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第127話 :コア


「本日のグループの脱落はグループ認証のための札の紛失によるものです。

最近、同じような理由での脱落グループが増えております。

グループ内で認証札の管理担当にあたっている者は他の者の合否もかかっていることを自覚し、一層注意して紛失などが起こらぬよう気を付けてください。」


朝の朝礼が終わり、試験管理部長官が話した言葉に受験生の多くが不安な顔を示しているのが見てとれた。

フォルンもユークも顔をしかめている。というのも、ただ紛失という不手際が続いているからだとは思えないからだ。

最初の二十五のグループのうち、今残っているのはたったの十二グループ。

そしてその脱落原因のほとんどが、各グループに一つずつ与えられている認証札の紛失なのだ。


「誰かが認証札盗んで回ってるに決まってる。おい、お前が札の管理だろ?ちゃんと持ってんだろうな?」


そう言ったのはカラクだった。

普段はグループの輪に入りもしない彼が久しぶりに私達のところへ来たのは、札の管理をしているフォルンに札の確認をするためだった。

フォルンの名前も覚えていない彼はきっと私の名前も覚えていないのだろう。むしろ覚える気など全くないようにも見えた。


「だ、いじょうぶですわ。今はしっかり首からかけて、お風呂に入るときも肌身は出さず持っていますもの。」

「ふん。ならいい。」


カラクはフォルンを睨み付けたあと、ユークのほうに目をやってそのまま去って行った。


「私、あの方苦手です。」


フォルンの声にユークが小さく頷く。


「あんまりお話できないもんね。」


グループでの試験の際も決して無駄口をきかない彼と、まともに話をしたことがあるメンバーは誰もいなかった。

話してみなければ分からない。まだ、分からない。憶測で人を判断するのは間違っている。

そう、心の中で言い聞かせてはみても、少し怖く感じる心は消えなかった。

こんなとき、ルキアならなんていうだろう。

きっと『大丈夫』と笑ってくれるだろう。『怖いことなんて何もないわ』と頬を撫でてくれるだろう。

そう思いながら、私はルキアが傍にいないことに気づき、ため息をついた。

強くならなきゃ。

一人で耐え抜くことも試されているのだから。


「今回の試験を通過するのは成績だけじゃダメだって、試験官の人も言ってたから。

私もしっかり見張るよ。一緒に札失くさないようにしよ。」


恐れること以外に、疑うこと以外に、できることはあるはずだ。

私が笑ってみせるとフォルンは優しく微笑み返してくれた。


「えぇ。」

「私も手伝おう。」


ユークが少し頬を赤らめながら小さな声でそういった。


「ありがとう。」


フォルンがまた嬉しそうな笑顔をユークに向ける。

人とは脆い生き物だと思う。

けれどその一方で、たった一言でこんなにも嬉しくなってしまえるのだから強くはなりきれない。

ユークの一言がフォルンを笑顔にするのを眺めていると、ぼぅとしていたジャンも大きな声で「僕も!」と言って皆で笑った。



そしてその夜、別のグループ二つが同理由により脱落した。



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