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お茶会

私は今悩んでいる。

『奴』との最初の接触をどうするかだ。

私の回りには取り巻きがあってなかなか動けない状況だ。

ターゲットは眠そうに窓の外を見てる。

確かこの時は妹の和花のどかが生まれ、子育てに参加していたころで結構、徹夜も多かったと思う。

ああ、シスコンと呼びたければ呼びゃいいさ。

対馬戦役に派遣される前に激怒してたのをジャックに戒められたぐらいだからな。

そういう要素も絡んで戦死してしまったのかな~と。

・・・あれ?そういや確かこの円の姉ものどかだったな。

すごい偶然。

私は取り巻きに愛想笑いをしながら、そんな思考をしていた。

ところで水沢円としての私の目標は何だと思われるだろうか。

それは血生臭い前世の反動かも知れないが、大和撫子なお嬢様を目指すことである。

『オペレーション・大和撫子計画』と命名してもらっても構わない。

つい最近、それに杉村一家への干渉と未来での戦争回避も加わり、その2つの方が自分の中で優先順位が高くなった。


「水沢さん。」

体育時間に私はぼんやりとしていたが、同じクラスの女子に話しかけられた。

「隣り良いかな?」

「ど、どうぞ。」

ああ、俺はこいつを良く知っている。ケンカ仲間の雛崎志保だ。

とかく幼稚園の頃からの『準』の腐れ縁で・・・・・・。

志保は私の隣に座った。

「・・・・。」

「・・・・。」

参ったな。話かけづらい。

「水沢さんってあの水沢財閥の令嬢なのよね。」

「そ・・・そうだけど?」

変な緊張感をもって志保が話しかけるから、こっちも緊張してしまう。

「あいつ。」といって志保はサッカーに興じてる男子組の中の準を指さした。

・・・・我ながら相変わらず眠たそうにしてるが。

とは言え、何となく志保が何を言いたいのかだんだんと分かってきた。

ちょ、ま、待てよ志保、お前なんか誤解してるだろと口に出しそうになった。

「あいつ、私の腐れ縁の幼なじみなんだよね。」

「うん。」知ってるよ。

「水沢さん、あいつのこと好きなの・・・?」

「・・・・違うよ。」余計な事を言いそうになるので俺はそれだけに留めた。

「だって水沢さん、あいつのことチラチラ見てるし。」

らしくなく志保はイジイジしてる。

「・・・・・それは。」非常に答え辛い。

目標である両親の事故死の回避には、準への接触、干渉は避けることは出来ないからだ。

別に円=準てのは極秘事項ではない。

物語によっては縛りの一つだろうが、少なくとも俺はそんな警告受けた覚えもないし、受ける覚えもない。

それに合理的な理由付けにならない。

同一人物の存在なら、エネルギー保存の法則に抵触するだろうが。

・・・志保を協力者にするか・・・・?

