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悪役令嬢、それっぽいやり取りをする。

週別ユーザが前週の10倍になっててびっくりしました!ありがとうございます! 誤字・脱字お許し下さい!

そんな午後の楽しい陽だまりに、不快な声が響く。

「あーら、皆様こんな所で地べたに座ってお食事なんて、さすが平民と仲良くしていらっしゃるだけありますわね!」

ーー来た。

3人で顔を見合わせる。ヴァニラは居心地悪そうな表情になり、リズは黙る。これもここ最近の恒例行事だ。私が口火を切る。

「ご機嫌よう。リリアンヌ様こそ珍しいですわね?日に当たって肌が荒れたと怒ってらして以降日が当たる場所は避けてらっしゃったのに。」にっこり笑って答えると

「なっ!…わ、わたしはあなた達みたいな下賤な者たちと違って繊細なのですわ!お肌に気を使うのは当然でしょう!」


ーだったら出てこなきゃいいのに。

とはその時中庭にいた生徒全員(リリアンヌの取り巻き以外)の共通の思いだろう。

この中庭は綺麗に手入れされており、生徒達の憩いの場でもある。晴れた日には思い思いの場所に敷物を広げランチにしたりお茶したりはこの学園では普通だ。この令嬢みたいなタイプを除けば。

リリアンヌ・フォレスタ公爵令嬢。

古参貴族で特権階級意識の塊で、王子の婚約者候補。ピンクの髪に青い瞳と少女漫画みたいな容姿なのだがとにかく高慢さが顔に出過ぎていて美人ではあるが少しも可愛いらしさは感じはしない。自分も全体の印象がきつめな印象はあるが私よりこの人の方がよっぽど悪役令嬢向きなんじゃなかろうか。

「その繊細なお肌を日に晒してまでこちらにいらっしゃたのは何か()()()()()()お話があるのでしょうね?そのお話とはなんでしょう?」

ーー勿体つけてないでさっさと言え。


自慢にならないが私…いや、前世の私はとにかく口が悪かった。口に出す場合若干オブラートに包んではいたがキレると直球で酷かった。心中突っ込みになると更に輪をかけて酷かった。今世でも記憶が戻ってからというもの心中突っ込みの鋭さは日に日に増している。なまじ語彙力が豊富なだけに厄介だ。

伯爵令嬢として育ってきたスキルのお陰で今のとこ何とか猫を被れてはいるがいつその猫が逃げ出すか…そもそも私は口も悪いが性格も決して良くはない。そういう自覚はあるのだ、目の前の誰かさんと違って。

「し、失礼な!」

失礼はどっちだ。

「時間は有限ですのよ?そもそも人の食事中に約束もなしにいきなり割り込んで来られるのは失礼な行為ではないのかしら?」

「そっそれはっ…」

この人毎回言い負かされてんのにめげないな。

「貴女のその態度こそ公爵令嬢に対して失礼ではなくて?ローズ伯爵令嬢。」

こちらはリリアンヌの取り巻き、カルロッタ・マゼッティ伯爵令嬢、リリアンヌの類友。

「おかしな事を仰いますわね?この平等を謳った学園でそのような物言いは感心しません、とお二人とも何度か注意を受けられてる筈ですのに。もしかして忘れてしまわれました?」

「っ……!」

2人が口惜しそうに歯噛みして一瞬黙る。そのスキを私は逃さない。

「…ー忘れてしまわれたのなら仕方ありませんわね。生徒会の皆様には申し訳ないけれど再度の注意を促していただけるように申し上げておきますわ。あぁ気になさる必要はありませんわ、言われた事を忘れてしまうなんて誰にでもありますもの。流石に()()()()()()のではないかと思いますがもしかしてお肌の調子以外どこか悪くしていらっしゃる?どこか痛む所はございませんか?手とか足とか…頭とか?」

心底心配している風を装って言う。令嬢がたの顔が一気にゆでダコみたい…いや赤い般若かな?

