猫舌って言うけど、人間以外の動物はみんな熱いの苦手らしいぜ
俺は目の前にいる初恋の相手との思わぬ再会に、さっきの怪物との邂逅よりも深い驚きを受け。
そのせいか鳩がミニガン照射を食らったような顔になってしまった。
「…え、えりなのか?」
「ったく、いったい他の誰に見えるのよ」
絵里はバカにしたような顔で言った。
「俺はてっきり……あの地震でお前は…」
「死んでないわよ」
あっけらかんと俺の気持ちなど、いにかえさずそう答えた
「生きてんなら、なんで帰ってこなかったんだ?」
「だからほら、こうして帰ってきたでしょ。あんたのところに」
悪びれる様子もない絵里に少しキレそうになってた俺だったが、彼女の少し影のある声音に何かしらの事情があるのだと察する。そんな場にもっとおかしい声がかけられた。
「長い話になるようなら、茶でも入れるよ」
「ババア!?大丈夫なのかよ?」
そこには先刻まで血を流して倒れていたはずの番台のババアの姿があった
いや、昔から人間ぽくないとは思っていたが、あんた本当に妖怪の類だったのか?
「あんたに心配されようじゃ、私もある意味ダメかもしれないね。そこの絵里に治してもらったんだよ」
淡々と話すババアだが、あれは応急処置でここまでの劇的な回復ができるような傷じゃなかったぞ。
「本当なのか絵里?」
「ええ、本当よ。でもわたし回復法術は苦手だったから、おばあちゃんの傷が見た目よりも浅くてよかったわ」
聞きなれない単語が出てきたが絵里がババアをな治したのはマジらしい。なにはともあれババアが無事で俺は胸をなでおろす。
「でもおばあちゃん。私の法術じゃ失った体力までは回復できないからお茶は私が入れるね」
「助かるよ。このくそガキには茶の代わりに絵里の垢という垢を煎じて飲ましてやりたいもんだね」
その例えはどうかと思うぞババア、絵里ですら微妙な苦笑を浮かべているし。何より胃腸の強い
俺でも、絵里の垢なんて飲んだら拒絶反応で下痢になりそうだ。
ーー●○●ーー
軽く道場を掃除した俺たちは、銭湯の中の狭い休憩所で絵里の入れた熱々の緑茶を飲んでいた。
怪物が侵入したというのに銭湯内は案外ちらかっていなかった。
・・・・ていうかお茶熱すぎ、わざとだろ絶対!
「ちょっと大和、あんたまだ猫舌直してないの?エロ狼なんて呼ばれてるくせに…」
「うっせぇ!大体猫舌って直せるものなのかよ!?」
狼で猫舌っていうのは確かにややこしいが、幾ら何でも絵里の主張は理不尽きわまりないものだった。
そんな風に言い合っているとババアが語り出した。
「そもそも猫舌というものは存在しないらしいよ、舌の使い方が上手いか下手かで温度に対する感じ方に個人差が出るのが今は原因だと言われているんだ。エロガキ、あんたひょっとしてキス下手くそなんじゃないのかい?」
急にババアはとどうでもいい雑学をとなえ、ついでに俺を煽ってきた。
そんなババアに俺はいう。
「上等だよ!今から俺の超絶テクでヒィヒィ言わしてやろうか雑学ババア!」
と息巻いた俺だが、すぐ隣の殺気に短い悲鳴をあげてしまう。
絵里がすごい目でこっちを見ている。
え、怖い怖い。さっきの怪物より怖いんですけど。
「大和……あんた…キスしたことあるの?」
「まっ、待て…えり誤解だ!話を聞いてくれ!頼むからその熱々な急須を置いてくれ!」
「この浮気者がーーー!!」
「ギャァァァァァァァァァー」
熱湯を浴びせられた狼の悲鳴が冬の空に響いていった。
新人なろう作家はやっぱり向かい風ですね!どうも蘭怒細胞です。
昨今、ただでさえなろう作品は物議をかもしているのですから、当然て言えば当然ですね
酷評だろうと何だろうと感想頂けるだかで嬉しいので、どんどん送っていただけるとモチベーションにつながります!
ps
正直ヒロインの属性にまだ悩んでいる