再度円サイド・死んだ理由
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それは完全な白い世界。ここは白い病室だった。
窓の外の、名も知らない木がその季節の移ろいを教えてくれていた。
俺・・・いや、私はここで何をしてるのだろう?
幸せな夢を見た。
親しい友達が私に笑いかけてくる夢。
私はその友達は知らないけど私は確かにその友達を知っているはずだった。
本当に楽しくて悲しい夢。現実ではあり得ない夢。
私はここで一生を終えるのだ。悔しいけど涙さえ流すことは出来ない。
いや、私は涙の流し方すら知らないのだ。
私がここに居ると自覚したときからこの白い部屋に寝ていて、ときたまのぞき込むような感じの顔が見えたが、その人達は私にとっては単なる動くモノでしかない。
またあるとき違う夢を見た。
私の視線の前に黒い十字があって、その中に人が映っていた。
私は一瞬で私自身が何をしようとしてるか自覚した。
遠距離射撃である。
そしてここがどこなのかも自覚した。
西暦2030年6月20日、長崎県対馬沖である。
相手はこちらにロケット弾などを撃ちまくっている。
私は冷徹な心で容赦なく彼らを射殺する。
「隊長!」
部下が私に呼びかけてきた。
「横須賀の同盟軍総司令部より連絡!UNITED CHINA軍の別動部隊が博多湾へ侵入したとのことです。」
「博多にいるジャックに連絡しろ。UNCHIは下水道へ追い込めってな。」
「隊長の読みは当たりましたな。」
「・・・。」私はちょっと笑う。「行け。」
「は。」
「イエロー部隊に伝達。この連中は便衣兵と認識。殲滅しろ。」
私は他の部下に命令した。
「ブルー部隊は博多湾へ行ってレッド部隊と連携し包囲殲滅。俺のホワイト部隊はイエローと現作戦を続行。」
ここはまったくもって地獄である。
海面には敵の死体が相当浮いていた。
敵の最後の一隻が爆沈した。
俺は甲板から海上の死体を見ながら報告を聞いていた。
「こちらの損害は2名のけが人のみです。」
「分かった。普天間へ帰投するぞ。」
「イエッサー。」
部下は走って行く。
その時胸に激痛が走った。
私の胸から血が噴き出していた。
見ると海上の生き残った敵の女が銃をこちらに向けていた。
「良い腕だな。」私は彼女を射殺して倒れた。
青い空を見ながら志保や和花の顔を思い浮かべた。