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クソ雑魚大和さん

ジークが爽やかな笑みを向けながら、拷問慚愧(カクテル・パーティー)と呼ばれた手元の両刃剣をその場で振り下ろした。それを合図に目の前の4体の鬼っぽい奴らが一斉に俺へと向かってきた。


どう考えても一昨日の害異形(ゲスト)とかいうのよりも、危険でヤバそうなので俺は全力で鬼の攻撃を回避する。


「うぉお!・・・こいつら意外にはぇーな…」


まだ10秒と動いてないが、恐怖と緊張で身体中から汗が止まらない。そんな俺とは逆に鬼たちの攻撃は激しさを増すばかりで止まる気配が一切無い。


「ちょ、・・・っぶね!」


なおも必死で避けるが、流石に4体全てをさばけるほど俺は達人ではないので、少しずつ攻撃がかするようになってきた。

そんな俺を不思議そうな目でジークは見つめて言う。


「大和くん・・・まさかとは思いけど、君神墜器使い(バベルホルダー)じゃないの?・・・もしそうだったら、少し大人気無い事しちゃったなー」

「はぁ、はぁ、俺はそんな痛い名前のものになった覚えはねぇーよ」


聞きなれない単語をいうジークだが、こっちはそろそろ限界だ。さっきからまともに攻撃を避けきれていない。どうやら鬼たちには学習能力のようなもがあり、少しずつ俺の動きを読みだしているのだ。

一旦距離を取ろうと露骨に後退した俺に、鬼の一体が背後に周りその禍々(まがまが)しい腕で俺の頭を掴んできたのだ。


「んぐっ、離せでかぶつ!」


咄嗟にその鬼の側頭部に蹴りを入れるが、手を離すどころかピクリともしない。

焦る俺だが頭にかかる圧力は強くなる一方で、逃げることができない。

くそっ!潰される!


「来て白金虎の闊歩(プラチナ・アクセル)


そう思った瞬間。俺を掴んでいた鬼の頭が白金の一閃で消し飛んだ。

どうやら絵里が例の神墜器で助けてくれたようだった。


「何やってるのバカ!簡単に死にそうになってんじゃないわよ!喰い殺されたいの?」

「いや面目ねぇ、でももうちょっと早く助けに来てもよかったんじゃね?今軽く走馬灯見えたんですけど」


まじで、頭蓋骨がきしむ音して怖かったんだから!

・・・・とにかく絵里の白金虎の闊歩(プラチナ・アクセル)なら、あの鬼どもをを()れるみたいだ。

なんとか絶望的状況から脱した俺は、例の青年へ向きなる。

彼は鬼の一体を倒されたにも関わらず、まだ余裕の笑みを浮かべていた。


「なんだいるじゃないか!そっちにも神墜器使い(バベルホルダー)が。・・・まさかそっちの黒髪のお嬢ちゃんの方だったとは。しかも、なかなかに強力な神墜器(バベル)だね」


ジークは嬉しそうに絵里を見つめる。

俺は息を整えたいために、彼に質問をふり時間をかせごうとする。


「おい、さっきから神墜器(バベル)神墜器使い(バベルホルダー)だの言ってるが、なんなんだそれは?」

「ふふっ、時間稼ぎのつもりかい?いいよ付き合ってあげるよ。僕は自慢とか知識を他人にひけらかすのが好きだからね」


結構腹たつ言い方だが、どうやらご親切に時間だけでなく解説までしてくれるらしい。

俺はありがたくも、警戒しつつ心と体を落ち着かせる。


「一般人の君たちには小難しい理屈や理論などは理解することはできないと思うから簡単に説明するよ。

まず神墜器(バベル)とは、普通の人間には持ち得ない神をも殺すと言われている、いわば超常の力。そして神墜器使い(バベルホルダー)とはその力を使うことのできる人間のことを指すのさ。」


ババアは日本語で神墜器と呼んでいたが、どうやら英語だとバベルと言うらしい。

正直全くついて行けてないが、今は「なんかスゲェー力」と思っておこう。

見た所、絵里も無理に理解しよとせず、どうやってこの場を切り抜けるか思案している様子だった。


「ということで、さっきの続きをしようか。大和くんも一般人にしては良い身のこなしだったけど、神墜器使い(バベルホルダー)じゃないのなら話にもならないね。て言うことで今度はそっちの大和撫子に遊んでもらおうかな!」


