表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

プロローグ 2

・・・

・・・・・

・・・・・・・

またこの夢だ。

俺はベッドの中で大きくため息をついた。

ため息もヤローの声じゃ無く甲高い、いわゆる女性の声だった。

裸も動揺するようなレベルは大昔に過ぎ去ったのでさっさとセーラー服に着替える。

俺・・・いや、あたしは水沢円、高校1年生である。

え?名前って準って言われてたよねとツッコミは覚悟の上だ。

もっともだと思う。

確かに対馬に派遣された海兵隊特殊部隊隊長、杉村準は俺のことだ。

・・・・だが対馬戦役で戦死した俺はなぜか20年前の2010年に戻っていた。

しかも魂だけで俺の意識が宿ったのはまったく別の人間だった。

最初は自分が何者なのかさっぱり理解出来なかった。

そこは病院で病室には水沢円という名前がかかっていて、それが自分の名前だと理解するには結構な時間がかかったのである。

その名前が何を意味してるのかも最初『思い出せなかった』。

名前だけ聞いたことがある薄幸の少女だということを。

「円、私はお前が元気になってくれてうれしい。」と父親が感涙にふけりながら朝飯を食べている。

うん。ちょっとうざいかも。

でもま、中身は同年代のおっさんなのでこの父親の気持ちも分からんでも無い。

『魂』が無いような娘が突然元気になったんだから。

「お父様、ちょっとうざいですわ。朝食中ですのよ。」

・・・・容赦ないな-、円の姉。

心の中で戦々恐々としつつ、オヤジに助け船を出す。

「ま、まあ10歳まで生きられるか分からないって宣告されてたから・・・・。」

そう、俺の記憶にある水沢円は10歳ぐらいで短い生涯を終えたはずだった。

しかも病室で最後の最後まで自我がなかったらしい。

一度も学校に出てこなかた。

結果的に言えば、最初から魂が無かったからおれが入り込めたのかな?と俺なりに分析している。

この体に入り込んで5年ほど経っているが、すでに慣れた。

もちろんそれを客観的に見ている「杉村準」もいる。

自我意識は状況によって変わるが、基本的に円:準=85:15が平均である。

だからといって二重人格ってわけでもないのだ。

円は私だし、準は俺だ。

「今日から高校だな。円。」

「はい。お父様。」

そうなのだ。

今日から高校に入学する。

両親にとっては本当に嬉しいらしい。

姉ののどかはちょっとうざそうにそんな両親を見ている。

平和っていえば平和だなと思う。

「私は入学式の準備があるから先に行っとくよ。円。」

「はい。お姉様。」

「新入生代表として答辞するんだっけ?打ち合わせがあるから8時には生徒会長室に来るように。」

ちなみにそこはかつての自分にとっても母校であるのだが、時系列的に考えると頭が痛い事象を自覚してしまう。

そこには自分も入学してくる可能性が非常に高い。

SFなんかではよく二重存在のパラドックスがネタに上がる。

同一人物が接触したら両方存在が消えてしまうとか、宇宙全体が崩壊するとかよくあるネタだ。

その場合、質量保存の法則とかが根拠になっていると思われるが、物理法則が通用しない『魂』はどうなんだろう?

すでに過去へ時空間移動をやってるから、物理法則が通用しないのは俺自身の魂を以て実証済みだ。


・・・・高校の頃、俺何やってたっけ・・・・。

少なくともこの円はすでに亡くなってるので接点はなかったはずだ。

妹の和花が生まれているころのはずである。

その後、数年後には両親が死に・・・・・・。

・・・・・この私、水沢円が生き延びてる時点で歴史が変わっている。

なら、もしかしたら両親の死も避けられるのではなかろうか?

もっともそれなら海兵隊に入ることもなかったかも知れない。

かつての両親を死なせない。俺は密かに誓いつつ、入学式に臨んでいる。

幸いにして前世の記憶は特殊部隊で居た頃の記憶も含め、ある程度保持している。

「新入生代表、水沢円さん。」

「はい。」私は私に意識が切り替わって登壇した。

私は挨拶をやってる意識の片隅で、俺は俺のままでいろいろと考えていた。

この子の体はしっくりくるほど、扱いやすい。

今更ながら、なぜ短命で終わったのか不思議なぐらいだ。

・・・・魂がなければただの木偶人形とはちょっと言い過ぎだろうか?。

はじめから俺の体(いやらしく無い意味で)だと言われても納得出来るだろう。

何度も言うが決して多重人格じゃないのだ。

多分・・・・・。

そんな中、同級生の中に見慣れたあいつのツラを見つけた。

誰かって?決まってるだろう。かつての自分、高校1年の杉村準だ。

思わずニヤッと笑ってしまったね。

自分的には2026年の南シナ海海戦で敵の要衝を壊滅させたときぐらいの得心だった。

その凶悪な俺の顔を見たのか最前列の生徒が目を白黒させていたが、気のせいだと自分の中で折り合いを付けたらしい。

何と言っても私は笑顔で話してるのだから。

水沢円は大財閥、水沢グループの令嬢なのだ。

もっとも逆に言えば、巨大財閥の力を以てしても前世の水沢円は救えなかったって事だけどね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