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この世界は嫌になる  作者: 虚空
3/3

3話〜街〜

さあ、どうしたもんか。大体この世界の事を俺は何も知らない。とりあえずはこの世界の事を知ることから始めないといけない。あの神の話を聞く限り亜人族や魔王なんてのがいるらしいが。

俺はこの街だけでも完璧に把握しようと、そう考えた。


辺りをよく見てみるとオークやエルフ、中にはドラゴンなんてのもいた。その中では珍しい人間に話しかけてみることにした。やはり他種族には抵抗があったからかもしれない。

「あの、すみません。この街のことを詳しく教えてもらえませんか?なにぶん今日この街に来たものでして。」

人間の女は答えた。

「あら、旅の方なのね〜。よかったらうちの旅館でゆっくり話さない?」

「ありがとうございます。是非。」

どうやら人間に話しかけたのは正解だったようだ。


旅館につくなり俺はおそらく1番大きいであろう部屋に案内された。とても新しいとはいえないが、古びているわけでもない。この辺りでは珍しい和の雰囲気を醸し出す部屋だった。俺が座るとさっきの女が話し始めた。

「旅のお方、今夜は泊まっていかれてはいかがですか?」

なるほど、商売上手な女だ。それにこの世界のことも多く聞きたいしな。

「勿論、お願いしたい。」

女の顔が笑顔に変わった。


それから多くのことを女から聞いた。

今この国では[天恵]を使った犯罪が横行していること、この国ではそうでもないがこの世界全体の風潮として亜人族、特に半分人間半分悪魔の[半魔]は忌み嫌われ迫害されていること。

なにも負の話題だけを聞いたわけではない。

女の名前はメリーということ、この国は商業が盛んで人口がとても多いこと、さらには国営の闘技場があり賞金が出ることなんてのも聞いた。

「犯罪に人種差別、どこの世界でも一緒か...。」

「どうかされましたか?」

「いえいえ何も。」


そんな話をしているうちに夜になった。

「今夜はごゆっくりされてください。旅の疲れも溜まっているでしょうから。」

「ええ、疲れを癒すとしますよ、ははは。」

とれそうもない疲れを癒すため早めに床に入った。


「神道さーん、起きてくださーい。」

メリーの声で目が覚めた。

「朝食の準備が整いましたので下の食堂へおいでください。」

もう長い間、目覚めの一声はやかましい機械声だったので久しぶりに温かみのある声で目覚めた。

「おはようございます。」


食堂へ行くと俺以外の客も大勢いた。そこはとても賑わっており、この世界では当然なのだろうがオークやエルフ、ゴブリンなんかもいた。

「まだ慣れないな。」

向こうの方でメリーが手招きをしている。

そこには朝食にしては豪華な料理が用意されていた。

「この国では朝食がこのぐらい豪華なのが普通なのか?」

「豪華なんてとんでもない、嬉しい限りでございます。」

反応を見る限りこの豪華さでもまだこの世界では豪華とはいえないらしい。

続けてメリーが言った。

「ただ朝食は昼食夕食よりも豪華に多量に、というのがこの国の慣しでございます。」

日本では夕食が豪華だがこの国では朝食が豪華らしい。

「よぉ兄ちゃん!この国初めてかい!?」

無駄に大きい声が後ろからする。

「俺はよぉこの国のことならなんでも知ってっからよぉ、困ったら俺を頼れよ!」

かなり大きいオークだ。身長3mはあるだろうか。

「ちょっとマサルさん、いきなり大きい声出しちゃダメじゃない。」

「ふっ。」

思わず笑ってしまった。このなりで名前がゴリゴリの日本人だ。笑わない方が難しいと言っていいだろう。

「兄ちゃん何がおかしいんだ!ってな!ガハハッ!驚いたか!」

「驚かない奴はいるのか。」

「ガハハッ!」

「ははは。」

「うふふ。」

三人同時に笑ってしまった。

「マサルさん、この国のことを教えていただけるというのは本当ですか?」

「おうよ、なんでも聞け。俺は人間が大好きだからなぁ!あとよ!マサルって呼べ!よそよそしいぞ!」

それは捕食対象という意味でかと聞きそうになったがやめておいた。

「わかったよ。じゃあ聞きたいんだけどマサル、マサルの[天恵]はなんだ?」

「兄ちゃんすごいこと聞くな!ほんとに何もしらねぇみたいだ!」

周りの奴らも一瞬静かになってこっちを向く。どうやら地雷を踏んだらしい。

「俺だからいいけどよ!あんまり他の奴には言わない方がいいぜ!俺の[天恵]はよ!」

マサルが小声になる。

「[筋増強]だ。」

なるほどな。通りでガタイがいいわけだ。

「ほんとはよ!兄ちゃんぐらいヒョロかったんだぜ俺も!だが[天恵]を使いこなせるようになってからはこれよ!」

ガッツポーズをしながらそう言った。

こっちの世界でもガッツポーズの文化はあるらしい。

「自分でダメって言ってはなんだけどよ!兄ちゃんの[天恵]はなんだ?こっちは教えたんだ。知る権利はあると思うぜ。」

「それが...」

「それが?」

「分からないんだよ。自分の[天恵]が。」

「...兄ちゃん、嘘はよくねぇぞ。そんな奴、この世界にひとりもいやしない。他人に言わないってだけで生まれた時に神からのお告げが来るんだよ。ただ、教えたくないならそれでいい。誰だって言いたくはないからな。」

俺は口籠ることしかできず、ただ何かやるせない気持ちになった。

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