第二話 アリバイを崩せ 第二部「事件の概要」
推理は、徐々に核心部分に入っていく。まずは、当時の状況を再確認するところから始めた。
「こっちが僕のお父さんのタカシ、こっちがお母さんのエリ。」
僕は慎重に言葉を選びながら、クリスに二人を紹介した。
「お父さん、お母さん、初めまして。今日はどのようなご用件でしょうか?」
クリスが丁寧に答えた。
慣れない状況のせいか、お父さんもお母さんも、しばらく黙ったままだった。
「実はこれから、ちょっとした推理をしたいんだ。まずは事件の概要を共有したいから、
“2001年12月に錦のナンバーワンホストが殺された事件”について、当時の新聞記事を探してもらえる?」
「かしこまりました。」
クリスは落ち着いた声で答え、情報を表示する前に、いつもの注意を忘れなかった。
「私はAIとしてネットワークにつながっています。個人情報や機密情報の入力には十分ご注意ください。
不用意に入力すると、大切な情報が外部に漏れる危険があります。」
軽い気持ちでAIに頼ってきたお父さんも、その言葉を聞いて初めて事の重大さに気づいたらしく、思わず生唾を飲み込んだ。
「OK、そこは僕に任せて。」
そう言ってから、僕は改めてクリスに指示した。
「じゃあ、始めてください。」
数秒後、クリスはいくつかの新聞記事を画面に表示した。
中央日本新聞の記事には、
「名古屋市錦のホストクラブ『ゴージャス』のナンバーワンホストが、何者かに殺害された。警察はホスト同士のトラブルの可能性も視野に捜査中」
といった簡単な内容が書かれていた。他の新聞も似たようなものだった。
「こんな情報もあります。」
クリスは次に、あるブログを表示した。
「金田一おじさんの事件簿」
どこかで聞いたことのあるようなタイトルだ。
プロフィールにはこう書かれていた。
「僕の名前は金田一です。
名前の読みから、子供の頃から“金田一”と呼ばれていました。
探偵ではありませんが、報道された事件を多方面から調べ、僕なりに解説します。」
そのブログには、新聞よりも詳しい事件の概要がまとめられていた。
◆ 事件の概要
• 被害者:マサヤ(本名:木村雅也・28歳)
錦のホストクラブ『ゴージャス』のナンバーワンホスト。
• 犯行日時:2001年12月4日(月)
• 死亡推定時刻:午後3時〜3時半
• 犯行現場:千種にあるマサヤのマンションの自室
• 犯行状況:
スタンガンで失神させた後、室内の電気ポットのコードで絞殺。
スタンガンとコードは現場に残されていたが、指紋はなし。
争った形跡もなく、顔見知りによる犯行とみられる。
• 死体発見:12月6日(水)18時頃
連絡が取れず、店にも出勤しないことを不審に思った同僚ホストが発見。
4日(月)・5日(火)は店の定休日で、特に火曜日はマサヤが誰にも会わない日だったため、発見が遅れた。
• 重要参考人:タクミ(本名:大石拓海・32歳)
元ナンバーワンホスト。事件当日、借金30万円を返すためにマサヤを訪問。
しかしタクミにはアリバイがあり、立件には至らなかった。
• 背景(被害者):
マサヤは新宿歌舞伎町でもナンバーワンだったが、客の取り合いや金銭トラブルが絶えず、身の危険を感じて名古屋へ。
錦でも半年でナンバーワンになったが、同様にトラブルが多かった。
• 背景:
タクミはマサヤに指名客を奪われ、売上が激減。
事件当日、30万円を返した直後にマサヤが殺害された。
マサヤは毎週月曜15時にオーナーへ電話報告をしており、15時から約5分間の通話履歴が残っているため、犯行は15時5分以降と推定。
• アリバイ:
タクミは「金を返した後、まっすぐ地下鉄で丸の内の自分のアパートに帰宅した」と供述。
自宅近くのコンビニで缶コーヒーを買った防犯カメラ映像とレシートもあり、
その証言どおりなら午後3時前に千種を出る必要があり、アリバイとして成立していた。
• 凶器の出所:
現場のスタンガンは闇ルートで入手したものらしく、購入者の特定は不可能。
• 都市伝説:
あまりに巧妙な手口から、「殺人設計士」の関与が噂された。
「殺人設計士」──初めて聞く言葉だ。
僕はお父さんに尋ねた。
「殺人設計士って何?」
「それか。」
お父さんは腕を組みながら答えた。
「『殺人設計士』は都市伝説と言われている。
昔、ある犯人が“殺人設計士にそそのかされた”と供述した記録がある。
最初は狂言だと思われていたが、数年後、別の事件でも同じような証言が出てきた。
全部で5〜6件。少ないが、無視できない数だ。」
お父さんは続けた。
「噂では、決まった日時と場所に“殺人設計士”が現れるらしい。
そこで依頼人が要望を伝えると、10万円ほどで“殺人設計書”を書いてくれるという。
警察も噂をつかんで張り込みをしたことがあるが、結局姿は見せなかった。
誰が流した噂なのかもわからない。
実在するのか、都市伝説なのか──それすら断定できていない。」
そして最後に、淡々とこう言った。
「まあ、“一般的な殺人マニュアル”を売ってるだけなら、法律的にはグレーで逃げ切れるかもしれない。
ただ、具体的な相手を聞いて“こう殺せ”まで指示したら、さすがに殺人ほう助か教唆でアウトだろうな。」
「ああ、その事件なら思い出した。私が中学生の頃、中日放送のワイドショーでも取り上げていたから。学校でもちょっとした話題になった事件よ。」
お母さんが突然口をはさんだ。
するとクリスが静かに言った。
「新聞報道によれば、2010年の時効廃止時点で“1995年以降の未解決殺人事件は369件”あったとされています。」
「369件……。」
お父さんは低くつぶやいた。
「その中には、設計書に基づいて起こされた事件もあったかもしれないし、
設計してもらっても犯行に至らなかったヤツもいるだろう。
そう考えると、“殺人設計書”は相当数出回っていた可能性があるな。
実在するとしたら、本当にふざけたヤツだ。」
お父さんは吐き捨てるように言った。
お読みいただき、心からありがとうございます。
この作品は、私が書いた原稿をAI(Copilot)と一緒に磨き上げながら作っています。
一緒に推理しているような気持ちで書いているので、続きも楽しんでいただけたら嬉しいです。
これからもどうぞよろしくお願いします。




