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得てもいないのに失うという表記

作者: 作倉由佳



すきなひとができるといつもこう、と私は思う。




窓の外はいつもと変わり映えのない景色がうつっていた。

電車で2時間の学校に通う私の楽しみは、もうイヤホンから流れる音か、スマートフォンの画面に表示される文字列くらいだった。



彼を見るまでは。




電車のドアに頭をぶつけるんじゃないかと思うくらい高い身長。

切れ長の細い目。淡白そうな顔立ちなのに、友達さんと話す時たまに見せる笑顔がかわいかった。


私の退屈だった2時間に、ドキドキが生まれた。

見てるだけでよかった。




昔から、すきなひとのことは、つい目で追ってしまうのだ。


彼のことをたくさん見たいと思うのは、電車で彼を知ってからだった。



どれだけ電車に乗り遅れそうでも彼の乗る5両目にかけこんだりだとか、それだけじゃなかった。

学校が同じだと知ると、食堂で彼がいないか探したりするし、被ってる授業の時に彼の方を30分おきに見てしまったりだとかもする。



自分でもなかなか気持ち悪いな、と思う。

チラチラ意味がわからないまま人に見られるなんて私は嫌だ。そう、自分が嫌なことを私は我慢しきれてないんだ。




「もう、こんなストーカーやめたい。」

そっと呟いた。



周りには人はいなかった。だってここは、先頭車両。人があんまり乗らない車両だから。


立つ必要がなくて好きなところに座れるし、周りに人がいないっていうのは電車慣れのあまりしてない私には落ち着く。

彼と出くわさないように乗った1号車は思いのほか居心地が良かった。


彼がいて緊張することもなかった。

彼がたまたまこっちを見ることはない。彼のかっこよさに心臓が苦しくなることもない。



ただ、少し寂しくなるだけで。




慣れるためにも、明日からはこの車両に乗ろう、そう決めた。






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