2話〜天恵〜
目が覚めるとそこは大通りだった。メインストリートといった方がしっくりくるかもしれないが。
「おはよ!」
あの喧しい声だ。
「おはよう。」
「えっとねぇ、まずはこの世界の説明をするよぉ。この世界にはねぇ、みんな生まれた時に神から[天恵]っていう固有の能力を貰うんだよぉ。」
ありがちである。
「でねぇ、君は途中からこの世界に来たからねぇ、今から僕がその[天恵]を授けるよぅ。」
そんな能力お前にあるのか、そう言いたかったがそういえばこいつは神だった。
「それは選べる類のものなのか?」
「選べないよぉ。でも、どの類の天恵なのかは分かるから分かったら伝えるねぇ。」
そうか。
「早くやってくれ。」
そういうと自称神は虚空から杖を取り出し俺の頭を結構強く殴った。
「いてっ。」
思わず声が出るほどには痛かった。
「よぉし!これで完了だよ!」
ほう。今のは儀式か何からしい。
それで肝心のその[天恵]とやらの内容を教えてもらおうか。
「それはねぇ....。」
固唾を呑んだ。
「わっかんない!」
「は?」
まてまて、わっかんない!とはどういうことだ。
「だってわかんないんだもん!」
わかんないんだもん!ではない。
「こんなの初めてなんだけどねぇ...。君よりも僕が驚いてるよぉ。」
特例なら仕方がないな...
とは流石にならない。困るだろう。
「この世界の奴らはみんな自分の[天恵]とやらをしっかり把握しているのだろう?」
「そうなんだけどねぇ。おっかしいなぁ。まぁ!頑張ってよ!」
いやいやちょっと待ってくれ!いくらなんでも無理がある。こんな異郷の地に生身で放り出されては困る。
「ああそうそう、言語は通じるようにしておいたし、お金も君が元いた世界でいうところの3万円分ぐらいは入れておいたから!頑張ってねぇ!」
「待って!待ってくれ!」
「健闘を祈るよ、神道司君。」
体が薄れていく自称神だったが最後の言葉だけは濃く、俺の心に残った。