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旅先のおじさん。

作者: きのこの山
掲載日:2026/09/17

【旅先のおじさん】


始発の鈍行列車。

車窓には田んぼが広がっていた。

中古レコード屋で見かけた一枚のチラシ。


【富山大学学園祭・前夜祭。ゲスト、ビデオスターリン】


ビデオスターリンの野外ライブ。


当日、会場に早く着いた私は1人学園祭を楽しんでいた。

学内の小道。道端に1人座っている小柄なおじさん。どこからどうみても普通のおじさん。

(ミチロウさんだ。)

近くを通る人、誰も気づいていないのか。

「・・・あの、ミチロウさんですよね?」

ミチロウ「あ、はい。」

「ライブ見にきました!」

ミチロウ「・・・ありがとう」

会話が続かない・・・と、思った瞬間

ミチロウ「暇なので少し話しますか?」

「あ!はい。ありがとうございます」

ちょこんと隣に座る私。

「あ、あの、1人なんですか?」

ミチロウ「ええ、人混みが苦手なもので」

「私、ここにいていいんですか?」

ミチロウ「ええ、暇なので」

ニコニコと笑いながら、私の話を聞いてくれるミチロウさん。

それからビデオスターリン結成にいたるまでの話や音楽の話をしてくれるミチロウさん。

凄く丁寧な話し方、夢のような時間。

小一時間ほどでしょうか。

ミチロウ「そろそろ時間ですね」

「ありがとうございました」

ミチロウ「・・・こちらこそ」


ライブが始まり、ミチロウさんは

「遠藤ミチロウ」になった。

何かが憑依したような。いや。これが本当のミチロウさんなのか。

ニコニコと笑っていたあのおじさんはもうどこにもいなかった。


あれは夢だったのか。


30年以上経った今も、時々思い出す。

ひとりぼっちの私の横にいた「孤独の匂いのするおじさん」の事を。

お読みいただきありがとうございます。


これは4年前にスマホメモに残してた文章です。

拙い文章ではありますが……

今回、手を加えずに投稿しています。

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