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婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!  作者: 山田 バルス


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第16話 男爵令嬢ミーア視点 ― 鏡に映る絶望

ミーア視点 ― 鏡に映る絶望


 その日、わたしは王宮の舞踏室に呼ばれた。

 理由は簡単――王子殿下との朝の顔合わせである。

 いつものことのはずだった。わたしにとって、それは未来の王妃としての務め。誰よりも優雅に、誰よりも美しくあらねばならぬ時間。


 けれど――その日は違った。


「ミーア」


 アルベルト殿下は、冷徹な表情でわたしの名を呼んだ。

 その声は氷の刃のように鋭く、いつもの甘さは一切含まれていなかった。


「……殿下?」


 わたしは戸惑いながら微笑みを浮かべた。

 だが、殿下の次の言葉が、わたしを突き刺す。


「さすがに……太りすぎだ」


「……え?」


 一瞬、意味が理解できなかった。

 太りすぎ? わたしが? このわたしが?


 殿下は視線を逸らさず、淡々と続けた。

「顔も輪郭が変わっている。衣装も苦しげだ。……このままでは人々の前に立てぬ」


「そ……そんな……」


 足元が崩れるような衝撃だった。

 あのアルベルト殿下から、わたしが直接「太りすぎ」と言われるなんて。

 周囲の貴族たちも、口元を押さえてひそひそと囁いている。


 ――「ふくよか令嬢」

 ――「肉付きがよろしいこと」

 ――「幸せ太り、いや油断では?」


 陰口が耳に刺さる。

 わたしの背中を、刃物で切り刻まれるようだった。


「そ……そんなこと……」


 わたしは必死に言葉を探そうとしたが、何も出てこなかった。

 笑顔も作れず、ただその場から逃げ出すように王子の前を去った。



 部屋に戻ったわたしは、息を切らして鏡の前に立つ。

 震える指で、カーテンを開き、光を差し込む。


「……っ」


 そこに映ったのは――もはや、わたしが知る「ミーア」ではなかった。


 頬は大福のように丸く、顎のラインはどこにもなく、首元に溶け込んでいる。

 二重あごどころか三重に折り重なり、笑えば頬肉がぷるぷると揺れた。

 胸も腹も腰回りも、全てが膨れ上がり、絹のドレスを圧迫している。


「……ひ……っ……」


 声にならない悲鳴が漏れる。

 わたしは断食したのだ。

 水しか飲んでいない。食べ物には一切手をつけなかった。


 それなのに――どうして太っているの?

 どうして、日ごとに膨らんでいくの?


「おかしい……おかしいわ……」


 頭を抱えてうずくまる。

 断食しているのに太るなんて、常識ではありえない。

 誰かが……誰かが仕組んでいるに違いない。


「……ローゼ……」


 あの女の顔が脳裏に浮かぶ。

 牢屋で贅沢三昧をして、痩せたままの彼女。

 そしてわたしは、何も食べていないのに醜く太っていく。


 これは、彼女の呪いだ。

 そうとしか思えなかった。



 その日の朝、わたしは部屋から出られなかった。

 ドレスがどれも入らない。

 歩けば、太ももと太ももが擦れて音を立てる。

 階段を登れば、息が切れ、胸が苦しくなる。


 こんな姿を見られたら、もう終わりだ。

 アルベルト殿下に、再び「太りすぎだ」と冷たく告げられたら――わたしはきっと、その場で死んでしまう。


「いや……いやあああああ……!」


 鏡を背にしてベッドに倒れ込み、シーツを頭からかぶった。

 見たくない。

 この体も、この顔も、この現実も。


 けれど、目を閉じれば閉じるほど、王子の冷ややかな声がよみがえる。


『さすがに……太りすぎだ』


「いや……いやあ……っ!」


 涙が止まらなかった。

 断食しても、祈っても、痩せない。

 むしろ太っていく。


 わたしは世界で最も理不尽な罰を受けている。

 なぜ? なぜわたしがこんな目に……!


 胸の奥に黒い憎しみが渦巻く。

 ローゼ。

 きっとあの女が――牢屋の中から、わたしを呪っている。


「絶対に……負けない……」


 シーツの中で、震える手を握りしめた。

 涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら、それでもわたしは心の奥で叫ぶ。


「このままじゃ終わらない……必ず、この呪いを打ち破ってみせる……!」



 けれどその決意すら、次の朝、鏡の前で砕け散ることになるのだった。

 体重計の針は、また五キロ増えていた。


「……もう……やだ……」


 わたしの声は、嗚咽に呑み込まれていった。

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― 新着の感想 ―
毎日5キロ脂肪を送ってる…ということはなにもしなければそれが自分の脂肪に…!? さすがにちょっとは運動しようよwww
最高の復讐ですやんww
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