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復活のY 耳と尻尾を添えて

心臓を貫かれたはずなのに、俺はなんで生きてんだ?

むしろ死にかける前より体の調子がいいだけど。


「や、大和。生きてるの?」

「・・・なんか大丈夫っぽい」


まるで死人にあったかのような顔をする絵里に俺は無事を伝える。

俺自身、自分に何が起こったのか理解できていないので詳しい説明ができず、さっきからオロオロしている。

そんな俺にアルが震える声で聞いてきた。


「や、ヤマト。耳とシッポが生えてるけど。なにそれ?」

「耳?尻尾?・・・・・って、うおっ!なんだこれ!?」


おいおい!なんだよこの痛いコスプレみたいな耳と尻尾は!?野郎にこんなのついててもどこにも需要ねぇだろ!


ていうか頭にもケモ耳みたいなのがあるっていうことは、元のと合わせて俺今耳が4つあるってことか!?

(そことじゃねぇだろ、今気にすることは)


「なんだ?誰だ!?」

(おい、もう忘れたのかよ。俺様は命の恩人だぜ)

「・・・え!あれって幻聴か何かだったんじゃないのかよ」

(そんなわけないだろ!現にお前はあんな致命傷を受けても、今こうやって生きているだろうが)


確かに。俺は確実にあのままだと死んでいたが、今はこうしてピンピンしている。

・・・まぁー謎の耳と尻尾のおまけ付きだが。

(その耳と尻尾はお前が俺様の力にうまく適応した証拠だ。今のお前じゃまだ1割程度しか使えないが、あの金髪の餓鬼を殺せる程度の力は出せるはずだ)

・・・色々聞きたいことは山ほどあるが、今はその情報が聞けただけで十分だ。

俺は初めて露骨な狼狽を見せるジークに向き直ると、彼は困惑しながらも軽口を叩いてきた


「大和くん。なんだいその格好は?ハロウィンどころか明日はクリスマスイブだよ?もう少し季節感かんがえて欲しいなー」

「おいおいそんな固いこと言うなよ。サンタさんだってたまには犬ゾリにのりたいこともあるだろう?」

「・・・その発言は全く理解できないけど、僕がやることはさっきと変わらないよ。もう一度君を殺してそこのドラゴンを駆除する!」

「やってみろよビビリが!」


そう言うとジークは刃亞点堕(ペインラー)と呼ばれるノコギリを持った鬼をけしかけてきた。

確かこの鬼めちゃくちゃ速くて、こいつに傷つけられるとすげぇ痛いみたいな能力持ってるんだっけか。

そんなことを考えていると刃亞点堕(ペインラー)が目前まで迫ってきていた。

・・やべっ、当たる。

俺は攻撃を受ける覚悟で後ろに回避したが、刃亞点堕(ペインラー)の攻撃は俺にカスリもしなかった。

ジークも予想外だったのか口を大きく開けて驚愕している


(あたり前だろ。お前は俺様の力を手に入れて銀貨使い(シルバーホルダー)になったんだからな)

銀貨使い(シルバーホルダー)?なんだそれは神墜器使い(バベルホルダー)じゃなくてか?

(俺様をそんな紛い物と一緒にするな、俺様は世界に30枚しかない始まりの銀貨のうちの一枚だぞ)

・・・いや、知らんがな

とにかく俺があの刃亞点堕(ペインラー)とかいう鬼のスピードについていけることがわかれば上等よ!


