第十八話
翌日、マルタで過ごしていた俺達はマイビスに事を話した。
ダイロンさんの死はショックを受けていたマイビスだが、立ち直りの早い。
資材はいとも簡単に貰えたので至急復旧作業を行う事に。
平穏を取り戻したと思った最中、再び悲劇が起こる。
「姫様!? 姫様!」
突然、そう。突然に姫様が倒れてしまった。
息が上がり、凄い熱がある。
「……これは一体……?」
「姫様は無事なのか!?」
一先ずベッドに横にさせ、マイビスを呼んだ。
この世界の病気など全く知らない俺に、治療なんてできる筈がない。
「恐らく、魔力の消耗が原因でしょう」
そう言われると、だいぶ落ち着いた。
確かにクロウとの戦闘でだいぶ魔力を消費した姫様。
あれはそこまで膨大な魔力だったのか。
「治療の薬草が、あればいいのですが」
「今ここにはないのか」
「はい。魔力を高める「ヴィエリタ草」は「ヴィエリタの森」という所にしかありません」
ヴィエリタの森、か。
「俺が取りに行く。どこにあるんだ?」
「……ここから北に、二日ほどかかったところです」
かなり遠いな。
「馬車でどれくらいかかるんだ?」
「馬車ですと一日で到着するかと思います」
馬車で行くしかないか。
「ですがお勧めは出来ません」
「どうして?」
「あそこの道は、馬車を狙う賊が多いのです」
なるほど。金目の物を狙うのか。
「わかった。じゃあ歩いて行くよ」
「すみません。私は行けないので」
「いや、いいよ。看病しててもらえるかな?」
「はい。ではお気をつけて」
マイビスに言われ、行き先が決まる。
ゆっくりしている時間はないな。早いとこヴィエリタの森まで行って、薬草を取って帰ろう。
一応賊対策の為に剣を腰にしまう。
ダイロンさんの大剣はマイビスに渡したが、あれを俺に渡してきたマイビス。
俺に使ってほしいとのことだが、修練を積まないとあの剣は振れない。
マルタをでて、北に向かう。
二日かかるそうだが、急いでいく俺は夜をも歩いた。
ヴィエリタの森まで行く途中、村を見かける。
「へえ。「ヴィエリタ村」か。……少し休もうかな」
なんて甘い考えを持ったが、先に進む事に。
もうすぐだ。
しかし二日目の夜は流石に厳しく、倒れ込むように寝転んだ。
何もない草原だが、心地のいい風でゆっくり眠る事が出来る。
二日目の朝、目覚ましも何もなしに早朝に目覚めた俺は腹が減ったのを確認した。
「相違や昨日何も食べてないな」
不思議なくらいだ。
何も食べないで一日歩いていたというのか。
「うーん。でも、食べるものないなぁ」
森に行けばなにかあるだろうか。
せめてマルタで何か買っておけばよかったな。
まあ、考えても仕方ない。
先に森に行って、薬草を取ったら昨日見かけた村で食事をさせて貰おう。
そう自分に言い聞かせて先を行く。
「おい待ちな兄ちゃん」
森まであと少しと言った所だろうか。
「へへへ。金目のものおいてけよ」
賊に囲まれてしまった。
敵は四人で、いずれも弱そうな賊だ。
「金目のものなんてないよ? 二日前から何も食べてないんだわ」
真実を告げる。
「ああ? ならその剣おいてけや!」
しかし賊はなんとしてでも俺の物が欲しいそうだ。
仕方ない。
「……俺はネヴァラ国の兵だ。それでもやるか?」
俺の一言に、辺りは一瞬黙った。
「ネヴァラっていやぁ、ヴィエンス王に破壊された国じゃねえか?」
「でもヴィエンス王は死んだって話だ」
「……マズいぜ」
賊はそそくさと逃げていく。
なんだ、兵の肩書きってすごいな。
さて、邪魔者もいなくなったことだし森に行こう。
数分後、森へ到着。
しかし扉に鍵がかかっており、入れない状態。
「賊防止の為、施錠をしております。御用の方はヴィエリタ村まで……くそー」
軽く項垂れる。
一日無駄にしてしまったのか俺は。