理系か文系を決めるみたい・・・・
今度から2週間に1話のペースにしたいと思います。
出来るか分からんけど・・・・・。遅れてすいませんでした
この世界は全てレベル制。
質量持つもの持たないもの、有機物か無機物か、生命体か非生命体か、それら関係なくレベルを持つ。道端の石ころにだって。
レベルに上限はなく、どこまでも伸びる。しかし、高レベルになるにつれ、上がりにくくなる。
レベルが上がるかは、『経験』によって決まる。例えば、武人が格上を倒す『経験』か、格下を倒す『経験』かでは大きく差が出て、前者の方がより濃密な『経験』となりレベルが上がりやすくなる。
高レベルのメリットは、全能力の向上である。レベルが高くなるにつれ、あらゆる力、体力、膂力、知力、才力、他多数の能力が全て向上する。
改めてまとめると、この世界は全てレベル制、である。
だが、何事にも例外というものがあるように、この原理にも例外と呼べる存在がいる。
それは________
『おい、駄女神!脳内でぶつぶつ呟くな、寝れないだろうが!』
『知ったことではありませんね。私は神なのです、神は睡眠を必要とはしません。故に、一騎が眠ると暇なのです。一人で起きていないといけないのです。・・・・・寂しいです』
_______我らが駄女神である。
駄女神といえども神は神。人間とは存在の格が違うのだ。故に世界の理に縛られる理由がない。少し強引な気もするが、そういう風にできているのだから仕方がない。
だが、そんな世界の理から外れている人外様は今、ちっぽけ_______と言うには少々抵抗を覚えるような人間との会話にご執心なわけだが。
『知ったことではないのはこっちのセリフじゃ!ちょっと我儘が過ぎると思います!あと、寂しいです、の部分がちょっとドキッっとしました。あざといと思います』
『あ、あざとくないですよ!?わざとじゃないですし、言いがかりはやめてください!』
一騎は自らの睡眠時間を犠牲にしようとする、おしゃべりな女神様に小さな反撃をする。
最初は落ち着いているのに、予想外のことが起こるとはっきりと見て分かるレベルで動揺するのが可愛いな、と思いながら、一騎は密かに駄女神で遊んでいるのだ。
一騎が女神をいじるという、最近見慣れてきた一幕をはさみながらも、時は深夜、皆寝静まり、外は夜の漆黒を月の光のみが切り裂いている。
ナイザールの言った通り、一人一人の個室へと案内された一騎達だったが、一騎以外はいきなり召喚されたという事実に少なからずのショックを受け気疲れで寝てしまっていた。
一騎は一応、一通りの話を女神と念話しながら、眠気に襲われ、もう寝ようか、と思い目を閉じたとき、気づいたのである。即ち、「念話ってどうやって切ればいいんだ?」と。
寝ようとしているのに、止まらない駄女神の話。眠気もイライラも限界に来ていた一騎だった。
『頼む、寝かせてくれ。多分明日から訓練が始まるから、面倒なことになるんだって』
『面倒なこと?』
『ああ、俺、みんなの前ではレベルとか全部隠す気でいるから、それ考えると・・・・』
これはこの世界に来た時から一騎が考えていることだった。レベル1の状態から始めるならまだしも、前回と変わらないステータスで暴れたならば、みんなに言い訳するのも面倒だし、何よりあっちの世界では何の能力もなかった一騎がいきなり本気を出せば陣やクラスメイトから面白く思われないだろうと考えた為だ。
女神は一騎の曖昧な間で大体のことは察して、そして疑問に思った。
『一騎、あなたは強い。あなたが本気と言わず4割の力を出せば抵抗できるのは私ぐらいしかいなくなるでしょう。それなのになぜ、未だにクラスメイト達のことを気にしているのですか?あっちの世界では、あなたを嘲笑っていた人たちなのに』
女神は暗に「そこまで強くなったのになぜ今更、ちっぽけな存在のことを気にするのか?」と聞いているのだ。それは、圧倒的強者の、あるいは、神の視点からの問いかけだった。
確かにこの世界とあっちの世界の一騎では差がありすぎる。それこそ、いじめられっ子と救世の英雄ぐらいの差が。あっちの世界で一騎をバカにしていた奴など、こっちの世界の一騎にしてみればか弱い存在でしかない。
しかし、一騎の思いは違っていた。
『まず、前提条件が間違ってるぞ。俺はお前が言うほど強くない。力がじゃない、存在が、だ。精神的に言えば俺はただの男子高校生で、一回先にこっちに来ているだけに過ぎない、あいつらとそう大して変わらない存在だ』
正真正銘の神様とは違ってな、と冗談交じりに言う。
『・・・・そうですね。その謙遜なのか傲慢なのか分からない感じがあなたらしいです』
何か懐かしいことを思いだすかのような口調だった。
ナチュラルに失礼なことを言っている気はするが、いつものことなので、スルーする。
そして、もう眠気が限界に来ていた一騎は困惑しながらも、
『なあ、もう寝ていいか?俺、もう眠すぎて寝れないまであるぐらいだから』
『知ったことではありませんね!』
さっきまでの回想シーン風の雰囲気はどこに行った・・・・。あと、何で最後どやってんの?
