悪役令嬢、情報収集する
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その後件の男子生徒に熱烈に感謝された。
そしてその日の放課後には生徒会室に呼び出され、補佐に任命された。
補佐とは何かといえばひと言で言えば何でも屋だ。
生徒会役員は成績順で強制指名制である。
役員は成績順で
会長・2年生1位
副会長・2年生次点
会計・2年生3位と1年生1位
書記・1年生次点と3位
とまあ完全な実力主義で、身分は役に立たない。が生徒会役員はたったの6名。
基本この学園は生徒自治に任せる部分が多いがこれで抑えがきくわけがない。
そこで補佐の出番である。
成績は申し分ないが身分が低い場合は?
ーー身分の高い人物を。
人とのコミュニケーションが苦手な場合は?
ーーコミュニケーション能力に長けた人物を。
特権派の生徒の場合は?
ーーーあくまで中立を貫き、公平な判断を下しその場をおさめられる人物を。
補佐に指名する権利を生徒会は持っている。あくまでバランスを保つため。
要するに現生徒会役員に足りない部分全般を補うーーー全く文字通りの役職である。
成績は関係なく、勿論身分も問わない。全てに秀でてる必要もない。わかりやすく言えば一芸に長けていればいいのだ。
生徒会はこの役員6名と10名の補佐で運営されている。
補佐指名に当たって私が見込まれたのはああいう特権派への対処。随従せず引きもせず、且つ正論で論破する語彙力と必要な事を述べる胆力。
加えて父は財務大臣、王妃の姪というバックボーンがある私には爵位が上の貴族であっても下手は打てない。
のだそうだ。
補佐の指名は生徒会役員と違って拒否権はある。
あるのだがーーどうせもうやらかした後だし?
何より、あの人達、目障りなのだ。
学園にきてリズと知り合って思ったのだ。
勿体ない、って。
だってせっかく前世で憧れだった魔法学園に入って充実した設備に美少女の友達とお茶とかランチとか魔法の授業とか!出来る立場になったのに。
楽しまないなんて勿体ない。
悪くすれば夏休み前夜に追放されてしまうかもしれない。その時には今いる友達だって敵になってしまうかもしれない。
でも、楽しかった思い出は残る。1人で追放されて生きる事になったとしても、それはそれだ。
てな感じに開き直ったのだ。
開き直った人間は強い。補佐を引き受けるという事は生徒会は一応敵ではないという事。引き受けて損はないと思ったし、どうせ権限なくても注意せずにいられないなら権限ある方がマシである。
尤も、注意する権限があってもあの公爵令嬢みたいになると補佐ではきかず生徒会本隊からの注意を促す事になる。
わかりやすくいうと補佐からの注意がイエローカード1なら生徒会からはいきなりレッドカードだ。
レッドが3枚になるとペナルティもあるのだがお茶会や行事への参加が許可されない、外出禁止等だがはっきりいって生温い。
まあ、懲罰房作れとはいわないけどさ?
尤も改善がみられない場合、放校処分もあるそうだ。
実際それでお茶会禁止をくらったリリアンヌは酷く激昂したそうなのでお茶会をサロンと称する輩には有効なのかもしれない。
因みに何故見知らぬ生徒が皆私を一目でローズ伯爵令嬢と判別してるか疑問だったのだが遅れて入学してきたから とかではなく、元々この国は金髪かそれに近い髪色が多く
黒は少数派→魔力持ちだけが集められたこの学園ではさらに少ない→生徒に何人かはいるが貴族令嬢は私だけ→腰まで長くしてるのも私だけ。
という事だったらしい。悪目立ちしてるかと思ったら何だ、そんな事かと安心した。良かった、悪役顔だから。とかじゃなくて。
少なくとも、初手から優しい令嬢とは思われていないだろう。
その上で特権派と中立派どっちにつくか注目されてたというのは、知らなかったけどね?
例の階段騒ぎのお陰で速攻中立派の急先鋒として据えられてしまった。
生徒会長に
「さすが陛下へのご意見も一歩も退かないと言われる財務大臣ローズ伯のご令嬢。良く似ていらっしゃる」
とか言われたけど、
そりゃ兄と弟はお母様似の金髪に緑の瞳なのに較べてお父様の黒髪黒瞳継いだの私だけですけどっ…!
