悪役令嬢、覚醒する
前話更新時46辺りまでざっとは書けてたのに何故こんな間が…?
いや暑さに負けたんです_:(´ཀ`」 ∠): 眠れないわ纏まらないわで、せめてお盆までに と思ったんですが 夏 終わっちゃいましたすみません。猛暑生き残ったからには精進して参りますm(__)m
まあ、タイミングの理由は電波ヒロインの企みも混ざっているのだろうがーー
「未来の義兄弟に向かって非道い言い草だな」
「そいつはどうだろうな?元々セイラは嫁にやるには早すぎるってのが俺と親父の見解だし、こんな馬鹿どもばっかの王室に無理して嫁がせる必要もないしなーーそもそも今回の主犯がロッドだって知った時点で親父が白紙に戻してもおかしくないぞ?」
ーー確かに。
とこの時その場にいた全員が奇しくも思ったがー…、
ーー実際まさに王宮で、
「娘とレオン殿下との婚約は白紙撤回させていただきますよ」
とローズ伯が言い放っていた。
ーーそうとは知らないものの、兄の言葉に
ーあ、それ いいかも。なんかここまでこじれるといっそその方がいいような気がする。
と思ってしまったのが顔に出ていたのかどうか。レオン様の顔色が変わる。
「ま、待てっ!償いなら幾らでもする!ちゃんと君たち兄妹の納得いくよう収める!だからー…」
婚約解消だけはやめてくれ、
とおそらく続けるつもりだったと思われるが、激しい足音が響いてそんなレオン様の必死の声をかき消した。
「レオンハルト殿下!こちらですか?!至急王宮にお戻り下さい!大変なー…」言いかけたところに、集まっている面子を見て固まる。
「ワイエス。どうした?」
「はっ…ロッド殿下に…姫様?!よくぞご無事で!!」
ははーっと擬音でもつきそうな大仰さに違和感が否めない。
「詳しい説明は後だ。お前がこうして来るという事は火急の用件なのだろう?」
確かに、只の伝令に騎士団長自ら来る必要はない。
ーー常であるなら。
「はっ…一刻程前、王城からほど近い城下にドラゴンの群が飛来し町を破壊し暴れまわっております」
ーは?
て思ったのは私だけじゃないと思う。
レオン様が息を呑みつつ問う。
「ーードラゴンの、数と被害の規模は?」
「ドラゴンは少なくとも30数体を確認。城下の町は悉く焼かれ又は地割れを起こし、噴き出す水で次々に破壊され民衆の避難も思うようにいかぬありさまーこのままで行きますと城下の町の壊滅は免れぬかと」
「「「っ!」」」
「何という事だ…」
レオン様の舌打ちとロッド殿下の呻きが重なる。
だが、続いた報告は更に頭痛がする内容だった。
「しかも、その報告とほぼ同時に届いた親書がございまして」
「親書だと…?」
「は。それが、此度のドラゴンの襲来を予期したような内容で…」
「トラメキアからか?」
「はい。それによりますと…、」
騎士団長がちら、と私の方に目を走らせ口ごもる。
その目線に気付きつつもレオン様が先を促す。「構わぬ、申せ」
「も、申し上げます。トラメキアからの書状によりますと、此度の災難まことに貴国にお見舞い申し上げる。両国の信頼と親愛の証の為トラメキアからの援助が必要とあらばいつでも声をかけろとの旨…だが、援助を請うのであれば正式に使者を立てろと…そしてその使者にはセイラ様を我が国は指名するとの内容でございました」
!!
「ふざけた真似を…!」
レオン様の怒りを他所にワイエスはやけ気味に続ける。
「国王や大臣がたは既に審議に入っております殿下がたも…」
「?審議だと…?」
「はっ…国王・宰相が中心となって、その…」
「渡す方に傾いてるわけか?」
これにはその場にいる全員が絶句した。私も含めて。そしておそらく全員が思った。
ーーアホか。
本人がいないのに審議してどうする。
身代わりでもたてるのか?
