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文化祭は波乱の連続

憂鬱な気持ちのまま学校に到着する。なお、美形幼馴染に抱き着かれたり、睨まれたりしてる模様。


(笑えねーーーーー!)


心のままに叫びたい今日この頃、一騎は由香に肘ホールド、ほぼ抱き着かれている状態のまま学校に連行。陣はそんな二人を見て不愉快そうに表情を歪める。由香と話すときはもちろん笑顔で、だ。


(あーもう、面倒くせええ!本当に4年前と何一つ変わってねーな!・・・・当たり前か)


そんな他愛もないことを考えながら、ある意味爆弾と呼べる幼馴染2人をと共に下駄箱へ向かう。


「そういえば、由香。今日の文化祭、確か13時からシフト入ってなかっただろ。なら、俺と一緒に回らないか?」

陣が渾身の笑顔と口説き文句で誘う!


「うん!いいよー、一緒に回ろー!いっ君も行くよね?」

由香は華麗に陣の笑顔をスルーして、陣の言いたいことの意味を理解しない!


「い、いや、俺はいいよ。休憩室で休んでるから」

「だーめ。文化祭なんだからぐーたら禁止!」


お分かりいただけただろうか。これが一騎たちの関係である。歪なトライアングルだ


由香は基本お節介焼きでしっかり者であるが、実はかなりの天然である。


陣は由香を口説こうとするが、ことごとく由香の天然に阻まれているのである。


一騎は基本アニメが見たいので、お節介焼きの由香から距離をとろうとするが、逆にお節介を焼かれる。


もはや、由香が一騎を構い過ぎて、それに嫉妬した陣が一騎にきつくあたるという状態が出来上がっていた。


ここでやっと、陣が復帰してくる。


「い、いや、そうじゃなくて_______」

「それに、いっ君と出店回りたいしー!」


凍りつく男二人に構わずニコニコした笑顔で会話を進めていく由香。


(もう、やめてくれーー!これ以上、爆弾落としてかないで!また、陣に嫌味言われるんだから!あ、なんか陣が目で、お前、後で体育館裏ね、みたいな目で睨んできてるぅぅ!)


「あ、はは。そう、だネ」


一騎が渇いた笑いをしている所でクラスに到着。

まず、由香がクラスに入っていく。


「みんな、おっはようー!」

「「「「おはよう!」」」」


次に、陣が突入!

「みんな、おはよう」

「「「「おはよう、陣!」」」」


そして最後に、俺が行くーー!

「お、おはよう」

「「「「・・・・・」」」」


泣いてなんかない、泣いてなんか、ない・・・・・ぐすっ。


つーか、お前ら文化祭だからってテンション高すぎなんだよ!それ以前に俺、今日滅茶苦茶挨拶する場面を目撃してる気がする!・・・いや、普通、なのか?


大人げないクラスメイトから地味に痛い仕打ちを受けながら一騎は自分の席に着席する。

次に、鞄からラノベを取り出す。

読み始める。


「こらー!いきなり本を読み始めない!これから文化祭なんだよ!」

「いたっ、ちょ、痛い。やめ、やめろって。え、ちょ、ビリってきてる!ビリってきてる!すいません、もう読みません、読みませんので、そのスタンガンをしまってええ!」


一騎が着々と自分の世界を構築し始めたところで、幼馴染から待ったが入る。物理的に。

割とマジな方で身の危険を感じたため、すぐに幼馴染の言うとおりにする。


「なんだよ!人が読書してるってのに、スタンガンで襲ってくんじゃねーよ!」

「襲うって、失礼な。勝手に読書始めようとしてたから、止めただけじゃない」

「あ・れ・の、どこが止めてんだ!」

「まあ、スタンガンでビリビリさせるのを、止めるとは言わないよね」

「わかってんのに何でやった!?」

「まあ、そんなことより、いっ君」

「いや、そんなこと、じゃないよね!大事なことだよね!もっと掘り下げようよ!」


なんなら、そのまま3時間ほど議論してもいい、とさえ思う一騎を置いて、会話を先に進めていく由香。


「いっ君、これから文化祭なんだよ?なんで教室に到着するなり、おもむろに本を取り出して読書し始めてるの?」

「へ?暇だからだけど」

「文化祭の準備は?」

「パスでお願いします」

由香がおもむろに持っていたスタンガンを片手に襲ってきた!

