旅先のおじさん。
【旅先のおじさん】
始発の鈍行列車。
車窓には田んぼが広がっていた。
中古レコード屋で見かけた一枚のチラシ。
【富山大学学園祭・前夜祭。ゲスト、ビデオスターリン】
ビデオスターリンの野外ライブ。
当日、会場に早く着いた私は1人学園祭を楽しんでいた。
学内の小道。道端に1人座っている小柄なおじさん。どこからどうみても普通のおじさん。
(ミチロウさんだ。)
近くを通る人、誰も気づいていないのか。
「・・・あの、ミチロウさんですよね?」
ミチロウ「あ、はい。」
「ライブ見にきました!」
ミチロウ「・・・ありがとう」
会話が続かない・・・と、思った瞬間
ミチロウ「暇なので少し話しますか?」
「あ!はい。ありがとうございます」
ちょこんと隣に座る私。
「あ、あの、1人なんですか?」
ミチロウ「ええ、人混みが苦手なもので」
「私、ここにいていいんですか?」
ミチロウ「ええ、暇なので」
ニコニコと笑いながら、私の話を聞いてくれるミチロウさん。
それからビデオスターリン結成にいたるまでの話や音楽の話をしてくれるミチロウさん。
凄く丁寧な話し方、夢のような時間。
小一時間ほどでしょうか。
ミチロウ「そろそろ時間ですね」
「ありがとうございました」
ミチロウ「・・・こちらこそ」
ライブが始まり、ミチロウさんは
「遠藤ミチロウ」になった。
何かが憑依したような。いや。これが本当のミチロウさんなのか。
ニコニコと笑っていたあのおじさんはもうどこにもいなかった。
あれは夢だったのか。
30年以上経った今も、時々思い出す。
ひとりぼっちの私の横にいた「孤独の匂いのするおじさん」の事を。
お読みいただきありがとうございます。
これは4年前にスマホメモに残してた文章です。
拙い文章ではありますが……
今回、手を加えずに投稿しています。




