、この地に舞い降りるの。私が目指す者となって。