俺から絵里にターゲットを変えたジークは鬼たちをけしかけた。

絵里は華麗に鬼たちの猛攻を次々とかわしていく。その顔には一切の焦りや恐れなどなく冷静に攻撃に対処強いていた。

そんな幼馴染の姿に俺は改めて驚く。その身のこなしがあまりにも常人離れしていたからだ。


「・・・これが神墜器使い(バベルホルダー)…」

「絵里、かっこいい・・」


今まで全然喋らなかったアルがそんな感想を漏らす。

俺はというと、超人同士の戦いを前に何もできないでいた。

そんな俺とは逆に絵里はまたしても鬼の一体をかかと落としで粉砕する。

そんな絵里の思わぬ奮闘で初めてジークの顔が焦ったように見えた。


「・・絵里さんだっけ?君…」

「下衆が気安く呼ばないでくれる?」

「怖い怖い。戦い方同様に気も強いね。これは僕も少し本気出さないとやばそうだねー」


そういったジークは手元の両刃剣を地面に刺した。すると彼の周りの地面が赤黒く発行し、そこからノコギリのような大きな大剣を持った細い鬼が現れた。


「こいつは刃亜点堕(ペインラー)、こいつの前だとみんな痛みに正直になっていいか顔をするんだ。・・さて、君はどんな顔を見せてくれるんだい!」


速い!?

さっきの鬼たちとは明らかに動きが違う。絵里も意表を突かれたのか刃亜点堕(ペインラー)と呼ばれた鬼の斬撃を腕に食らってしまった。


「絵里っ!!」

「痛っ、何…このキズ…」


一度距離をとった絵里は膝をつき、切られた場所を痛そうに抑えた。


「うーん。なかなかにいい顔をするじゃないか!」


そんな絵里を恍惚な顔でジークが笑う。その表情からは悪意しか見受けられず、人を傷つけることを楽しんでいるようだった。

そんな彼は刃亜点堕(ペインラー)での追撃を痛みに堪えている絵里に容赦無く行った。

必死に鋭い攻撃をかわそうとする絵里だが、痛みで動きが悪くなっているせいか何ヶ所かさらに攻撃を食らってしまう。


「…くっ、いくらなんでも、痛みが激しすぎる」

「気づいてきたかな?・・僕の刃亜点堕(ペインラー)に受けた傷は痛覚に直接働きかけ、通常よりも痛みが何倍にもますのさ」


どういう原理かあの鬼に傷つけられると痛みが増すらしい。到底信じられるような事では無いが、絵里の苦悶の表情を見ればその真偽は明らかだった。

一気に劣勢になり焦る俺と絵里。だがそんな俺たちの前に意外な人物が立つ。


「私も、たたかう」

「アル!何やってんだ!?狙われてるのはおまえなんだぞ!」


そう、ジークに命を狙われているアル自身が俺たちを守るように鬼の前へ立ちはだかる。


「へぇー、寝起きのトカゲ風情に何ができるんだい?君は絵里さんや大和くんを殺してから。ちゃんと始末するから待っていな。順番抜かしはマナー違反だよ。」

「うるさい、お前なんか今の私でも余裕・・」

「……チィッ。調子に乗るなよ…」


ジークは不機嫌そうに細い鬼をアルへ向かわせた。しかし、アルは避ける素ぶりを見せずその場に棒立ちのまま動こうともしない。そんな彼女に俺は思わず叫んでしまう。


「避けろアル!」


それでも避けようとしないアルに鬼の一撃が当たった・・・と思えたが鬼の武器はアルを通り過ぎ、すぐ真下の地面の土を巻きあげただけだった。一瞬、幻覚じゃなければ鬼の武器がアルを通り過ぎたように見えたが…


「・・・・なるほど、それがお前の()()()か…」

「・・よいしょ!」


アルは大振りなパンチで鬼をジークの元まで吹っ飛ばした。

な、何が起こってるんだ?さっきから目の前で起こるビックリ技の連続で俺の頭はパンク寸前だ。

それでも、確実にわかるのはこの中で俺が一番弱いと言う何とも情けない事実だけだった。


「寝ぼけトカゲにしてはやるねー、でも僕の本気はこんなものじゃないよ!」


そいうと彼は手元の両刃剣を回転させる。それに反応するようにここら一帯の地面がまたしても赤黒く光だした。

まさか、また鬼を召喚するのか!?これ以上は流石にやばい!

絶望する俺だが、鬼を召喚しようとしているジークの元に何か飛来物が飛んできた。

危険を察知したのかジークも召喚を中断し、思わずその場から飛び退いて回避した。

飛来物の正体はCDディスクのような鋭利なもので深々と地面に刺さっている。


「どうやら長居しすぎたみたいだね…厄介なのが来てしまったようだ。・・・名残惜しいけど僕はそろそろ晩御飯を食べたいから、これで失礼するよ」


そんな風にあっさり逃げたジークは颯爽と山の方へ消えていった。

俺はこのCDディスクのような物を飛ばしてきた方をみたが、到底人がいるようには思えなかった。


「ふぅー、何はともあれ助かったし、俺たちも早く逃げよう!」


絵里の手当もしたいし今は一刻も早くこの場を離れたかった。


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