・・・・・・・・・・・
早朝。
結局徹夜で女神と話すハメになった一騎は、当然のごとく寝不足である。しかし、徹夜すると発症する「徹夜テンション」が今は眠気を誤魔化していてくれている。ちなみに「徹夜テンション」とは徹夜して朝になってもしばらくはテンションが高いままである状態のことを言います。
朝早く____と言っても日本での7時ぐらいに起こされた一騎達。一騎達の教育係であるザックが呼び出したのである。果たして、今一騎達がいるのは訓練場のようなところであった。
「みなさん、おはようございます。昨日の今日で申し訳ないですが、今日から訓練を始めます」
ザックは開口一番そう言い放った。それに、反応する者がいた。
「ザックさん、訓練って一体何をするんですか?」
そう聞いたのは、一騎の幼馴染の由香であった。由香が言った質問はみんなが思っていたことらしい。ある者は好奇心の、ある者は怯えの光を瞳に宿していた。
「この世界における訓練とは大きく分けて2つあります。1つ目は、身体的トレーニングで『レベル』を上げたり、剣や槍、弓などの武器を用いて、それぞれの『スキル』のレベルを上げ、戦闘能力を向上させるやり方です」
そう言って、ザックは『レベル』についての説明をする。教科書通り、この世界は全てレベル制_______、から始めて。
「次に、『スキル』についてですが、『スキル』は特殊な『経験』をすることにより、会得できます。例えば、剣の素振り毎日千回を一年続けると、剣の『スキル』を得られた、みたいなものです。あくまで、例えで、『スキル』を得るか得ないかは、個人差があり一概にこう、とは言えませんが」
ザックが『スキル』の説明をすると脳内で女神が補足説明をする。
『「スキル」には絶対に個人にしか発現しない「ユニークスキル」がある。「ユニークスキル」はほとんどが圧倒的な力である。「ユニークスキル」が発現するのは稀で才能ある者しか使えず、使い手は世界に50人もいない』
『ああ、そうだな。考えてみると「ユニークスキル」って珍しいんだよな。あいつらはほとんど全員「ユニークスキル」持ちだったからな』
『ええ、かなり異常ですよ。あそこまで「ユニークスキル」持ちが集まるのは。まあ、あなたが彼らを育てた結果ですけどね』
『いや、あれはあいつら自身の才能だよ。ちょーっと鍛えただけですぐに使えたし』
『ほーう、それが、たった半年で仲間全員をさらっと人類最強格に育て上げた人の言うセリフですかそうですか』
『い、いや、でも最初は俺が教わってたじゃん?』
『訓練を始めて半月で追い越してましたけどね。それに、1つでも持っていれば最強になれる「ユニークスキル」を217個発現させている時点でおかしんですよ』
『そ、それは・・・・・』
一騎が戸惑っていると、ザックの話が入ってくる。
「2つ目の訓練は、魔法系統の練習をしてもらう。主に、基礎魔法の習得と魔力量の向上、魔法系の『スキル』を得る、ということをします。基礎魔法とは火、水、風、地の属性魔法のことです。基礎魔法は『スキル』で習得していなくても使える、いわば魔法の基本の基本ですね」
ここで、みんなの反応が著しく変わる。
「ま、魔法ですか?私達魔法なんて使ったこと無いんですけど・・・」
由香が驚きながらにザックに問いかける。
「心配ありません、あなた方は勇者として召喚され、基本の能力値が上がっています。なので、魔法を使ったことはなくとも、魔力はありますし、練習をすればすぐに使えるようになります。先代の勇者様は教えられてすぐに使えたそうですから」
『ああ、確かにすぐに使えたな。結構簡単なんだよな、見てれば感覚がつかめてくるし』
『・・・そんなのあなただけですから。本来は魔法が使えるようになるのは子供のころから練習してきて、15歳ぐらいでやっと基礎魔法が使えるようになるのですから』
『仕方ないじゃん、出来ちゃったもんは出来ちゃったんだから』
