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悪役令嬢、ほっとする

読んで下さってる方々、ブクマして下さってる皆様、評価を付けて下さった方、ありがとうございます!励みになります。

屋敷に戻ると執事に

「お帰りなさいませ。お嬢様」

と出迎えられる。

「ただいまクラウス」

返すと同時に玄関ホール近くの扉が開いて兄が顔を出す。

正直、今は会いたくなかった。

うわ、というのが顔に出たのかどうか。

「随分遅かったな。昨日起き上がれるようになったばかりだろう?」

まだ夜とは言っても早い。行き先は告げて言ったし咎められるような時間でもない筈だが。

「城に向かったのは昼過ぎだろう?見舞いのお礼だけにしてはかかりすぎじゃないか?何かあったのか?」

あ、そっちか。

出来れば黙って部屋に引っ込みたかったが仕方ない。

「王妃様に御挨拶してすぐ帰ろうと思ってたのですが…、殿下にお会いして」

聞いた兄が僅かに眉を寄せる。

「で?」

え 何その反応。普段殿下以外の男性との会話には口うるさいけど殿下に関しては何も言わないのに?

「何かあったのか?」

同じ質問をされる。

まさかさっきの事を知られているのかと思ったがそんな筈はない。

じゃあ王妃様に話した事が既に伝わってるのかと思えばそんな様子でもない。というか家に知られてたら即家族会議という名の魔女裁判だろう。

「いえ、特には…夏の祝祭にドレスを贈るがどんな物が良いか、とか仕立て屋を寄越すとかその…色々?」

色々の内容が問題だが嘘はついてない。この兄はやたら察しが良くて大体私の嘘は看破される。

なので話しても良い部分だけを抜粋して切り抜けを計る。

「…そうか。ドレスの打ち合わせか。そりゃあ時間もかかったろうな」

呆れた様に兄が言い、

「?」

色々って何だ?と突っ込まれる、と身構えていた私はその兄の反応に違和感を覚える。

「体調はもういいのか?」

「はい。」

元々後半病気じゃないですからね。


「これ以上入学から日が経ってしまえば授業についていけなくなってしまいますから、直ぐにでも入寮し、通い始めるつもりでいます。」

「学園はともかく寮はまだ無理じゃないか?起き上がったばかりだろ?」

「入寮手続きは入学前に済ませておりますし、部屋もすぐ入れるようにしてありますので。元々全寮制なのですから、病気だからといっていつまでも自宅からという訳には参りませんでしょう?」

「そもそもまだ通ってないんだから何日もとかおかしくないか?自宅療養してただけだろう」

ーーバレましたか。ほんとは早くヒロインの情報が欲しいんです。だから早く学園に行かないと。

「お前の通学と入寮については医師と父上と相談して決める。今日はもう休め。顔色が悪い」

あ、やっぱりそうですか。直ぐは無理ですかそしてやっぱ顔色悪いですか?確かに私は人より無駄に色が白い分、白を通り越して青白いと言われたりするが、家族は慣れている筈だ。その身内にさえ言われてしまうとは。


「…はい」

軽く礼をして部屋へ向かう。

そして思う。一体あの兄は何の為に私の帰りを待っていたのだろう?

わざわざ玄関近くの部屋に待機してまで。帰ってきた所をピンポイントで話しかけてきて、内容がアレである。

兄が超シスコンであるなら別段おかしくはないがあの兄はそんなタイプではない。

そんな事をつらつら考えつつ漸く部屋に着いて中に入り、鍵をかける。入ってきたドアに背中を預けたまま私はずるずるとその場にへたり込んだ。


……無事に帰ってこれて良かった……


はぁーーっと思いっきり息をつく。

やはりここにたどり着くまでは気が抜けず、着いた途端、一気に疲労感が押し寄せる。こ、怖かった…何しろ今世・前世含めキスの経験すらないのだ。一足どころかハイジャンプしすぎだ。

あのまま殿下が引いてくれなかったらどうなっていたかーー

少なくともこんな時間に帰ってくる事は出来なかったに違いない。


何だったんだ、今日のアレは。

確かに殿下は会う度必ず君を妃にする、待っていてくれ。とか良く言ってたし、私は単純に喜んでたけど。

そんなの私だけに言ってるとは限らない。婚約者候補には公爵・侯爵令嬢始め7~8人の令嬢がたが名を連ねていた筈だ。私よりずっと華やかで美しい方達が。その方達に私より冷たく接してる理由があるだろうか?