みたいになる。はっきり言って面白い。

「あ、な、何をっ…!」

「まあお言葉がまともに紡げていませんわよリリアンヌ様、申し訳ございません私とした事がっ…!お口に何か病気を抱えていらしたのね!?もしや呂律がまわらなくなる病原菌とかに感染してしまわれました?た い へ ん !!ーーすぐに医務室にお連れしますわ!!カルロッタ様、フォレスタ家の専属医師の事はご存知ですかっ!?」

いきなり棒と突っ立ってる横の令嬢に水を向ける。

「えっ?いや、あのっ」

とこちらも目を白黒させている。

「…まあ。もしかしてリリアンヌ様のご病気が感染…」

「そ、そんなこと、あるわけないでしょうっ!!私はどこも悪くないわっ!勝手に人を病原菌にしないでっ!!」

令嬢言葉が崩れてますわよ、リリアンヌ様。

「まあ、非道い。私はただ具合の悪そうなリリアンヌ様の心配をしただけですのに…いつも高位の令嬢がたに囲まれて私とはお話なんてなさらない方がいきなり声をかけてらしたからてっきり….、お身体の具合が悪くて助けを求めていらしたのだと….、それなのに…」

と涙ぐみながら(フリだけだが)いきなり弱々しく告げてみる。

「そ、それは…」と目が泳ぐ。

用なんてなくていちゃもんつけたかっただけなのが丸わかりだがこの衆人環視の場でそう言って怒鳴りつける訳にもいかない事くらいはこのおバカさんにもわかるのだろう、何しろ私はにっこり笑顔で挨拶、丁寧に相手の話を促す、具合が悪いのですかと心底心配している(ようにみえる)態度しか取っていないのだ。周りをみると白けた視線に囲まれているくらいは察せられる筈だから。


「あ、あなた達が身分もわきまえず平民達に混じってこんな地面に平気で座って食事なさってるときいて心配できてあげただけですわ!あなた達は平民ではなく登城を許されてる貴族でしょう⁉︎こんな所でなくきちんとされた方がよろしくてよっ!」

まさかの心配返し。

いやただの差別発言になってますが。

「こんな所ーーとは?」

すこーーし声のトーンを低くして聞き返す。こんな所とは聞き捨てならない。ここは私のお気に入りの場所なのだ。確かにこの学園には生徒用の立派な食堂がある。食堂を使おうが売店で購入した物を喫茶スペースや好きな場所で食事するのは自由だ。ただ言ってしまうと食堂は貴族が、売店は貴族以外の利用率が圧倒的に高いのもまた事実だ。皆が食堂をあまり利用しないのはこういう人に絡まれやすいのが食堂だからだ。


「この雑草だらけの庭の事ですわ!こんな所に這いつくばって食事なんてまるで野良猫ですわね!」

「猫、可愛いですよね」

私は嗤って言う。

「はっ⁉︎」

「触るとあったかくて、ふわふわでーー膝に乗ってきたりするととても癒されてしまいますもの。猫に例えられるなんて嬉しいですわ。」

少しはにかんで微笑んでみせる。リリアンヌが絶句する。

よし、固まった。

それを確認して

「ーーですが雑草だらけの庭、とは聞き捨てなりませんわ」

すうっと目を細めてとてつもなく低く冷たい声音で私は続ける。

「この学園は王立、つまりこの庭は王家が管理しておりますのよ?この庭は王家に派遣された庭師によって剪定されておりますのよ?貴女様の今の発言ーー王家への叛意と受け止められてもおかしくはない事、理解されていて?」

こういう時、私の令嬢言葉は冷たく冴え渡る。舐めんなよ、会社でモンスタークレーマーとそれを鵜呑みして叱責しかしない無能上司とやり合ってきたんだこちとら。前世の話だけど。


青くなったご令嬢がたが憤然と立ち去ると場にほっとした空気が流れ隣のリズが「お疲れ様」と呟く。これもいつもの事だ。


この学園の中は今真っ二つの場に派閥に分かれている。


一つは、私やリズのように”平等”を掲げる中立派。もう一つが先程の令嬢のように特権階級意識を掲げる特権派。

私は中立派の旗頭のようになってしまっているが、仕方ない事かもしれない。

何故なら特権派の中心は王子&ヒロインwith取り巻きの皆様なのだから。



次話は週末更新予定です!

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