「大和くん。君には何度驚かされたらいいんだろうか。まさか僕の刃亞点堕(ペインラー)の攻撃を避けるだなんて」

「なんかすまねぇな、お前鬼ごっこ以外できないのに軽く避けちゃって。・・・・今度はこっちが鬼になる番だな!」


さっきから体が軽くて仕方がねぇ、今ならなんでも出来るんじゃないかと思えるほどの万能感で俺は刃亞点堕(ペインラー)に突っ込む


もちろん鬼も迎撃してきたがその攻撃をよけ腹に3発突きを打ち込み、鬼がよろめいた所にハイキックを入れた。俺の攻撃が効いたのか鬼は膝をついた所に、間髪入れず絵里直伝のかかと落としを鬼の後頭部にお見舞いしてやった。

うまく必殺コンボが決まったようで刃亞点堕(ペインラー)は煙のように消滅していった。

その光景にジークは思わず叫ぶ


「馬鹿な!一瞬で僕の刃亞点堕(ペインラー)を倒すなんて!?」

「いやー仕返しって最高に気持ちいいわ、そいつに心臓えぐられたからこれでお相子な」


ジークは刃亞点堕(ペインラー)がやられたのがよほどショックだったのか目から戦意が薄れていた。

俺はようやく周りを見る余裕が生まれたので海斗の方を見てみると、一人で害異形(ゲスト)たち相手に無双していた。

・・・これ海斗がジークの相手した方がよかったんじゃね?なんかアイツめちゃ強いし

そんな後悔の念を抱いているとジークが不気味な笑い声を上げだした。


「・・・力を制限されてるとはいえ、僕がこんな何も知らない雑魚に負けるなんて」

「おいおい、もう言い訳ですか?まだ勝負はついてねぇぞ。諦めんなよ」

「は?」


ここぞとばかりに小物みたいな煽りをしてしまい、完全にジークのキレスイッチを入れてしまった。

・・ヤベェー、ちょっと調子乗ったかも。ジークの野郎、目からあふれんばかりの殺意が漏れ出してるよ

(自分で煽っといてそれはダセェよ。大和)

うるせっ!どうであれブチのめせば済む話だろう!

ってか、ちょこちょこ話しかけてるがお前誰だよ!いい加減に名乗れ!

(俺様か?おお!よーく聞いてくれた!俺様は最強にして最恐の神喰いの狼。フェリル様だ!)

・・・フェリル?なんだそのフェンリルのパクりみたいな名前は。

(おい!聞き捨てならねーこと言ったなテメェ!俺様がパクったんじゃなくて、むしろパクられたんだよ!)

などと申しており

(お前俺様のことなめてるだろ!・・・・ったく。そんなことより見ろ、さっきからあいつの様子が変だぞ)

確かにさっきからジークはブツブツ何か言いながら両刃剣を高速で回転させている。なにあれ怖い


何か別の鬼を召喚するのかと思いきや、次の瞬間ジークはあろうことか自分にその刃を突き立てていた。


「・・・な、なんのつもり?」

「狂っちゃた?」


絵里もアルもその異常なジークの行動に困惑していた。

俺もまさか自害するなんて思っていなかったので、内心すげぇビビってる。

そんな俺たちの反応を血走った目で見ていたジークは語り出した


「・・や、大和くん。君は僕の拷問慚愧(カクテルパーティー)は鬼を召喚する能力か何かと思っているようだけど、それは勘違いだよ。僕の本当の能力はこの剣で突いたものを媒介にして鬼を生み出すっていうものなんだ」

「・・・・だからなんだよ」

「鈍いなー。今僕は自分の体をこの剣でついてるんだよ。普段は土とか木を媒介にしているけど、人間のようなエネルギーの塊を媒介にすると何が起こると思う?」


ジークの体が骨が軋むような嫌な音とともに変化していき、中肉中背の優男の面影は消えその姿はまさに鬼そのものとなっていた。


なんだあれ!?特撮の怪人みたいなことしやがって

(大和、気をつけろ。いくら俺様の力があるとはいえ。まだ一割程度しか力を出せない今の状態だと、あの怪物を相手にするの少しばかりキツイぞ)

おいマジか、さっきまでの威勢はどうしたんだよフェリルさん!


