表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/70

諦観と呆然と報告がもたらすもの

無双継続中。



 その少女が (おそらく)放ったドラゴンを通して声が響いた。

「レオン様。おそらくこの襲撃には複数の国が結託して裏で糸を引いています」

「ーーだろうな」予期していた事ではあるが、この、タイミングはー…

「タイミングに関してはおそらく、ですがー…キャロル・ステインが関わっています」

「なっー?!」

「どこまで関わっていたかは、私にもわかりません。詳しい事はロッド殿下に訊いてください。それと城への対応と報告をお願いします」

「セイラ…」ーー戻って、くるのか?という言葉をレオンは咄嗟に言い出せなかった。両家の父親が白紙撤回を申し出ている以上セイラはここに戻ってくる義務などないのだ。

「それからお父様達への報告をお願いしますお兄様ーー私には、まだやらなければいけない事がありますので」

「ーーそれは、何?」

「戻ってからお話します、ロッド殿下」

「ー結婚式は2カ月後だ、セイラ」

 は?という思いのままにレオン様を見やればその瞳はやたら真剣だった。意味がよくわからないながらも

「そう時間はかからないと思いますがーー」至って普通の調子で返されレオンは安堵の息をつく。

「わかった。戻ったらまず私のーーいや、()()()()()に戻れ。その姿では人前に出られないだろう?リリベルに申し付けておく。私は王宮にいると思うが、少し休んだら知らせてくれ。宮まで迎えに行く」

 ーー確かに。この兄から拝借したマントの下は胸元が引き裂かれた部屋着だ。しかもドラゴンと一戦交えたあと。とても人前に出られたものではない。この姿を見せた後でも変わらないレオン様はやっぱり凄い。

「…ありがとうございます、レオン様。ーー早急に片を付け戻ります」


 云うと同時に白い翼がはためいた。一瞬後に目の前から搔き消え、真昼の空が戻る。

「ーー良かったのか?」

「止める方法があるか?俺に出来る事は、セイラの戻る場所の掃除だ」

「…違いないな」



ーーー



ーー王宮は、いや、レオン達と同じ光景を距離は違えど見ていた ーーていうか見当外れの会議をしていた一同は凍っていた。

もとい、凍りついた様に固まっていた。

先程のフードを被った謎の人物は何者だ?と不審げに見ていた一同に対し同じものをみていた王妃がその人物が手にしていた扇子に目を止め言ったのだ。

「あら、早速使ってるのねー…困ったわ…あれは確かに強い魔力に対応出来るように作られているけどーーここまで強いのは想定外だわ。直ぐに新しいのを作らせなくては。いえ、もう職人や技術ごとこの国(うち)に誘致した方が良いかもしれませんわね?お義母様」「ーー尤もね。贈った扇子(あれ)を使ってくれているという事はまだ望みはあると言う事でしょうけれどー…」

そこまで言って国王の顔を見、王太后は盛大に溜息をついた。


そこへ、見計らったかのように騎士団長からの報告が入った。

「騎士団並びに王宮より遣わされた兵達により城下の民の避難が完了した事をご報告申し上げます」



ーーー

セイラがレオンに救出されたのが午前中、ドラゴンの襲来はその少し前。おそらく夜まで丸一日かけてこの国を屠ろうとしていた連中は予定が狂ってパニックだろう。何しろ群れを放って1時間かそこらで皆(芭蕉扇(仮)で)吹き飛ばされてしまったのだから。

セイラがやる事は決まっていた。連中にメッセージを送りつけること、役目を果たすことー…聖竜からの祝福というのは確かに強大な魔力を行使出来るがタダではないのだ。何があっても、

"役目を果たす分だけは魔力を温存すべし"

ーーこれが聖竜からの力を授かる際の約束であり、条件の一つだった。



ーーー

当たり前のように報告する騎士団長に最初呆然とした国王だがワイエスは言い募ろうとした国王に被せるように淡々と続ける。

「それから、先刻 ご指示通り殿下を追って報告に参りました際レオンハルト殿下が姫様を無事 発見・保護されたのを確認致しました」

国王はごくり と唾を飲み込む。

「また、現在多数のドラゴンより城下の町が襲撃中である事・同時にもたらされたトラメキアからの親書の内容・その内容について審議中である事・ローズ伯が国王陛下の宣言により婚約の白紙撤回を宣言し退席された旨レオンハルト殿下にご報告致しました事を報告申し上げます」

既に知らせた との報告に苦虫を噛み潰した顔になるがそもそも自分が言ったのだ、その旨を告げレオンをここに連れて来い、と。

「そ、それで…レオンはどうしたのだ?」

「姫様の進言により皆様共に城下の民の救出に向かいました」

「何だと?!」

自分はそんな命令は出していない。確かに、そもそも行方不明だったセイラに命令なぞ出来はしないがー、

「セイラは何と言ったのです?」わなわなする国王に頓着せず王妃が尋ねる。

「姫様におかれましてはー…


"私もお父様に賛成です。今現在襲われている町の方が問題ーー説明は後です、今はとにかく私が行けば1番手っ取り早いです。理由はその目でご覧になって。レオン様も、ロッド殿下もです。ワイエス団長、騎士団の皆様は?"


"まだ私の捜索にあたっている隊はいますか?では、全員呼び戻して、町の人たちの避難誘導にまわらせて。王城警備の任についてる者も、門兵以外は出して。魔法を使えない者は市民達の避難場所を確保、魔法を使える者はその場所の安全確保を"


"王城内にドラゴンは来ていないのでしょう?来る前に止めれば問題ないでしょう。

第一この状況で呑気に審議なぞしている方々なら私兵くらい個人で雇ってるだろうし、王宮近衛はいるのだし、多分それで充分"


とのこと。


「な、な…、」

国王の顔が赤黒くなるがワイエスは気にしない。

何故なら確信していたからだ。

彼も見たのだ。避難誘導を指揮しながらセイラー…先程リュートのマントを羽織ってる姿から自分は見ていたのでーー小柄な少女が放った白竜と少女の扇子の一振りが次々とドラゴンを打ち倒すのを。

そして、巨大な白竜が彼女を宝玉のように抱えている姿も。

彼女に従った自分は正しい。

だから、

「な、何故先に報告しなかったのだ?!」

という問いには

「セイラが言ったからですよ。「"審議中(うえ)の方々には、私はもう少し行方不明でよろしいかと"と ね」

「「レオン!」」

「「「レオンハルト殿下!!!」」」

という色々混じった声が答えた主を認めまた喜色、困惑、蒼白と顔色も様々だった。

驚いた顔の騎士団長に「やはりドラゴンだと早いな」人の悪い笑みでそう呟くレオンにさもありなん、とワイエスも頷く。

「只今戻りました。国王陛下、王妃殿下並びに王太后陛下」一応型通りの台詞を並べたてるレオンに国王は咄嗟に言葉が出なかったが王妃は違った。

「レオン、セイラはどうしたの?一緒だったんでしょう?」

「セイラは"自分はまだやる事がある"と先程別れました。そう時間はかからず戻る、との事です」

レオンの言葉に安堵の息が場に溢れる。

「そう。セイラは戻って来るのね?」

「ええ。戻ったら私の宮に一旦戻って休んでるよう伝えましたーー何しろ彼女は今まで監禁されていたのですからーー彼女を拉致した犯人によって」

ーーそうだった。彼女はそもそも行方不明だっのだ。

「それも合わせて報告に参ったのです」

ですが私が体調崩しました…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