1話〜違う世界へ〜
この世界はどうも嫌になる。
ふと携帯に目をやると
〜あの事件の犯人は僕です!〜
〜○○は死んで当然!〜
そんな動画や記事が平気で出回っている。
「俺、この世界合ってないのかも。」
無責任かつ自己中心的な言葉がふいに口から漏れ出た。
その時だった。
「どれがいい?」
背後から、いや、頭の中から直接語りかけてくる声が確かにあった。
「は?」
思わずその一文字を吐いた。
「まぁ驚くのも無理ないねぇ。」
ねちっこくて幼い、幼稚園児ぐらいだろうか、そんな声がまた俺の脳にへっぴりつく。
「僕はね、簡単に言うと違う世界の神様!」
そんなわけがないだろう。そう思ったがそれは覆すことのできない事実となるのだった。
「信じれないなら体験してみる?君の好きな世界に飛ばしてあげるよぉ。」
好きな世界?どういうことなんだ。
「えっとねぇ〜海しかない世界〜今いる世界より1億年は進んでる世界〜あとはゲームで出てくるような世界!他にもいっぱいあるけどどれがいいかな!」
正直わけが分からなかった。大体こいつはなんなんだ。
しかし、最後の世界、〜ゲームに出てくるような世界〜これはどういうことだろうか。ゲームといっても種類は多くあるだろうに。
「あ!ゲームの世界が気になるんだ!それはねぇ、よく[異世界転生]って呼ばれるものに出てくるような世界かなぁ。」
つまり、それは西洋風であり亜人族やら魔王やらが存在している世界ということか。
「そうそう!よくわかってんねぇ。じゃあ決まりでいいかな!」
ほう、面白そうだ。しかしこちらにも多少なりとも準備というものがいる。
「えぇー!ダメだよぉー!だってこの世界嫌いなんでしょ!」
この世界が嫌いなことと準備がいることになんの因果があるというのか。
「うるさーい!とにかく!今行くか!この世界で一生過ごすか選ぶんだねぇ。」
随分と喧しい神だな。しかし答えは決まっていた。
「行く。」
はっきりと音にした。
「分かったよぉ!頑張るんだね!」
その喧しい声を最後に視覚は鈍り、聴覚は閉ざされていった。