「お、おい!ちょっと!や、やめ、やめてー!すぐスタンガン出してこないで!」

不意にもちょっと女の子っぽい悲鳴が出てしまった一騎。

「おっと、いけない、いけない。で、何か言った?」

「いえ、全力でやらしていただきます!」


ブラッディオーガがここにも・・・・・。

人って怒った表情よりも笑っている表情の方が怖いんですね。勉強になりました!


「とは言っても、俺にできることなんかないに等しいぞ?」

「・・・なんでちょっと誇らしげなの」

「俺は自分を過大評価しないからな!」

「いや、やりたくないだけでしょ。いっ君、やる気スイッチ押せば、なんだってできるのに・・・」

「いや、お前、やる気スイッチって古すぎるだろう。おばあちゃんか」

こいつ、感性がちょっと時代遅れなんだよな・・・。

「でも、そう言うと思って、ちゃんといっ君でも出来る仕事用意したから」

「ええー、・・・まあ、わかったよ」


ここで嫌、とか言ったらまたビリビリされるんだろうなあ・・・。


・・・・・・・・・・・



なんとか、文化祭準備は無難に乗り切り、やっとお客が入ってくる。


「で、由香。俺にも出来る仕事ってなんだ?」

「うーん、端的に言うとね、お皿洗いなんだよ」

「へー、確かに俺にも出来るな。わかった、任せろ」

早く仕上げて、休憩室とかでラノベを読もう。

「あー、えーと、う、うん!お願いね!」

「お、おう?」


この時、気が付くべきだった、と一騎は後に後悔する。

由香の挙動が不審だったこと、そして、明確に何時間何分やればいいか聞かなかったこと、を。


そんなことがあったとは知らないクラスメイト達が気合いを入れ始める。


決まってこういう時に仕切るのは由香だ。由香の補佐兼フォローをするのが陣。俺は二人と関わらないように空気になる。


今回も由香がクラスメイト達を盛り上げる。


「みんな、程よく緊張して、でも楽しむことを忘れないで頑張って行こう!」

「「「「おう!」」」」


もはや由香のカリスマがすごいのか、クラスメイト達がただノリに乗りたいだけなのか分からなくなってきた・・・・。由香のセリフも、どこの監督だよ・・・・。


「じゃあみんな、配置について!いつでも行動できるようにしておいて」

由香の指示でみんな持ち場に散り散りになっていく。


そして、しばらくしてお客第一号が来店する。


「由香ちゃーん!陣くーん!来たわよ」

「由香ちゃん、陣君、久しぶり」

「由香ちゃん、陣君、また大きくなった?」

「由香おねえちゃん!陣おにいちゃん!」

「由香に陣君、卒業以来かな」

「きゃー!陣くーん、かっこいい!」

「由香ちゃん!親衛隊連れてきたよ!」


これだけで、由香と陣の人気がわかる。特に由香の親衛隊の人と陣のファンクラブの人がすごかった。何がとは言わない・・・・。


由香のメイド服と陣の執事服を見ようと、たくさんの人が押し掛けた。必然それは、一騎が忙しくなるということで、何故か皿洗いが一人だったせいもあり、早々に精神が壊れた。


「アニメ見たい、アニメ見たい、アニメ見たい、アニメ見たい、アニメ見たい、アニメ見たい、アニメ見たい、アニメ見たい、アニメ見たい、アニメ見たい、アニメ見たい、アニメ見たい、アニメ見たい、アニメ見たい。」


おっと、いけない。禁断症状が出ていたようだ。すぐさま、心を落ち着かせようとする。そこに、


「おい、佐切!もっと早く洗え!」

おっと、皿が割れてしまった。

「おい、佐切!これも洗っとけよ!」

おっと、またまた割れてしまった。

「おい、佐切!ここのところ汚れがついてんぞ!」

ははは、また割れてしまった、気を付けなければ。

「おい、佐切______」

ちょっと、黙れよ!このくだり何回続くんだよ!俺に何枚皿割らせるんだよ!