それしか無用な誤解を招かない方法は無いとも思える。

「雛崎さん。・・・ちょっとお話があるんだけど、放課後、時間もらえる?」

志保はちょっとうろたえて返事した。

「・・・・はい。」


「お帰りなさいませ。お嬢様。お客様いらっしゃいませ。」

玄関のところでメイドさんたちの歓迎を受けた志保は引きまくりだった。

「こちらはお友達の雛崎志保さんです。お茶をお持ちして。大好物のヒヨコサブレをお出ししてください。」

「はい。」

引きまくりの志保は、ん?という顔になった。

「水沢さん、私の好物って知ってたの?」

「・・・それもふくめ全てお話しましょう。私と貴女、そして杉村準の関係を。」


「何からお話しましょう。」緊張して口が渇くので紅茶で唇を湿らす。

部屋の中で私と志保は相対してテーブルに座っていた。

志保は緊張しまくってる。

「志保さん。準と居るときより明らかに緊張してますね。」

私はちょっとイタズラ心で言った。

「え?」

「そう言えば、中学校の時でしたか、机の下から2番目の引き出しに、参考書に偽装したエッチいな本も見つけ出して涙目でしたわ。」

「・・・・」

「タンスの天板に貼り付けたエッチいな本も見つけられたときは絶望を感じましたわ。」

「・・・・・・。」

「おしりの三つのほくろを見られたときはさすがに泣きましたわね。」

「・・・・・・・・・あなた、・・・・いったい。」

「あなたと準の思い出だと思っていますが間違ってます?」

「・・・それを知ってるのは私と準だけよ。・・・・・あなたは一体だれなの?」

志保は違う意味で緊張してるのが分かった。

「・・・志保は今言ったじゃないか。それを知ってるのはその二人だけだと。」

敢えて口ぶりを変えて、私は志保に言う。

「・・・で、でも。」

「私の名は水沢円だけど、杉村準でもあるのよ。」あっさりと告白してみた。

「10年後ぐらいに東シナ海や対馬海峡で紛争が起こる。準はそこで戦死したのよ。」

「10年後・・・・・戦死・・・?」

まあ衝撃的だろうね。

この時点の俺も同じような反応を示すと思う。

現時点では準に話す気はないけど。


私はおおまかに事情を説明した。

志保はしばらく黙っている。

「私は・・・・。」

その声に私は振り返って志保を見つめる。

「わたしはどうしてる?」

「この世界はもはや別の流れになってることを前提に言うと、いろいろあって離婚調停・・・・。」

てへっと私は自分の頭を軽く叩いた。

「離婚・・・?」

「両親を失った俺はそれこそがむしゃらにやってたからなあ・・・・。

時間が合わなくなって離婚調停。ま、他にも身の安全の確保とか理由があったけどね。」

でもこれはすでにもうひとつの世界の歴史だ。

水沢円が16まで生きてる時点で歴史はすでに変わっている。

とはいえ、今の志保に離婚とか結構深刻な話だったなあ。私はちょっと後悔した。

「・・・だから雛崎志保さん。私に協力して欲しい。」

強い調子で志保に語りかける。

「未来を変えるために協力してほしい。」

私はかつての幼なじみ、そしてかつての嫁さんに頭を下げた。

「・・・・分かったわ。・・・・その代わり、もっとあなたの事を話して。」

「・・・・分かった。」私はうなずいた。

「じゃあ水沢円と未来準のどっちから行く?」

「まずは今の円さんから。」

・・・私たちはその後語り合った。

幸い次の日が休みだったので志保は我が家に泊まり、大いに語り合ったのである。

ちなみに諸兄の考えは中身オサーンの俺が志保に襲いかかったと思われるだろうが期待外れである。

その辺の『男』としての性欲は欠如しているようだった。

その夜、志保にセクハラまがいのことをされたことは別の機会にでも語ろう。


「離婚?」

志保は驚いたように言った。

「仕事柄、お前まで狙われる可能性も捨てきれん。」

俺はテーブルを挟んだソファに座って妻の志保と相対していた。

「・・・・、あんた、海兵隊で何やってるの?」

「・・・・軍事機密に関わるから黙秘。」

俺は憮然として言った。

「・・・・そう。普通の部隊じゃないわけね。」

「普通の状態ならまだしも臨戦態勢だ。日本やアメリカには中共や朝鮮の工作員がいるからな。

お前や和花が狙われる可能性も排除出来ない。」

俺は志保の顔を見て動揺したが全て飲み込んで、離婚届を入れてる封筒を志保の前に差し出した。

「うううううう!!!」

志保は突然立ち上がって俺のほおをぶん殴った。しかもグーで。

正直、殴られたほおよりも心が痛い。

「あ・・・あんた・・・、」

彼女は泣いていた。

「何もかも背負おうとしやがって・・・!!」

俺は志保を抱きしめる。

「ごめんな。志保。」悪い夫で。


自分でも浅い眠りだということが分かった。

海面が覚醒だとすると、深い海中から浮かんでくる感じ。

同時に自分の体に魂が充填する感じ。

諸氏等は醤油を入れるスポイドみたいなのをご存じだろうか?

ちょうどあれが満たされる感じで体に「魂」が充填していった。

「・・・・。」

なんか体にのし掛かってるような・・・・。

下を見て私は仰天した。

私と志保は全裸で寝ていた・・・・・。

私が下側で志保が上側で、志保は寝ぼけながらぐへへと私の胸をもみしだいていたのだ。

「○△◆%⌘〒〠☂!?」

私は声にならない悲鳴を上げたのだった。

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