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第10話 :リース

「・・・嫌だと思う理由は何?」


彼女の顔を見て、私は不思議に思い尋ねる。

呼ぶ。そんな単純な魔法に、1時間掛けても、2時間掛けても

あの高い空からは何も飛んで来ない。


唯手をかざして、旋律を描くように振り下ろし、名前を呼ぶだけの魔法。

それは技術の問題の前に、彼女に呼ぶ気がないからだと分かってるから不思議でたまらない。


「・・・ルキアが嫌い?」


小さくうな垂れている少女に新たな問いかけをすると、彼女は勢いよく顔を上げる。


「大好きデスよ!!」


何の迷いもないその言葉。


「じゃぁ、ルキアを操る自信がないとか・・・かしら?」

「違います!!」


この目はこんなにも真っ直ぐなのに。

ますます分からなくなり、心にポッと浮かんだ質問を投げかける。


「じゃあ・・・、命令するのが嫌?」

「・・・」


黙り込んで、少女はコクンと小さく頷く。

それは今じゃ考えられない、感情。

ドラゴンはマスターに仕え、マスターはドラゴンを操る。

それが常識のなかで、彼女の目が目指そうとしているのはそんなものじゃない。


「どうしてですか・・・?どうして、マスターは命令するのですか?」


その目は私に真剣に疑問を投げかけてくる。


「コールを命令にするかどうかは、コアちゃん次第。」

「私が・・・?」


コアちゃんの真っ白で綺麗な感情に私は自分に問い始めた。

いつからだろう。

私の声に従え、と思い始めたのは。


「いい?コアちゃんが“聞け”というのと。

“お願い”というのは、全く違うの。でも、二つともコールなの。」


コアちゃんがにっこりと笑った。

その時、風が遠くからかけてくる音がした。


その手はかざされても、風の音がする。


「ま・・・さか・・・。」


ヒュゥ”


『・・・そんなこと、願わなくても。来てと呼べばいいのに。』


遠くから白いドラゴンが飛んできて、コアちゃんに話しかけている。

声を上げずに、手を振らずに・・・ドラゴンを心で呼んだ。


「来てくれてありがと!!」


白竜に向けられた笑顔は、とても幸せそうなものだった。


『はっきり聞えるまでに、少し時間がかかるみたいですね。』


はっきり聞えないのは唯まだ、安定していないから。

もしも、安定したら?そう考えると恐ろしいほど凄い、ドラゴンマスターになるかもしれないと思った。


「素敵。」


無意識のうちに口から漏れたその言葉に、何の驚きもなかった。

リュークと契約したあの日が、あの日の気持ちが鮮明に蘇るような気持ちになった。


「・・・心に留めておいて。貴女は忘れてはいけない。

全てのものを形や在り方に捕らわれない、貴女の目でいて。」

「ふぇ?・・・・・はい。」


初めて見たときに、その目に感じたの。



貴方はきっと、高く舞い上がっていく。

あの空に――――――――――――――――


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