クリスマス・イブイブの圧縮大サービス!
隙を作るため二人がジークに接近する。
まず絵里が白金虎の闊歩の機動力を活かしてジークを撹乱し、その合間にアルが重い一撃をヒットアンドアウェイで叩き込んでいく。
この戦法でも十分勝てそうだが、どうやらジークには再生能力的なものがあるらしく、攻撃を受けた側から再生しているようだ。
・・やはり決めるなら一撃か
「さっきから鬱陶しいな…そんな軽い攻撃じゃ倒れないよ!」
「くっ・・力が上がってる」
絵里がジークの攻撃をガードしきれていないのか、思わず苦悶の表情を浮かべる。
・・まずいな、隙を作るどころか先にこっちが全滅してしまいそうだ。何か攻め方を変えなければ
「大和くーん。君は見ているだけで一緒に遊ばないのかい?」
「うっるせーな!また石投げられたいのか!?」
(大和。さっきは言って無かったが圧縮は重ねがけができる。もちろん重ねれば重ねるほど威力は上がるが、その分持続時間も少なくなるぞ)
ったく、バカな俺には少し制御がムズイ能力だな。
(だが今回は一撃で決めるつもりなんだろう?ならありったけ圧縮して打てばいいさ)
そうなんだが、あいつの速さだとそのありったけの攻撃を避けられるかもしれねぇだろ?
(なるほどな、思ったより賢いじゃねぇか)
くそ、これじゃジリ貧だぞ。何かないか?あいつの意表を突ける何かは?
「ヤマト、一回だけ好きをつけたらいいんだとね?」
「え、ああそうだ。一度だけでも奴の動きを止めれれば俺がなんとかする」
「わかった。なんとかしてみる」
「・・・なんとかって、どうするんだ?っておいアル!」
アルはそれだけ言うとジークに飛びかかる。
「おやおや、クソトカゲ自ら殺されに来たんのかい?」
「ちがう。お前の注意を引いてるの」
「・・・僕が言うのもなんだけど、それ言ったらダメな奴だよ」
ああもう!アルの奴ちゃんと分かってるのか?マジで大丈夫なのかよ
(確かあの嬢ちゃんドラゴンなんだろ?しかも原初の)
ああ、なんか世界に7体しかいないみたいなことは言ってたな
(へー、ってことはモノホンの原罪龍なのかよあの嬢ちゃん)
は、げんざいりゅう?なんだそれ?
(ま、見てればわかるだろうよ。)
なんだよ勿体ぶってないで教えろよ。お前俺のアドバイザーみたいなもんだろ?
(だからお前、俺様をなんだと思ってんだ?)
そんな事をフェリルと話している間もジークは嬉々としてアルに襲いかかる。
「よいしょ!どうしたんだい?ドラゴンの力っていうのはこんな物なのかい?」
「なんでそんなに楽しそうなの?私何か悪いことした?」
「・・・いいや。お前たちドラゴンには直接何かされたわけではないよ」
「じゃあ。なんで?」
ジークはさっきまでの醜悪な笑顔を消し真顔で言う
「お前たちドラゴンがいたせいで、僕たちがどれだけの苦痛を味わったか知っているのか?お前達さえいなければフーリは…」
「・・・ごめんね」
「・・・・・何謝っているだドラゴンが、言っておくがこれは僕の勝手な逆恨みだ!だからお前らドラゴンは謝る必要なんて無いんだ。・・・ただ僕に無残に殺されてくれるだけでいいんだよ!!」
そう言うとジークは今日一番のスピードでアルに殴りかかる。アルは不意をつかれたのかその場で防御体制も取らず棒立ちのままだ。
「アル!!避けろ!!」
俺の叫びも虚しくジークの鬼の腕がアルの腹に深々と刺さる。
ジークは嬉しそうに顔を歪め高笑いをあげていた。
・・クソっ!!俺が役立たずだからアルが・・・
(おい。大和ちゃんと見ろ)
何を見ろってんだよ!・・・ってアルの奴、腹に腕刺さってんのに生きてやがる!?
確かにジークの腕はアルを貫通して刺さっている。だがその傷口付近には体の一部どころか血すら流れていない、異様な光景だった。
そのことに気づいたのかジークが動揺したように言う。
「お、お前!まさかこれは鱗の力か!?」
「・・・貧食の鱗」
な、何が起こっているんだ?
(あれが原罪龍がもつ力。大罪の鱗だ。なかでもあの嬢ちゃんの司る滞在は『貪食』。あれはあらゆる物質を自分に置き換え取り込む。または寄生する力だな)
い、いやそんな急に解説者モードになられても困るんだけど!
と、とにかくアルは無事なのか?
(ああ、あれは多分ジークとか言う奴の腕に、自分の腹の一部の物質置き換えて寄生させているんだ。・・まぁ簡単に言ってしまうと、今嬢ちゃんの腹の一部はあの鬼野郎の腕になっているって事だ)
いや、余計混乱するわ
「くっ、離せ!このトカゲ野郎!!」
「む、野郎じゃない。可愛い女の子」
そんな間の抜けたいつもの口ぶりでアルがジークを拘束する。
この隙に俺は自分の右腕に自力を圧縮していく。
「お前!逆鱗は無いんじゃ無かったんじゃないのか!?」
「うん、ないよ。・・・あったらお前もう死んでるし」
「クソが!!僕がこんなフザけた技で止められると思うなよ!!」
焦ったような口ぶりでジークは自分の腕を引き千切ろうともう一つの腕で力強くひっぱろとしていた。
「させないっての!」
「グハッ!このアマ!!」
身動きが取れなくなった事で、絵里の鋭い蹴りがジークの顎にクリンヒットする。
さすがのジークもその攻撃が効いたのか足をふらつかせてまともに立っていられない様子だった。
だが、脳を揺らすことができただけで目に見えた外傷はほとんど見当たらなかった。
そのことに気づいたのかジークは再び余裕の笑みを見せる。
「所詮動きを止めたところで、僕を傷つける事はできないみたいだね!残念だったねクソアマコンビ!」
「そいつはどうかな?クソオニキンパツ」
「は?」
・・・ジャリン
限界まで自力を圧縮した俺の右腕には、いつの間にか黒い鎖のようなものが巻き付いていた。その鎖は強く俺の右腕を縛り圧縮した自力が漏れないようにしているみたいだった。
どこから出て来たのか分からないが、この鎖が自分の圧縮の力だということは理解できた。
「な、なんだい大和くん?それは」
「さぁな、俺にもわからねぇよ。・・・ただ分かるのはこれでテメェをブン殴ったら最高に気持ちが良いてことだけだ!!」
「そ、そんな僕たち友達じゃないかぁぁぁあああ!!」
どこの世界に友達を串刺しにする奴がいるか
俺は鎖ごと右腕を大きく振りかぶりジークに文字通り渾身の一撃を放つ。
あばよ、ジーク
「シャクルド・クロォォォォオーー!!!」