いや、ない。

まあ確かに貴族らしく攻めてくる令嬢がたは苦手っぽい部分があり、だからこそ今から現れるヒロインを好ましく思うのだが。


…私室に女性を連れ込む、とかいつもやっているのだろうか。なんかやたら慣れてたし。というか覚えてる限りでは私が候補に加わる前も後も、殿下の横にはいつも違う女性が貼り付いていた。王族は総じて早熟で結婚も早いのが通例ではあるが…だからこそわからない。何故候補の中でも1番子供っぽい私にあんな真似を?

怒らせたからだろうか?たかだか伯爵家の小娘が辞退したいなどと生意気だと思われたのだろか?

だから怒りに任せて痛い目みせてやろうと思ったのだろうか。

…それって…

なんか今迄の殿下のイメージがガラガラと音を立てて崩れてくが仕方ない。とにかく考えをまとめよう。


私は机に移動してノートを広げる。記憶が戻りだしてからとにかく思い出せる限りを書き記したノートだ。勿論人に見られたりしたら不味いので魔法をかけてある。私以外が触れても開かない魔法。私が手で触れて私の声でキイワードを唱えないと開かない特別なノート。防犯対策は万全だ。


ノートを見返しても殿下のあの行動の手かがりになるような事は何もない。


て事はやっぱり…殿下の思い付きの行動?

私のイレギュラーな突発的行動に対して殿下がした反応…これはやっぱりゲームじゃない。


…本当に未遂で良かった……!

いくら許可なしに入れない私室といえど殿下の身分なら側仕えの人数も多い。そしてその者達はプロフェッショナルだ。殿下が部屋に女性を連れ込んでようが顔色一つ変えずに対応するだろう。

そして私だってあの状況で1人で身支度を整えるなんて絶対出来ない。嫌でも王城の侍女達に世話になる事になるだろうし、それ以外の人達の目にも焼き付ける事になるのだろう、殿下の私室から朝帰りする私の姿を。


殿下のお手付きになったのだと認識され、それは必ず人の口の端に乗って拡まる。

「ローズ伯爵令嬢は殿下のお手付きになった」…

”既成事実を持って婚約”というのはそういう事だ。

そのまま婚約・結婚という流れになれば問題ないが、もし、婚約中に殿下が別の令嬢に心変わりして破棄、なんて事になったら。ーー

私はぞくっ…と身震いした。

ーー14歳にして傷物の伯爵令嬢ーー

ある意味、断罪イベントより残酷だ。まともな結婚はまず望めない。殿下のお手付き、を自分の物にして喜ぶ変態ならいるかもしれないが願い下げだ。社交界デビューも出来ず修道院に行くしかない。

あの行動がもしヒロインに出逢った後であったなら、

私を選んでくれた、いや選んでくれるのかもしれない。

と希望も持てたかもしれないけど。

殿下はまだヒロインと出逢っていないのだ。そんな希望は到底持てない。

だとすると、やはり私が辞退しようとしたのが自分をバカにした、或いは王妃様を通した事で恥をかかされたと思ってるのかもしれない。

だから、傷物にしようとした?

それが1番しっくり来るのだがそうすると前後の態度が解せない。


私は最後に加えられた候補で、それだって殿下の傷を回復魔法で治したのがきっかけってだけで。元々1番になれるとは思ってなかったが、候補の令嬢の1人として会う時は殿下はいつも紳士的で優しい、憧れの王子様だった。年を経るごとにそれは間遠になってはいたけど。

今日だってそうだ、未遂の後は妙に私を気遣っていた。

傷物にしようとした相手に対する態度ではない。何故だ。………

わからない。考えすぎてわからなくなった私は、

…4を重点的にやる事にしよう。そうしよう。と結論付けて思考するのをやめた。

次話、週末中か週の始め更新を目指します。

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