帰り道の影
夏のホラー2023の作品です。
ある少年に降り注いだ非日常
「よ!健斗部活お疲れ。」
「お前もな、」
こいつは、小さい頃からの幼馴染で高校まで同じでよく一緒に下校している。
「飛鳥、今日途中でコーチに呼ばれてたよな。何話してたんだ?」
「あーそのことか、実はな今度の大会でレギュラーにで出ろって言われてな」
「え!?凄いじゃん!でもなんで嬉しそうじゃないんだ?」
「正直なレギュラーになったら今までよりも練習が多くなって面倒くさいんだよ」
なんだよそれ、俺だって練習頑張っているのに、なんでこんな奴がレギュラーに選ばれるんだよ。「めんどくさい?」
幼馴染に対する嫉妬が今までにない怒りに変わってきた。
「なんだよ、面倒くさいって、」
「なに?怒ってんの?」
だめだ、どんどん怒りが立ち込めてくる。
「もういい!じゃあな、」
ちょうど家の前に着いたおかげで幼馴染から離れた。
「くそ!何であんなやつが!」
幼馴染への怒りが収まらないまま布団の中に入った。
朝になって、布団から出ても頭の中にモヤがかかっていた。
学校に行こうとすると幼馴染がいたが無視して1人で登校した。
いつもなら放課の間ずっと話しているのに今日は互いに話しかけない。そのため静かでいつもより時間が長く感じられた。部活も他のメンツとずっと練習していた。幼馴染と会うのが嫌で最後まで学校に残っていた。
帰る頃には道は闇に包まれていた。
帰っている途中彼は誰かに尾行されているような気配を感じた。振り返ることもできず、不安を抱えながらも歩き始める。
すると、突然足元の影が変わった。彼の背後から近づいてきた何かが、自分の影と一体化しているような錯覚を覚えた。息をのむような緊張が、彼の体を支配した。影が自分に触れてくるような感覚まで覚えたが、何も見えるものはなかった。次第に、彼は帰り道の景色が不気味に変わっていることに気づく。
「いつもの道じゃない、」
通常は明るいはずの通りが、どんどん薄暗くなっているように感じた。そして、歩き始めた時間がどれだけ経ったのかもわからなくなるほど、時間の流れが歪んでいるようだった。不安と恐怖に押し潰されそうになりながら歩き続けた。しばらくして、彼は途中でひとりの老婆に出会った。その老婆は不気味な笑みを浮かべ、彼に対して
「帰るべき場所ではない。違う道を選びなさい」
と忠告した。しかし、不気味に感じていつも通りの帰り方を信じて彼は老婆の言葉を無視し、進むことを決意した。
しばらく歩いた後、深い霧の中にで彼の前には廃墟と化した古い屋敷が現れた。
「こんなところに屋敷なんてあったか?」
その屋敷は荒れ果てていて、古びた窓からは青白い光が漏れていた。人が住んでいる気配はなかった。彼はこの屋敷に関わってはいけないと感じたが、どうしても影に追われるような気持ちから逃れられず、屋敷に足を踏み入れた。中に入ると、そこには様々な不気味な光景が広がっていた。
「なんだこれは?」
廃墟の奥深くには忌まわしい過去が隠されているような気がして、彼は恐怖に震えた。すると、再び影が現れ、彼の周りに集まり始めた。
「まずい!」
彼は咄嗟に逃げ出そうとするが、足元が不気味に引き寄せられるような感覚に襲われ、身動きが取れなくなってしまう。
「は、放せ!!」
影が次第に彼の体を覆い尽くしていく。
「あー、こんなことになるならあいつに言っておけばよかったな。『がんばれよ』って。」
暗闇の中で彼の叫び声が消え去り、帰り道の影に飲み込まれていった。
「何で私たちの教室だけ座席余ってるんだろう?」
「知らないよ〜、それより購買行こ」
「飛鳥、俺たちも購買行こうぜ……おーい飛鳥どうした?」
「……いや何でもない、今行く」