「これやると体中筋肉痛になるからあんまり好きじゃないんだよね。それじゃ大和くん、もっ回死のうか!」


そう言うとジークは一瞬で俺に肉薄し、不意打ちのボディーブローを打ってきた。


「んんぐっはっ!」


さっきの刃亞点堕(ペインラー)とは桁違いのパワーとスピードに対応出来なかった俺はモロに攻撃をくらい、喉から逆流してきた血を盛大に吐き出した。


「どうだい?内臓をシェイクされた感想は?」

「・・グフッ、悪くはねぇな」

「それじゃーもう一杯」


ヤベェ、痛すぎて身動きが取れねぇ。

(何やってる大和!避けろ死ぬぞ!)

俺はジークの追撃をガードするため身構えたが、その攻撃は俺の目の前で止まった


「私たちを忘れないでよね、ゲス野郎!」

「その角、気持ち悪い」


絵里とアルが二人でジークの攻撃をガードしていたのだ。


「絵里!アル!」

「あんたふざけてんの?また死んだら私が喰い殺すから」

「ヤマト、もう無茶したらダメだよ。今度はみんなで戦お」


(へー、いい女たちだなどっちが本命なんだ?)

ちょっと黙っててもらえませんか?いま良いとこなんで。


そんな事より、アルの言う通り3人ならジーク(鬼)にも勝てるかもしれない。


「大和。あんたは一回下がりなさい。その怪我じゃまともに動けないでしょ」

「ま、待て。二人だけじゃ危険だ」

「うん。だからヤマトもすぐ来てね」


そういって二人は俺からジークを引き剥がしていく。

クソッ、確かにこの痛みのせいですぐに戦闘は厳しい。たとえ戦ったとしてもあの状態のジークに今の俺がかなうのか?

(お困りのようだな少年。俺様があいつの勝ち方を教えてやろうか?)

何か秘策があるのか?フェリル。

(ああ、秘策といっても俺様の能力の一部を使うってだけだけどな)

能力?ジークの痛みを倍増させるとか、鬼をうぬ出すみたいな奴のことか?

(あんなチャチな物と一緒にするな。俺様のはもっとすごいぞ!)

おお!この状況をひっくり返せるほどのものなのか!?なんだ、どんな能力なんだフェリルさん!

(・・・・・圧縮だ)

・・・・・・圧縮?・・あっしゅく?・・・・アッシュク?

それ強いの?

(やれやれ、これだから素人は。この俺様の力の凄さがわからないようだな)

いやー単純にそれどうやって使うのか、いまいちわからなくて…

(確かにそうかもな、じゃー試しに自分の腕に圧縮(バイツ)って言ってみな)


「・・・圧縮(バイツ)


!!!

なんだ右手の力が凝縮されたような感覚がする!?

(分かったみたいだな。生物はみな自分の体に自力(セルフ)と呼ばれる不可視の力を持っているんだ。その自力(セルフ)を今俺様の力で圧縮し一時的に力を高めた。だからお前の今の右腕はさっきよりも高い攻撃力を宿している)

おおお!話の半分もわからなかったが、思ったよりも強そうな能力じゃねぇか!

(どうやらやっと気づいたみたいだな。だがなあくまでも圧縮しているだけだから連発すれば自力(セルフ)は枯渇するぞ)

なるほど。ここぞとばかりの時に使うんだな。理解したぜ!

(まぁーこれもまだ俺様の力のほんの一部だからな、まだまだこんなもんじゃないぜ!)

さっすがフェリルの兄貴!そこにしびれる!憧れる!


・・まぁとりあえずこれで戦える。そろそろ二人もキツそうだ。

俺は二人に近づき頼みをひとつする


「絵里、アル。一度でいいから隙を作ってくれないか?そうすれば俺が一撃で仕留める」

「・・・・何か勝算のありそうな顔ね、いいわなんとかしてみる」

「うん。私に任せて」


よしこれでなんとかなるかもしれねぇ!

俺は再度、醜悪な笑いを見せるジークに向きなおり腹をくくった。


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