まさにその通りの事を、ローズ伯は議々の場で言っていた。
ドラゴンの群が町を襲撃している。
との報告から幾分と経たずにトラメキアから届いた書状により、あちらの要求はセイラ姫であると読んだ王は急ぎ主立った貴族を集めその旨を報告した。
「では急ぎセイラ姫にその使者として立っていただきましょう」との宰相の言葉に賛同した者もそれなりにいたが、当然「脅迫に屈してはあちらの思う壺ではないか」「セイラ姫を渡したところであちらが約束を守るとは限らない」「セイラ姫は我が国の王子の正式な妃としてお披露目されたばかり、それをあっさり他国に引き渡すつもりなのか」との声があがった。
だが、「彼女には気の毒ではあるが姫1人と国一つでは話にならぬ」との国王の鶴の一声ー…に居並ぶ人々はおし黙…るのではなく
「バカかあんたは」と言うひと言が響いた。
「ロ、ローズ伯…」喘ぐような国王の声に頓着せずローズ伯は続ける。
「バカだ バカだと思ってはいたがーー娘は未だ行方不明のままなのですぞ?いない者をどうやって差し出すつもりなのか、それとも国王陛下におかれましてはセイラに良く似た年恰好の隠し子でもおられるのですかな?」
室内にそうだった、という空気と
知らないぞ、そんな話
というざわめきが満ちた。セイラが行方不明、捜索中である事は一部を除き秘匿されていたのである意味当然である。
「そんな議論をしている場合ですかな?わかっておられるか?ドラゴンは町を焼き尽くしたら次は王城にあがってきますよ?
焼き出された民達も。まずその民達の避難先確保、またそれを主導するのが我々の義務でありましょうーー他国のご機嫌取りなど後回しでよろしい。と、いう事で私は失礼させてもらいますよ。主だった者がここに来てしまっているので現場は今大混乱でしょうからな」立ち上がって扉に手を掛けたローズ伯はさらに「そうそう、娘とレオン殿下との婚約は白紙撤回させていただきますよ」とついでのように言い放った。「マリウス!許しませんよ!そんな事はー…」「ここばかりは引きませんよマリエル王太后…何より先程国王陛下自らが娘はトラメキアにくれてやると宣言なさった、即ち婚約は破棄された と受け取って構わんでしょう。もう王城に娘を置いておく理由もない。セイラは我が息子リュートが見つけ次第我が家に連れて帰ります。では失礼」
ローズ伯爵が言い、バタンと扉が閉じられる。
残された者達は、何とも苦りきった表情を互いに見合わせた。
「しかし、国王の"1人の姫と国一つでは較べるべくもない"との言葉を受けローズ伯はでは此度の婚約は白紙撤回、セイラ様は見つかり次第リュート殿に実家に連れ帰らせてもらうと宣言し王太后様の制止もきかず現場の指揮を取るのが先だと退出されました」
「あちゃぁ…」と兄が頭を抱え、レオンが
「あの狸親父…また勝手にそんな真似を」
盛大に舌打ちするレオンに
「言っちゃあ難だけど、お前の親父って…」
「言うな」
「風見鶏みたいだよな?」
「言うなといってるだろう!」
言葉こそ強気だが声音にはいつもの強さが感じられない。
二人のそんな様子を尻目に、私の頭の中で盛大に何かが弾けた。
ーそれこそ、パキパキと何かが崩れ、また精密なジグソーパズルのように頭の中にピースが嵌め込まれていく。
そんな感覚。
やがて、
ーんな事やってる場合か。
前世の私が中でささやく。
ーー「全くだわね」
現在の私が声にして応える。
「?ーセイラー…?」違和感を感じたのだろう、レオン様と兄の気遣わしげな声が重なる。
それに答えはなく、セイラの纏う雰囲気がすぅっと変わった。
ローズパパも最強。
主人公無双、次話から開始。




