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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

進撃の岐阜~日本の98%が名古屋と化した世界で岐阜が農地拡大をする話

作者: 竜頭蛇

愛知と岐阜に行ったら無性にむしゃくしゃしたので、書きました。




「ひゃあああっはあああああ!!」


 シャチホコを頭に乗せた荒くれものたちが、銀色の車体から身を乗り出し、シャッター街を疾駆していく。

 シャッター街の窓からは幾つかの怯えた瞳がそれを覗いていた。



―|―|―




 2XXX年、日本は荒れ果てていた。


 ことの発端は100年前、第1666期連続政権奪取に成功した県王ゴウモトによるナゴヤ県民至上主義宣言。


 ダガヤーならざるもの人に有らず


 その言葉に反発した各地の知事たちは一斉に蜂起し、大首都ナゴヤに攻撃を始めた。

 が当初物量の差から大敗するかと思われたナゴヤは、ナゴヤ御用達車会社ユメノリによって開発されたナゴヤ走りに対応したハイブリッド車ネオブリウスを戦線に投入したことで、逆転。

 ゴウモトは全ての知事たちを葬り去り、他県民たちを隷属させた。


 そして現在ナゴヤ県民たちは各地で狼藉を働き、私利私欲を満たしていた。


「ホゲエエエエ、ワシの年金があああ!」


「ひゃはははあ! お小遣いゲットだぜえええ!」


 老人を足蹴にして、ナゴヤ県民は獲得した金銭を頭上のシャチホコの中に納めて行く。


「勘弁して下さい。その栗きんとんを取られたら私たちは生活出来ません」


「うるせえ! 竹皮羊羹でも食っとけ! 植民地のダボが!」


 荒くれものが手に持っていた竹皮羊羹で若い主婦が殴られ、吹っ飛ばされる。


「キャアアア!」


 主婦が吹っ飛ばされた先には木曽川の激流があった。


「動物にゃみの身体能力を持つ岐阜県民がどうにゃるのかが気ににゃるぜ」


 ナゴヤ県民は金メッキに覆われた歯を覗かせて唇を割った。


 ビチャァ!


 木曽川の激流に揉まれて川の藻屑になるかと思われた女性は突如何かに遮られて空中で止まった。


「にゃ、にゃんだテメエ! にゃんで川から出てきてんだ」


 主婦を食い止めたのは男の胸板だった。

 川から出て来た男はそこまで優れた体格ではないというのに、彼からはまるで飛騨牛のような威圧感が放たれていた。


「何故川からだと。目の前に橋がなかったからや」


「橋にゃんて百メートル離れたすぐそこにあんじゃねえか」


「俺は知らない」


 男は目の前でうごかざる証拠をだされたというのにまるで動じた様子もなく、ナゴヤ県民たちの言葉に応じる。


「こ、こいつ! おれのことをにゃめてるようやな!」


「俺はお前を舐めていない」


「だまらっしゃい!」


 逆上したナゴヤ県民はそう男を恫喝すると、後方にあるネオブリウスに飛び乗った。

 エンジンを始動させると全物質の中で最高硬度を誇る決して曲がることのないナゴヤ合金で出来た、もはや全身凶器と言っても相違ない車体が振るえ初める。


「死ねええい!」


 ネオブリウスはそのまま突進すると男を轢いても止まらずにそのまま男をヘッドに貼り付けたまま周りにある家屋の壁をぶち抜いて疾走する。


「ひゃはアアアア! ダガヤーに逆らうからこういうことににゃるんだよお!」


 ナゴヤ県民は60棟の建物を瓦礫の山に返すとやっととまり、ヘッドに張り付いたままになった男にそんな言葉を投げかける。


「さっきからにゃあにゃあ言って恥ずかしくないのかお前」


「にゃ、にゃんだテメエ!? にゃんで生きてんんだ!」


「トラクターに轢かれただけで人が死ぬわけないだろ」


「ふざけんにゃ! コイツはネオブリウスだ、トラクターにゃんてちゃっちなもんじゃねえだがや!」


「いい加減にしろ。こんなに地面を耕せるものがトラクターじゃないわけがないだろ!」


 男は一度ナゴヤ県民に声を荒らげると、近くにある納屋に歩を進めていく。

 その姿を見てナゴヤ県民は、何か得体のしれないものに手を出してしまったことに確信した。


「冗談じゃにゃいがや!」


 家屋に車体をぶつけながらUターンしようとするといきなり爆風がおき、ネオブリウスが横転した。


「にゃんだがや!」


 見ると先ほどの男が土偶の形をした爆弾をばらまきながら、ネオブリウスで地面を耕していた。

 ナゴヤが秩序になったここで男は無秩序そのものだった。


「お前が無作為に耕した農地を整えてるんやで」


「なんでお前がそれを持っとるんじゃ!」


「純正のトラクターは高い。だからお前らのトラクターを借りている」


 魂とも言えるネオブリウスをナゴヤ県民が手放すわけがない。

 この男は借りたのではない、ナゴヤ県民からネオブリウスを強奪したのだ。

 横転したネオブリウスを放棄してナゴヤ県民は逃げ帰ろうとすると、頭を丸められ、チェックシャツを着た仲間たちが岐阜県民と談笑しながら歩いてきた。


「柿やイチゴを栽培されてるんですね。岐阜はフルーティですね」「ナゴヤはキャベツを主に育ててまして……」


 全員岐阜クオリティに染められてしまっている。


「お、お前ら!?」


「お! 浪本じゃないか! 岐阜はいいぞ、空気が美味しいし、ナをにゃと発音する必要が無いだよ」


「にゃんじゃその口調は。ナゴヤ県民としての誇りはにゃいのか」


「いや、頭にシャチホコとか重くてしんどいし、車絶対保持とか保険料高いし。ぶっちゃけ、今の時代と逆行してるよね」


「この裏切者があああああ!」


 男は仲間の不甲斐ない姿に絶叫する。

 男の悲鳴は仲間にはもう聞こえておらず、彼らは岐阜県民に五平餅の作り方を聞くのに夢中になっていた。

 男が仲間に見切りをつけて、逃げ出そうとすると肩に手が置かれた。


「お前も今日から農家だ」


「ぎゃああああああ!」



~一週間後


「もっと農業の輪を広める為には土地がいる。ナゴヤの土地も借りなければ」


 ナゴヤの名誉植民地岐阜に染まりきったナゴヤ県民たちは、岐阜県内で農業を続ける岐阜県民たちにそう提案していた。


「そんなこと出来るのか。ナゴヤの農業地帯は大きく離れとるぞ」


「大丈夫です。モノは全部現地で調達すればそれですみますから」


「お主は天才か! そうと決まればトラクターで皆の者、出陣じゃ」


 こうして岐阜は農地拡大の為にナゴヤに反旗を翻した。





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