結局、あと18枚ほど皿を割ることになった。


・・・・・・・・・・



途中、皿を割りまくったが、無事に最後の皿を洗い終える。


「おつかれー、いっ君。よくがんばったね」

ニコッ、と疲れ果てて座っている一騎へ缶ジュースを差し出してくる。


しかし、それは受け取らず、由香には言ってやらなくてはいけないことがある。


「おい、7時間休憩なし働きづめってどういうことだ」


流石の俺でも、プッツンくるレベル。異世界の体だったらまだしも、貧弱なこっちの世界の俺の体じゃ耐えられない。

俺の非難の眼差しに対して、由香は、


「メンゴ♥」


この軽さ。1円玉より軽いレベル。しかもメンゴって、メンゴって・・・・。


もう疲れたのでツッコまないことにした。・・・・もともと、俺ってツッコみキャラじゃないよね。


まあ、異常な混みようのせいで由香も休憩なしだったので、少しは怒りを収める。


「まあ、もういいや。で、はよ、頂戴」

「なにを?」

「なにをって、報酬だよ、報酬。労働には報酬がつきものだろう。具体的に言うと、お金」

「高校生の文化祭で真顔で報酬求めてくる人初めて見たっていうか、そんなのないに決まってるでしょ」

報酬を求める一騎の提案は即座に却下され、エヴァのアスカ並みの「あんた、バカ」みたいな感じに言い返された。


はあー、無いのか。まあそうだよな。はあーー。


「そんなバカなことより、校庭でキャンプファイヤーやってるって。いこう!」

また、そんなって言われた・・・・。幼馴染の辛辣さに落ち込みながらも会話を進める。

「キャンプファイヤーって、キャンプじゃないのにおかしくないか?」

「細かいことはいいの!とりあえずいこっ!」


由香は強引に一騎の腕をとり校庭へと連行される。ってか今日の朝とデジャブなんじゃ・・・・。


「陣はどうしたんだ?」

「今、ファンクラブの女の子たちと話してる」

腕を振りほどきながら、歩きつつ話す。

「由香の親衛隊はどうしたんだ?」

「いっ君探しに行くって言って抜けてきたんだ。そう言ったら、みんなもいっ君を探し始めたんだけど」

それ、やばいやつじゃないですか。体育館裏コースじゃないですか。

「お、おう、そうか。わかった」

行くのやめたい、家に帰りたい・・・・。


鬱々とした心境の中、校庭へ着いてしまった。ビクビクしながら安全を確認する。


すると、大勢の女の子に囲まれた陣を発見する。陣もこっちに気が付いたようで女の子たちに断りを入れ、こっちに近づいてきた。


「由香。どこいってたんだ?どこにもいないから心配したぞ。一騎にでも襲われてるんじゃないかって」

途中、一騎の方を見ながら言ってくる。

「そんな訳ないじゃん。いっ君を探しに行ってたんだよ。いっ君、あのままだと学校で寝ちゃいそうだったから」

由香は陣の悪意に気が付かず、冗談と受け取ったようだ。


「まあ、いいや。それより、由香。これからキャンプファイヤーの近くでダンスをするらしいんだ。一緒に踊らないか?」


ああ、あれね。踊ったら結ばれる的なジンクスのやつね。クラスの女子が言ってたわ。


「へえ、そうなんだ。うん、いいよ。わたしも踊ってみたい!」


そう言い、笑顔を浮かべながら一騎の方を見てきた。


おい、待て、まさかだろ。やめてくれよ。頼むからやめてくれよ。


「いっ君も踊ろう!」

願い虚しく爆弾投下。


だが、しかしいつまでもやられている訳にはいかない。即座に逃亡を開始する。


「悪い!用事があるから!じゃ!」


完璧と言っていい走りだし、フォームも美しく、これ以上ないほどの逃走だった。流石の由香も遅れて追走してくるしかない。


しかし、20メートルほど走ったところで、一騎は違和感を感じ、止まってしまう。必然、追いかけてきた由香に追いつかれる。


「いきなり走り出さないでよ!びっくりするじゃない」


そんな文句を垂れてくるが、今はどうでもいい。


「この頭痛、この怠い感じ」


これは、前にも感じたことがある。体感時間では()()()


つまり、


「召喚の予兆!」


その瞬間、校庭に大きな魔方陣が現れ、光で満たしていった。


光が収まった後の校庭はキャンプファイヤーだけが残っていた。




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