幼馴染がヤンデレすぎて俺への愛が重すぎるけど、俺はそんな彼女の重すぎる愛を全力で受け止めるぞッ!!
「おはよう、努くん……♡」
俺――藤沢努が朝、目覚めると、ある女の子の顔が目の前に現れた。
「ん……お、おおおおッ!! 真樹、真樹じゃないかあッ!!」
その女の子――黒木真樹は、近所に住む幼馴染である。
「今日も朝からお前の顔が見れて嬉しいぞッ!!」
「えへへ……やだもう、照れるなあ……♡」
真樹は毎朝、俺に馬乗りして起こしてくれる、とってもかわいい、自慢の幼馴染だ!
今日も、その照れてる表情がかわいいなあ!
「ほら……早く着替えないと、遅刻しちゃうよ……?」
「おお! そうだったな! 今すぐ着替えるから待ってろ!」
俺は、ベッドから降りて、すぐに制服に着替える。
「ああ……努くんの体……いい……♡」
真樹はこうして、いつも俺の着替えを見守ってくれている。
ああ、なんて優しいんだ!
俺は着替えを済ませ、真樹の方を見る。彼女はすでに、制服に着替えていた。彼女はその長い黒髪に、いつもカチューシャを付けている。
「今日もそのカチューシャ、似合ってるぞ!」
そう言いながら、俺はグッ!! と、親指を上に立てた。
「もう、努くんったら……♡」
俺が褒めると、真樹はこうしていつも照れくさそうにしている。ああ、かわいい……!
「努くん、今日はお父さんもお母さんもいないでしょ……? だから、代わりに朝ごはん作ってあげたよ……?」
「おおッ!! ありがとう、真樹ッ!!」
そう言われた俺は、一階のリビングへと向かった。
「うおおお! うまそうだ!!」
真樹が朝食に用意してくれたのは、オムライスだった。
オムライスの上には、ケチャップで、
『スキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキ』
と、いっぱい書かれていた。
「真樹……! それほど俺のことが好きなんだな!! とっても嬉しいぞッ!!」
「えへへ……♡」
そして、俺は椅子に座り、オムライスを食べた。ああ、うまい……うますぎる……!!
「あと……今日もお昼のお弁当作ってきたから、食べてね……♡」
◆
「――ということがあったんだ!」
「バカじゃねーの?」
昼休み、俺は教室で真樹の作った弁当を食べながら、今朝のことを友人の木野祐太に意気揚々と語ると、こう返された。
「なんだとッ!? 貴様、俺と真樹をバカにする気かッ!?」
「だってバカだろ!? いつも思うけど、完全にヤンデレじゃねーか!? というか、お前その弁当よく見てみろ!! 箱にお前が写ってる写真いっぱい貼ってあるじゃねーか!!」
「ああ、これか? いいだろ〜!? 真樹はこれだけ俺のことを想ってくれてるなんて!!」
そう言って、俺は祐太に弁当の蓋の表から裏までビッシリと俺の顔の写真が貼ってあるのを見せつける。
「やっぱお前バカだろッ!? お前はともかく、他人が見たらドン引きするわッ!! ホラー過ぎるだろがッ!!」
「なんだと貴様ッ!!」
俺は思わず机をドンッ!! と強く叩く。俺に向かってそんなこと言うなんて、許せんッ!!
「だいたいさぁ……黒木だってヤベーけど、それを普通に受け止めてるお前も十分ヤベーだろが!!」
「ななな、なんだとッ!? こっちこそ、さっきから聞いていればッ!! ヤンデレだかサンダルだか知らんが、真樹はとってもいい子だ!! それを愚弄するなど、俺はお前を絶対許さんッ!!」
――と、まあ、なんだか喧嘩しているように見えるかもしれないが、これはいつも通りの会話だ。なんだかんだ言って、祐太もいい奴だ。
「だが……確かに最近、なんだか違和感も感じるんだ。真樹はいい子なんだが……うーむ……」
俺が首を傾げていると、祐太は言った。
「いや、だってお前、そもそもさぁ……」
その次の祐太の一言が、俺的には衝撃だった。
「お前ら、まだ付き合ってねーのかよ」
それを聞いて、俺は一瞬固まった。
「それだーーーッ!!!!」
「うるせーーーッ!!!!」
完全に目から鱗だった!! そうだよ、なんで真樹があれだけ好き好きと言ってるのに、まだ付き合っていなかったんだ!? バカか俺はッ!?
クソッ!! こうなったら善は急げだッ!! 準備をしなければッ!!
◆
「努くん……呼んでくれて、嬉しいな……」
とある日の夜、俺は真樹を、俺の家の前まで呼んだ。
さあ、勝負だぞッ、藤沢努ッ!!
