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第十三話

 ネヴァラをでた俺は、危険を察知し森の中を歩こうと決意。

 伏兵を隠すなら森の中だろうから普通の道を歩けば死ぬ、確実に。


 森の中を息を殺して歩いて行く。


 俺の他に、敵意のある敵の姿が見えないが後ろからつけられている気配を感じる。

 しかしそんな気配をも忘れさせるほどの脅威が目の前に立ち尽くした。


「くっ……」


 見た事のない紅い衣装に身を包み口元を布で隠す二人の男に、剣を構える三人。

 俺はまだこの世界で見た事ないが、恐らくあの二人は魔法使い。

 さて、どうするか。


 木刀を構える俺はどちらが先に動くかを見極める。

 下手に動いて変な魔法を使われれば厄介なわけだが、このままこうして時間を費やすだけは勘弁だ。


 口を動かす事のない兵士をただただ牽制しあう。


「ふぅ……ふっ」


 仕方がないが動かす。


「でやぁっ!」


 木刀を振るった俺を見て一人の兵士も動き出した。


 ガキンッ! という鈍い音が響き、距離を置く。

 やはり本物の戦闘では俺の方が不利なのかもしれない。


 五対一の場合、かなり頭を回転させて戦わなきゃ勝てないのは確かだ。


「はっ!」


 後ろの魔法使いも気になるが、まず倒すべきなのは目の前の三人の兵士。

 今の所魔法使いは動かないようだが、三人を倒すまでは無事だという事だろうか。


「ふんっ! はぁ!」


 良く動き回りながら木刀を振るものの、相手はまだ余裕の様子。

 そして気付いたが、木刀をあの剣と交える度に俺の木刀が痛んできているのがわかる。


 新品の筈の木刀がこんなにも早く痛むわけがない。


「……魔法かよ、くそが」


 剣の硬化魔法でも施してあるんだろう。


「なるほど。動かないわけだ」


 こんな痛んでる木刀なら、相手に直撃しても死ぬ程度のダメージはない。

 この場は逃げるしかないか?

 いや、だが魔法使いがいる。遠距離攻撃なんてされたら避けれる自身がない。


 引き返す。


 いや、同じだ。

 コイツらまさかずっとここにいたのか?

 俺が夜に出る事を知ってたかのように、そして俺がここに来るかのように構えていた。


「どうやら終わりのようだ」

「では始末しよう。ボスも喜ぶ」

「参ろう」


 三人は一斉に剣を構える。


 相手の攻撃を木刀で受け止めても壊れるだけだ。

 避けるしかない。


「…………」


 息をのみ、攻撃を交わす体制を作る俺。


「な、に……っ!?」

「ぐああぁぁ」

「ぐっ!」


 しかし、敵兵が倒れていく。


「な……?」


 状況が読み込めない俺に、次々倒されていくヴィエンス兵。


「――口ほどにもないな。大丈夫か?」


 そう、姫様だった。


「なんで姫様が?」

「後を追ってきたのだ。お前が心配だったのでな」

「そんな。危険だ」

「はは。死にそうだったお前に言われても説得力ないぞ」


 軽くあしらわれる。

 まあしかし。姫様のお蔭で助かったというのもある。


「はぁ。まあ感謝はしてるけど、城へ帰ろう」

「何を言うのだ。私もマルタへ行く、さあ急ぐぞ」


 姫様はそう言い先陣して森を抜けようとする。

 仕方ない。呆れながらも俺は姫様についていく。


 もう敵兵は潜んでいないが、危険なのは確かだ。

 姫様のすぐ後ろを歩く俺は周囲を警戒しながら進む。マルタはもうすぐだ。


「私のお蔭だな! どうだ私の魔法は!?」

「まあ、救われた。助かったよ、ありがとうな」

「うむ。良いぞ」


 何が良いのかわからないが。

 他愛もない会話を交わし、森を抜けた。


「ここがマルタか?」

「ああ。まあ今日は遅いから、宿にでも行くか」

「……お金はあるのか?」


 ないです。姫様を当てにしました。


「じゃあ野宿か」

「それだけは勘弁だ。まあ、今回だけだぞ」


 宿へ向かう。


 どんな世界にも宿泊する宿があるというのはいい事だ。

 姫様はお金を支払い、部屋でゆっくり休んだ。


 当然別々の部屋だ。

 やましい気持ちは一切ないぞ。


 翌日。


「ふあぁ……」


 宿屋を出た俺は欠伸をしながら歩く。


「なんだ、寝不足か?」

「俺にだって考える事くらいある」


 実際、昨日はずっと国の事を考えていた。

 ヴィエンスの狙いはなんなのだろうか。もし奇襲をするならネヴァラの国の敵兵も倒せそうな勢いだ。

 まあ俺には戦争の事なんかわからんから、俺が確かめたい事を確かめられればそれでいいんだ。


「あ、マイビス姫に会いたいんだけど」

「大翔様ですか? ただいま」


 門兵は拍子抜けの返事をして門を開ける。

 俺が来たのがそれほど驚いたのか。


「どうぞ」

「ありがとう。じゃあ行こう」

「おお。なんというか、凄いな」


 姫様は感動しているようだ。

 そして城の中に入った俺は姫様を連れて王座に向かった。

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