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ツンデレ作家と奴隷ちゃん  作者: 鳴神 春
2/3

第2話 何とお呼びすればよろしいですか?

1


晴人がソフィーとの生活を始めて5日が経った。


当然ながらソフィーはこの世界の知識が全くないため、晴人がこの世界のことを教えていた。


しかし晴人が気にしているのはそこではなく、


「おはようございます!ご主人様!今日もよろしくお願いします!」


「なるほど!さすがご主人様です!勉強になります!」


「ご主人様!今日のご飯は昨日教えていただいたものをお作りします!」


そう、ソフィーの「ご主人様」である。


晴人にメイド喫茶に行く趣味はないし、ご主人様なんて生まれてこの方言われたことがない。


それ故に晴人はどことなく違和感を感じていた。


「・・・あのなソフィー」


晴人は食器を洗っているソフィーに声をかける。


「なんでしょうか?ご主人様?」


ソフィーは洗い物を終え晴人の方に近づいた。


「あー、いや、あのな、前にも言ったけどこの世界には奴隷制度はないんだから別に俺のことをご主人様なんて言わなくてもいいんだぞ?」


「それはダメなのです!ご主人様は私の恩人なのです。だからご主人様はご主人様なのです!」


ソフィーがきっぱり言う。


「いや、それはわかったんだけどご主人様はやめてくれないか?せめて別の呼び方にしてほしい」


「では、なんとお呼びすればいいのですか?」


「え?」


ソフィーに振られたものの晴人は何も考えていなかった。


自分がソフィーにどう呼ばれたいかなんて考えるのはなんだか言わせてるみたいで恥ずかしくなってしまう。


「そ、ソフィーの呼びやすい呼び方にしてくれ。ただしご主人様はなしだからな」


晴人はなんとかごまかした。


「私の好きな呼び方ですか・・・

でしたら・・・」


そう言いかけてソフィーは顔を赤らめてゆっくり答えた。


「晴人様・・・とお呼びしたいです・・」


その可愛い上目遣いに晴人は思わずドキッとする。


「ま、まあご主人様よりはだいぶマシかな。それより何でソフィーが照れてるんだ?」


自分の心中を悟られないように晴人が質問をする。


するとソフィーはもじもじしながら答えた。


「そ、それは・・・晴人様に少しでも近づきたくて名前で呼びたかったので・・」


その言葉を聞いた瞬間、晴人は恥ずかしさのあまり自分の顔を手で覆った。


「どうしたのですか晴人様⁉︎どこか悪いのですか⁉︎」


「ち、違う!!大丈夫だからっ!」


今手をどければ絶対だらしない顔になっていると晴人は確信していた。


違和感は解消されたものの、以前にも増して恥ずかしさが拭えない晴人であった。


2


晴人がソフィーとの生活を始めて2週間が過ぎようとしていた。


今日晴人の部屋には晴人とソフィーと達也の3人がテーブルに集まり座っていた。


今日は夏のコミケ前に開催される同人イベントの打ち合わせである。


「今回はどういう本で行く?」


達也が麦茶を飲みながら晴人に尋ねた。


晴人もコップに手をつけながら答える。


「そうだなぁ、主人公とヒロインのアナザーストーリーでどうだ?今回はアニメの内容も内容だし全年齢でいいだろ。」


「了解。それで原画で若干描いて見たんだけど・・・」


晴人がシナリオで達也がイラストという割り振りが晴人達のサークル【詩季おりおり】の基本である。


晴人が考えたシナリオに達也は提案こそすれど文句は言わず、晴人も達也の描くイラストを否定はしない。


長い付き合いだからこそお互いの考えがわかるようだった。


「・・・よし、これでいこう。それじゃ内容なんだが・・・」


「あのーー、晴人様?」


ソフィーがおずおずと晴人に話しかけた。


「ん?どうしたソフィー。」


「私も何かお手伝いしたいです!」


「そうだなぁ・・・昼が近いから飯の用意を頼む。」


「わかりました!今日はオムライスです!」


そう言ってソフィーは台所に消えていった。


その一連のやりとりを見ていた達也がニコニコしながら晴人に話しかけた。


「ソフィーちゃん、こっちの生活にだいぶ慣れたみたいだな。」


「当然だろ、俺が教えたからな。」


「そりゃ心配だわ」


晴人がドヤ顔で言い、達也が鼻で笑った。


ソフィーのオムライスを食べた後も話し合いは進んでいき、本の内容は3分の2まで決まった。


前半は主人公達の日常と多少のギャグを入れ、後半は主人公とヒロインがバトルで強敵を倒す展開だ。


「ここのヒロインのセリフなんだが、主人公がバトルに勝てる可能性が低いことをなんかに例えた方がいいかなって思ってるんだが。」


シナリオが書いてあるノートを見て晴人が言う。


「んー俺は別に『ダメよ!いくらあなたでもあれに勝てるかどうか・・』でいいと思うけどなぁ」


前半のページを描きながら達也が答える。


「いや、ここでどれだけ敵が強いかってことを知らせたいんだ。っとそうだ。」


そう言って晴人はノートに主人公を引き止めるヒロインの絵を描いた。


達也ほどではないがそれでもなかなか上手い絵だった。


「・・・よし、これでわかりやすいだろ」


そう言ってヒロインのセリフを描いた晴人は達也にノートを見せた。


『ダメよ!このバトルであなたが生きられる可能性はガチャで単発星5を引く確率より低いわ!』


「ソシャゲで例えんな!世界観が壊れるだろ!どんだけ薄っぺらいんだこいつらの人生は!」


達也はツッコミながらノートをベットに叩きつけた。


「わかったって、じゃあヒロインじゃなくて主人公に喋らせよう」


そう言って晴人はまたノートに絵を描き、今度は主人公にセリフを付け足した。


『引くわけには行かねーんだよ。あいつとのバトルとパ◯ドラだけが俺を熱くさせるんだ。』


「アプリ名出すんじゃねーよ!残念になる奴が変わっただけだろうが‼︎」


「ちなみに俺はモ◯スト派だ」


「いや聞いてないから!黙ってシナリオ考えてろよ!」


「あ、私もモン◯ト好きですよ!」


「ソフィーちゃん入ってこないで!ややこしくなるから!つーかソフィーちゃんに何教えてんだ!!!」


達也のツッコミが部屋にこだました。


ちなみにモンス◯を最初にやりだしたのは晴人ではなくソフィーであることを達也が知るのはまだ先の話。


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