「――真樹ッ!!」
そう言うと、俺は赤い薔薇の花束を真樹に差し出す。
「……っ!! 努くん……これ……!?」
「真樹ッ!! 俺はお前のことが好きだッ!! 付き合ってくれッ!!」
やっと言えた……! やっと、自分の気持ちに正直になれたんだ……! 真樹もきっと――!
「……ごめん、努くん……!」
え……まさか、振られたの!? 俺ッ!?
と、思っていたら、真樹が花束を受け取って後ろへ振り向いた。
「また……返事するから……!」
そう言って、真樹は走り去った。
え……こ、これって、まだ振られたわけじゃないんだよな?
俺は、一応そう思うことにした。
◆
そして、とある休日の朝。
「おはよう……努くん……」
いつものように、真樹が――あ、あれ……? 体が、うご、かない……?
こ、これは……手足が縛られてる……!? ロープか何かか……?
「フ……フゴ、フゴ……!」
まずい、口もガムテープか何かが貼られていて、何も話せない……!
「ふふふふふふふ……! 努くん……! 努くん……!」
真樹がそう言うと、手に鎖のようなものを持ち、それを引っ張る。
「――フゴォッ!?」
それと同時に、俺の首が引っ張られているような感覚がした。まさか、この感触……!
俺は、真樹が持っている鎖をよく見てみた。そして、それが俺の首の方に繋がっていることが分かった。ということは、まさか、今俺は首輪を付けられている……!?
「ふふふふふふふ……! 努くんは私のもの……! 努くんは私のもの……!」
真樹は、そう言いながら、ナイフのようなものを手に取る。それを、俺の足の方へ――!
――あ、あれ? 足が動けるようになったぞ? もしかして、ロープを切ってくれたのか?
すると今度は、手の方にもナイフを向ける。そして、手が動かせるようになった。
「剥がしていいよ……? そのガムテープ……」
真樹が俺に向かって言った。
「フ、フゴ……?」
俺は困惑しながらも、言われた通りに口のガムテープを剥がす。
「――ぷはぁッ!!」
やっと口から息ができた。真樹は一体何を……?
「はい、努くん……♪」
真樹は、俺に何かを手渡す。
それは、黒い薔薇の花束だった。
「この間の……お返し……♪」
そう言った真樹は、さらに何かを手に取り、俺にそれを向けた。
「努くん……とーっても、似合ってるよ……♡」
――真樹が持っていたのは、大きめの手鏡で、首輪を付けられている俺の顔が映し出されていた。
「これが、私からのプレゼント……私からの気持ち……どうかな、努くん……♡」
その真樹からの言葉を聞いた、俺の返事は――!
「――最ッ高じゃないかッ!!!! 真樹ッ!!!!」
まさか、俺への想いがここまで大きいものだなんて、流石に想像してなかった!
これほど、愛されているとは、なんて幸せものなんだ、俺はッ!!
「首輪を付けさせてまで俺を離したくないなんて、そこまで俺が好きなんだなッ!! ありがとうッ!! 真樹ッ!!」
「……っ!! つ、努くん……!!」
真樹は手で口元を覆っている。本当に嬉しそうだなぁ……!
「ね、ねえ……努くん……」
「む、どうした、真樹ッ!?」
「私を……抱きしめて……♡」
「……ッ!! おおおおッ!! 分かった、抱くぞーッ!!」
真樹に言われるままに、俺は真樹を抱きしめた。
「もう……努くんったら……♡」
ああ、俺は今、最高に幸せだ……!!
「努くん……もう一つ、お願いしてもいいかな……?」
「いいぞッ!! なんでも言ってくれッ!!」
「……キス、して……♡」
「……ッ!! ま、真樹ッ……!!」
俺と真樹は、お互い顔を見合わす。
そして、俺たちはキスをした。
これでやっと、恋人同士になれたんだ……!!
長めのキスをした後、俺たちは唇を離し、再びお互い顔を見合わす。
真樹はとても幸せそうに笑っていた。こんな顔を見たのは、初めてかもしれない。
そして、真樹は嬉しそうにこう言った。
「えへへ……これで努くんは、ずっと、ずーっと、永遠に、私のもの……だよ……♡」
◆
そして俺は、首輪を付けたまま外を歩いている。
真樹に首輪を鎖で引っ張られながら。
するとそこに、祐太が俺たちの前に現れた。
俺たちを見かけるやいなや、祐太はまるでこの世の終わりが来たかのような絶望的な表情を見せた。
そんな祐太に、俺は伝えた。
「よう! 俺たち、付き合うことになったんだ!!」
「お前らやっぱ、バッカじゃねーのッ!?」