お母様だって普段おっとりしてるけど怒ると怖いよ?
お父様も逃げ出すよ?
普段「宮廷の黒幕」とか「血も涙もない暗黒の財務大臣」「国王泣かせの黒伯爵」なんてありがたくない異名をいっぱい持つ人とは思われないくらいヘタレだよ?
ーーとは外では言えないが。
因みにうちの家族は普通に仲が良い。むしろ使用人に任せきりで交流が少ない貴族の家庭に比べると距離感かなり近いと思う。夫婦喧嘩とか、いきなり子供達の前で始めるからね?
ーーじゃなくて、そもそも生徒会長、自分で出来ますよねっ?公爵子息なんだから!
と目で訴えたら
「僕はああいうのが苦手なんだ」
と苦笑された。
嘘ばっかり。
2年のカイン・ローゼンタール
この人は又従兄弟にあたる。
子供の頃から何度か会った事があるから知っている。理知的で柔和な笑みを浮かべた眼鏡の奥の瞳は確かに一見ひ弱な印象を与えるかもしれないがその実 内面を隠すのも立ち回るのも上手く影の黒幕タイプだ。
因みにリズもあの場にはいなかったが既に補佐に指名されていた。
いつの間に…
「そりゃ、うちは新興貴族の親玉みたいなものだもの。入学してすぐ指名されて引き受けたわよ。この学園の生徒会役員は未来の魔法省エリート達。お近付きになっておいて損はないわ。まあ、貴女に関しては情報不足で良くわからなかったから会長も様子見てたみたいなんだけどね。初日の感触からして指名されると思ってたわよ」
あの家名で呼ぶ呼ばないのやり取りはそんな意味があったのか。
ゲームにはこんな中立派vs特権派なんてエピソードはなかった。完全に情報不足だ。
私は頼りになる親友に詳しく教えて!と迫った。
まず特権派の中心人物
ラインハルト王子(攻略対象)、
キャロル・ステイン子爵令嬢 (ヒロイン)、
バイル・ミリオン侯爵家嫡男、他に辺境伯子息、宰相補佐子息等いずれも1年。
これに2年生のリッツ・フェリクス(攻略対象)が加わる。彼は現魔法省長官の次男で生徒会役員でもある。彼以外に特権派の生徒会役員はいない。
やりづらくないのかな…だがーーーこの面子をみた限り、キャロルはただの”お花畑ヒロイン”さんではなさそうだ。
バイルは身分だけみれば立派だがミリオン侯爵は領地経営が下手で、少しずつ領地を切り売りしてるような侯爵家だ。
他の取り巻きも次男以下ばかり。要するに、ポカやらかしても本人だけ廃嫡すれば家督への影響が少ない。逆に長男に何かあれば家督を継げる立場。ついでに言えば何かしら長男に較べて二の次にされがちな彼らの立場を思えば付け入りやすいとも言える。学園にいる間だけでも、自分が誰より優遇されるべき立場でありたいと思うのだろう。
ーーーしかし。
まあ見てると特権派のやり口は見苦しいのだ。
学食等の列に横入りは当たり前、取り巻き連れてぞろぞろ道を開けよ!みたいに人を避けさすのも当たり前、さらにはあの図書館の個室まで自分達に優先権がある!と主張し出して独占しようとする始末。
私だってたまにしか利用出来ないのにっ…!
私の楽しい学園ライフを邪魔する輩、許すまじっ…!
と徹底抗戦をとった。
因みにリリアンヌとの舌戦は何の意味があるのかというと私がいかに意地の悪い令嬢か知らしめ、騒ぎの元凶と位置付ける為にやってるらしい。
確かに所構わずあんな騒ぎは迷惑である。
仕掛けてくるのはいつもあちらだし、大抵の生徒はあゝまたか、みたいな感じに流してくれるがそうでない人も勿論いる。ここまでの流れを知らない生徒からは単にきつい令嬢と取られるだろう。
そして身分が下だから当然だが、キャロル本人は絶対出てこない。私より身分の高い令嬢をああやって送りこんで来るだけで自分はいかにも相手を尊重していますという態度を崩さない。
やっぱり、
ーーーこの人絶対、ゲームの記憶と知識を持っている。
どっちも頑張れ。