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謎の残る大団円

今日も楽しんで下さったら嬉しいです。

「ラインハルトと共に後宮復活の話なぞ嬉々として語り合うくらいならまだ許せたものを…

ラインハルトは本気で目論んでいたそうですわね?」

ーーえぇ?

「な、なんでそれを…」

青くなった国王が訊き返すとこともなげに

「あれだけ派手にやっておいて気付かないわけがないでしょう。あなたが沢山の妾を囲ってることも、その妾との間に子供までいてその子供に正式に地位を与えたくてラインハルトを使って後宮復活を目論んでいた事も知っていますよ」

ーーわぁ。それは凄い。女たらしもここまでくればいっそ表彰ものである。

「あいにく、後宮復活はさせません。妾の方たちやその子供に特権は与えられません。そんな予算はこの国にはありません」

「わ、儂は国の予算流用などしておらんぞ!」

「もちろん、わかっていますわーーでなきゃ今まで黙ってるわけないではないですか」

にっこり笑う王妃様ー…怖い。

「確かに妾に関してはあなたは個人資産で賄っている。でも、それでは心もとなくなったんでしょう?」

うっと国王が詰まる。

「呆れたわ。個人資産のほとんどを妾に使い果たすなんてーー」王太后さまも頭を抱える。

「数が多い上に見栄っ張りだからですわ、お義母さま」

「1人でも10人でも一緒です!そんなザマで次期国王夫妻に何を贈るつもりなのです!」

ぴしゃりと言う王太后に

「別に私とセイラは気にしませんよ」

レオンがのんびりと返した。

まあ、私もこの国王を"お義父さま"と呼ぶ気はない。国王陛下は国王陛下である。

「えぇ。あなた達はね。でも、建前上そうはいかないわ。考えたのだけど、国王の衣装代から差し引いたらどうかしら?」

王妃様の提案に目が点になる。

「それはいい案ね」

王太后さまも名案とばかりに頷く。

えーと…ここなんか言うべきだろうか。隣のレオン様を見ると、流石のレオン様も固まっている。

「夜会が三日間続くなら当初予定していた分だけではあなた達の衣装が足りないものね?費用は国王の衣装代から天引きするから遠慮しないでうんと豪華なのを作りなさい!」

王妃様の宣言にレオン様が吹き出し、

「わかりました。…ありがとうございます、国王陛下」肩を震わせながら言う。

「よろしいですわよね?国王陛下」

「し、しかし、それでは私が出席するための衣装がー…」

国王は派手好みだ。豪奢な飾りのローブを好む。

「何言ってるの!あなたは作らせたもののろくに着てない衣装がごまんとあるではないですか!新しくする必要などありません!第一、」

そして着道楽でもある。

「招待客が見たいのは王太子夫妻なのだから貴方の格好なんか誰も気にしませんよ」

ーここまで言われてはなんだか気の毒である。

「そうそう。三日間ずっと同じローブを羽織ってても誰も気付きやしませんよ。心配いりません」

王太后さま、そこは心配した方がいいのでは…

「そうね。1日目と3日目は同じ くらいにしといた方が良いかもしれませんわね」

ーーあんまり大差ないです、王妃様。

が、王妃様は はいこの話終わり、とばかりに次に移ってしまう。

「お義母さまも今回は三日間とも出て下さるのでしょう?」

王太后は普段 夜会には滅多に出ない。"自分は隠棲した身だから"が主な理由だが元々"貴族同士の掛け合いめんどくさい"な人なのだ。ーー王妃時代の苦労が偲ばれる。

「もちろん、出席させてもらいますよ…漸く孫の結婚式が見られるのですからね」

「この際です。お祖母様も衣装を新調されてはいかがですか?」

「あら!それは良い考えねぇ…ではそれもプレゼントしたらいかがかしら?国王陛下」

「なっ…」

「滅多に夜会に出られないお義母さまが折角ご出席下さるのに、息子たる国王陛下が何もしないではいられませんわよねぇ?」

「そ、それはそうだが…」

国王陛下はもう蒼白で汗をだらだら流すだけだ。ーー(しぼ)んでしまわないか心配だ。

が、お父様は容赦はしなかった。

「そういう意味なら王妃殿下もご新調されないと不味いのではないのですかな?王太后とセイラだけが王妃を差し置いて新調というのもー…」

「ーあら、いやだそれもそうねぇ…でも…」

ちらっと国王に目線を送る。

「流石にそこまでは、ねぇ…」

セリフと表情が合ってません、王妃様。

「も、もちろん王妃にも贈るとも!それぐらい国王として当然だ!」

やけ気味に発した言葉に大人の皆様がにっこり笑う。ーーなんだか怖い。

「あとは、そうねぇ…第三王妃は隠居を申し出ているのでこの際故郷に帰しましょう。ついでに宰相にも退いていただきましょうか、セイラを他の国へ嫁にやろうなどという勢力は一掃しておかねばーーですわね?国王陛下」

お茶のついでみたいな話の持ってきかたでこんな話ありなんだろうか…

ーだが、真顔になった国王が

「そうだな」

と答えた。


国王の答えに驚いたセイラだったが、セイラ以外からすれば意外でもなんでもない。あの翌日速攻でトラメキア勢の帰国を整えた時と同様この国王もわかっているのだ、セイラの重要性を。

ーそれには是が非でもレオンと結婚してもらわねばならない、と。


「ねぇ?セイラ?結婚したらこの城に住むのだから城内では私の事をマリエル伯母さま、と呼んでちょうだいね?」

いたずらっ子のような茶目っ気で王太后様が言えば「お義母さま!ズルいですわよ?」「あなたはセイラからお義母さまと呼ばれるようになるんだからいいでしょう別に」「ーそれもそうですわね。セイラ!良いわね?私は今日から貴女のお義母さまよ!」

き、今日から?

満面の笑みでさあ呼んでご覧なさい!状態の王妃様を止める人はいない。

「お、お義母さま…?」

「そう!お義母さまよ!今日からそれ以外で呼んではダメよ?さ!すぐに職人達を集めなくては!」

今すぐにでもセイラを連れ出しそうな王妃にレオンがやんわりと声をかけた。

「セイラはまだ休ませないといけませんよ、母上。お忘れですか?セイラは救出されてからまだそう経ってないんです」

ーーそうだった。実際のとこセイラの発見とドラゴンの急襲はほぼ同時だがあれから半日しか経っていないのだ。


「ーそう、だったわね…ごめんなさいセイラ、私浮かれすぎてしまったわ」

「いえ…お…義母さまのお心遣い、嬉しく思います」

いけない。危うく王妃、と言いそうになった。

なんだか"殿下呼び禁止令"を下したレオン様を思い出す。親子だなぁ。

なんて考えてるうちに今夜はもう遅いので、と皆 各々で部屋を退出し始めた。




ー自分以外誰もいなくなった部屋で、

ーー1番ざまぁされたの、国王陛下だったみたいだな?

と小さく呟いたのは誰だったのか。

すみません、誤字等の修正はまた後にm(__)m

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