一騎がそっぽを向いて拗ねる。
「ただ、召喚された中でも高齢の方や戦えない事情のある方は訓練を受けなくても構いません」
召喚した側の最低限の配慮はしてくれるらしかった。
「では、自分はどちらの訓練を受けるのかを決める前に、あなた方のステータスを知ってもらいます。それを見てから考えてください」
そう言って、ザックは大量の白い本のようなものを配り始めた。
「これは、登録すると自分のステータス、レベル、スキルなどが細やかに記入される魔法道具です。名前はそのまんまで、ステータスブックと言います」
一人一冊ステータスブックを持ったのを確認すると、また説明を始める。
「では、表紙に手を置いて魔力を流し込んでください。手を置いたら勝手に魔力を吸ってくれますから」
そういわれると、召喚者はみな、恐る恐るステータスブックの表紙に手を置き始める。
すると、ステータスブックは手を覆うぐらいの光を放ち始め、光が収まってくるとそれぞれ色が変わっていた。
「ステータスブックの色は各々の潜在能力によって変わるといわれています。基本は白で潜在能力が強ければ強いほど色が濃くなっていきます。先代の勇者様は眩しいくらいの金色であったそうです。ちなみに金色のステータスブックはその一冊だけです」
そこまで言われて、気づいてしまった一騎。
『ど、どうしよう!俺がまた触ったら金色のステータスブックができちまう!?』
『落ち着いてください。ステータスブックは一人に一冊だけです。あなたはもう、作っているのだから、新しくは作れません』
そうだった、と冷静さを取り戻す一騎。すかさず、ザックに、
「すいませーん、手を置いても何も起きないんですが」
「そんなことは、・・・・・本当ですね、こんなことはなかったのですが。新しいので試してみましょう」
そう言って、ザックは新しいステータスブックを一騎に渡した。しかし、結果は当然駄目だった。
「おかしいですね。魔力はちゃんと流れているのに、反応しない・・・・?」
心底不思議そうに首をかしげるザックさん。召喚された人間が実は2回目だったとは露ほども思わない。原因が不明のためザックはとりあえず保留にしておくことにした。
「すいません。原因がわからないですが、あなたは、登録できないみたいです。魔力は流れているので、勇者としての力はあると思いますが、原因が分かったらすぐに改善しますので、それまで待っていてください」
「わかりました」
一騎からしたら登録できないのは普通のことなのだが、ほかの者から見たら、みんなが出来ているのに一人だけ出来ていない、という構図になる。
もちろんそれを放っておくほど一騎のもう一人の幼馴染は優しくなかった。
「ふっ、はははは。こんな簡単なことも出来ないのか?頼むから、みんなの足を引っ張らないでくれよ!」
陣が水を得た魚のごとく一騎を貶しにかかる。そして周りにいたクラスメイト達も笑い始める。陣については、ただの性格が悪い奴じゃね?と一騎は思った。
「大丈夫、ただ登録できなかっただけだよ。いっ君はやればできる子だからね、訓練で頑張ろう!」
由香がフォローしてくれる。・・・・ただ前提条件が、やっぱり戦わなくちゃいけないんですね・・・。
「ふっ、由香は優しいな。ただ、そんな役立たずなんかに構っていては時間の無駄だよ。放っておけばいいよ」
陣がいつも通りに由香がフォローする一騎をディスる。
苦笑いを浮かべながら、胃が痛くなってきた_____ような気がしてきた。こっちでの一騎の胃は弱くないはずなのに・・・・・。
空気を察してか、ザックが割って入る。
「今は身内で争っている場合ではないのです。みんなで協力し合って魔王を倒さなくてはいけないのですから」
ザックは軽く陣とクラスメイト達を諌める。そして、みんなの反応を見計らいながら、
「では、どちらの訓練を受けるのかを決めてください」
みんな、3時間ほど悩んだ。