表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!  作者: 山田 バルス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/44

第21話 アルベルト視点 ― 財産消失と怒りの矛先

アルベルト視点 ― 財産消失と怒りの矛先


 ミーアとの顔合わせをやめて数日。

 冷え切った心を、政務に集中することでごまかしていた。

 ――少なくとも、そう思っていた。


 だが、その平穏は唐突に破られた。


 朝、執務室にて。


「殿下。こちらをご確認ください」


 侍従が差し出した帳簿を開いた瞬間、俺は目を疑った。


「な……なんだと?」


 王宮の金庫に保管していた俺の私財、その中から――金貨百枚が消えていた。


「記録が……残っている?」


 慌てて帳簿を追う。

 そこには《高級洋食》《スイーツ詰め合わせ》《家具・雑貨》など、信じがたい用途で支払われた明細が残っていた。

 最後にこう記されている。


《※本件はすでにお支払い済みです》


「馬鹿な……誰が許可を出した!?」


 怒声が執務室に響く。

 侍従たちは震え上がり、「我々は一切……」と口を揃えた。


 俺は歯噛みした。

 権限を持たぬ者が勝手に金庫を開けることなどできぬ。

 つまり、この支出は「制度上も正規の処理」として扱われているのだ。


 だが、俺は何も注文していない。

 ……誰かが、俺の名を使い、勝手に浪費している。


 翌日。


 財産はさらに減っていた。

 金貨五十枚。用途は《娯楽ウインドウ使用料》《お取り寄せ通販》など、耳慣れぬ言葉ばかり。


「ふざけるな……!!」


 机を叩く音が響く。

 侍従たちは青ざめ、記録を持ってきた会計係はその場で気絶しかけていた。


 俺は焦燥に駆られ、金庫を自室に移した。

 堅牢な鉄の箱に金貨を詰め込み、寝ずの番をつける。

 これで盗み出されるはずがない――そう信じた。


 だが、その夜。


「……なっ!?」


 突如、箱が光を放ち始めた。

 中にいた番兵たちが慌てて開けたが、次の瞬間、金貨はすべて消え失せた。

 残されていたのは、金色の封蝋が押された一通の封筒。


《請求書》

《受領書》


 二枚の紙。


「ば、馬鹿な……」


 箱を叩いても、鍵を壊しても、中は空だ。

 その代わりに、明細には《スイーツ詰め合わせ・二十回》《高級寝具一式》などと記され、最後にはまたしても《お支払い済み》と書かれていた。


 俺は愕然とし、崩れ落ちた。

 これは盗みではない。

 制度上「正規の取引」として処理されている。


 このままでは――破産する。


「殿下」


 数日後。

 焦燥に沈む俺の元へ、アーサーとマッスルが訪れた。


「……聞き及んでおります。財産が不可解に消え続けているとか」

「はい。しかし、その件……我ら、心当たりがございます」


「心当たり……?」


 二人は顔を見合わせ、静かに言った。


「――ローゼの仕業です」


「……ローゼ?」


 思わず立ち上がる。

 あの女は地下牢にいる。

 自由も権限もないはずだ。


 だが、アーサーは頷いた。

「彼女は、かつてより不可解な“力”を使ってきました。牢屋で贅沢三昧に暮らしているという噂も……。ならば、この怪異も彼女によるものと考えるのが自然です」


 マッスルも続ける。

「殿下の財産を食いつぶしているのは、あの女に違いありません。断じて放置してはならぬかと」


 俺は拳を震わせた。


 そうか……やはり、あの女か。

 ミーアを呪い、俺の財を奪い、王家を笑いものにするつもりなのだ。


 怒りが、胸の奥からせり上がる。


「……許さん」


 低い声が漏れた。


「すぐに牢屋へ向かう。直接問いただし、この手で決着をつける」


 アーサーとマッスルは深く頷き、俺の背後に従った。


 夕刻。


 地下牢へ向かう階段を下りながら、俺は己の決意を固めていた。


 ――財産を食いつぶす女を、これ以上野放しにはできない。

 ――この手で、必ず罪を認めさせる。


 重い鉄扉の前に立ち、深呼吸を一つ。

 扉を開いた先で、俺を待つのは――贅沢に浸り、笑みを浮かべるローゼ。


 次の瞬間、俺の怒声が牢屋に轟いた。


「――ローゼ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