15時の風
星に願いを。
空を拝む真似をして、お前は笑った。
真昼なんだから星なんてあるはずがないとツッコミを入れると、急に真顔になる。
「昼間だって星はちゃんとあるよ。太陽の明るさに紛れて、見えなくなってるだけでさ」
小難しい理屈を並べ立てて説明してくれるが、理科が苦手な俺にはちっとも理解できない。そして最後に「常識だよ?」と馬鹿をあざ笑うような得意顔。
デコピンを喰らわせて、俺は窓から身を乗り出した。
ほらみたことか。どこにも星なんて……――。
「危ない!」
体の半分が窓の外へ出たとき、慌てたお前がタックルをするように俺にしがみついてきた。落ちるわけないだろ? ふざけて笑った俺を突風が襲った。
強烈な風に教室の中へ押し込まれ、二人して縺れるように床を転がる。
「……っ痛てぇな」
「つ……、だから言ったのに」
腰をしたたかに打ち付けた俺の目に、風に蹂躙された教室の様子が飛び込んできた。
散らばったプリントを拾い集める学級委員長に、前髪をいじるクラスメイト。そそくさと窓を閉める奴もいた。
「お前のせいでえらい目に遭った」
自分のことは棚に上げて、もう一発デコピンをかます。
お前は期待通りのリアクションをして自分の席に戻っていった。
授業開始を告げるチャイムが鳴る。
――星に願いを、な……。
キザ臭いセリフを思い出しながら、教科書を開いた。