ヒロイン、返り咲く?
…七夕ですね…雨ですが。
こんなに開いてしまってすみません、まさか1カ月超えちゃうとは…いや書き溜めはちゃんとしてたんですよ?ただ書いても×2終わらーないー(゜∀゜)♪ +書き散らし過ぎて自分でも良くわからなくなってきてしまいまして(^^;)
漸くちょっと纏まってきました!後でいっぱい直しがかかるとは思いますが….どんどん展開していきますよ!
ーどうしてここに。
いや、それよりもーー何故彼女がここにいるのか?
あの騒ぎの処分でラインハルトは王室除籍こそ免れたが王位継承権は剥奪され、個人資産はごく一部を除き没収、その上で極めて微妙な外交具合の遠国ーー要するに人質ーーとして無期限留学という形で国から出された。
もし外交が悪化し開戦にでもなれば即殺されてしまうが、上手くすればあちらの姫君なり貴族の令嬢なりたらしこんで婿入り出来るだろう、という精一杯の温情だ。
取り巻き達は学園への寄付と王室並びに私への慰謝料の支払い、本人達には社交界からの追放を言い渡した後 処分は各家に任せるとした。結果全員が後継からは外されたがその上で甘いところでは他国に留学させ、ほとんどが修道院送り、厳しいところでは一番身分低い他家へ養子に出される というものだった。キャロルに関しても同じような処分で済む筈だったのだが最後の私への「処分すればよかった」など殺害をほのめかすような暴言によりステイン子爵家は取り潰し、本人は魔法封じをかけられた上で他国に有している1番過酷な強制労働所送りとなり、既に護送されてるときいた。
「ああ!この時をどんなに待ち望んでいたか!やっぱり貴女にはその中の方がお似合いよ?ねぇ?」
私は答えない。
が、
ヒロインは嬉々として続ける。
「ほんとに、レオンハルト王子もルキフェル皇子も、学園のみんなも!みんなして悪役令嬢なんかをもてはやしてーー 一体なんなの?ヒロインは私なのに!でもーーようやく元の通りに修正出来るわ。悪役令嬢とヒロインの逆転現象なんて私は認めない。ーねえセイラ様?私が何にも準備してないとでも思いました?」
「!」
ーー確かにそうだ。これは私も心中で舌打ちするしかなかった。
私が断罪されないように、若しくは断罪されて追放されても大丈夫なように備えてたように、
彼女も記憶があるなら尚更。
ーー逆にざまぁ展開になった場合に備えてヒロインが何も準備してない筈がないーーこれは私の手落ちだ。レオン様に任せきりで、レオン様が間違いなく労働所に到着した旨の報告を受けた との言葉に安心して、自分で確かめる事をしなかった。
記憶に踊らされないようにしていたつもりだったのに、そこまで気がまわらなかった。
少し考えればわかる事なのに、逆に断罪イベント後のヒロインの事など描かれてなかったからーー思い至らなかった。
自分が思ったよりずっと前世の記憶に振り回されていたと思い知る。
だが、どうやって?
「だって私は魅了魔法持ちだもの。貴女とちがって」
「?」
勝ち誇ったように言うキャロルに私は疑問の視線を投げる。なら、何故レオン様や黒太子に使わなかったのだろう?私の疑問がわかったのか
「っ魔力が強い相手には効かなかったのよっ!ラインハルトには効いたのにっ!もう!レオン様にも黒太子にもリュート様にも効かないなんてっ!ーーまあ、でもいいわ。結局こうして成功したんだしー先ずは牢の番兵、次に私の護送担当兵、後は書類上は私はあの僻地に行ってる事になってるから追っ手も来ない。ね?完璧でしょう?」
成る程。確かに、上手くやったのだろう…だが…あの襲撃は?
「後は騎士団の何人かを魅了して、あの場でレオン様と貴女を切り離して」
あの騎士達の声、演技だったのか。道理で違和感があった筈だ。
「貴女を1人で王宮から連れ出すのだけは難しかったけどー…あのユリウスという護衛だけはいつも貴女から離れないし、私の魔法も通じないし…でも、それも殿下の協力で解決したわ」
ちら、とようやく背後の人物に笑顔をみせ
「ご協力感謝しますわ。ロッド殿下」
そうーーあろうことかキャロルの協力者としてそこに立っていたのはーレオン様より1つ年上の第1王子…ロッドハルト殿下だった。覚えてる限りこの人は敵でも要注意人物でもない。レオン様との仲も悪くはなかった。
「ほんとに長かった。貴女が王宮で大事にされてる間、私は家まで取り潰されて身を潜めていなければならないなんてー…」
いや、取り潰した張本人アンタだから。
「私はこんな目にあうためにここにきたんじゃない。誰よりも愛されて幸せになるためにきたのに」
自己陶酔するその様子にツッコミの一つも入れてみたくなるが逆上されると面倒だ。
それよりも
きたー…てことは転生者じゃなく転移者?道理で人を始末、とかに躊躇いがない筈だ。所謂ゲーム感覚なのだろう。
ゲームじゃないから痛いメみてるんだろうに、わかってないんだろうか。
「全く、あんなにレオン様があなたに夢中だなんて計算外もいいとこ。一体、あなたなんかのどこがいいのかしら?」
ーーそういえば。
なんでだろ?
そもそも好き とか愛してる とか甘く囁かれた事なんかない。
言われたのはー、妻に決めた とか妃は私だけだとか、抱きたいとか、閉じ込めたいとか…
あと
胸に顔をうずめたい。
キスの拒否は許さない。
とか
言ってたような…
…ーーこれ以上考えるのはよそう、うん。いずれにせよ並べてみると物騒な言葉ばかりなのにどうしてああもあっさり受け入れてしまえたのか?といえば
ーーなんかもう、あそこまで行動と態度で示されてしまうともう疑いようがないというか…
「ちょっとばかり育ちが良くて礼儀作法が綺麗ってだけでレイディ・ローズだなんて」
いや それ私も知らなかったんだけど。
でも、私がレオン様の候補になったのが10歳の時、ヒロインが子爵家に引き取られたのだって同じ頃の筈だ。淑女教育だって普通に受けられたはずーー本人にそのつもりがあったのなら私と同等のマナーくらい入学前に身につけられたはずだ。若しくはお兄様に「何もわからないくせに口突っ込んできて煩わしい」と言われない程度の知識くらい詰め込んどくとか。
ヒロインだから なんて設定だけに頼らず自分を磨いて、堂々と渡り合って王子様をゲットすれば幸せだって掴めた筈だ。容姿にも魔力にも恵まれているのだから。この国は貴族階級制度のある国ではあるが同時に成り上がり上等な国でもあるのだ。男爵令嬢だって子爵令嬢だって歓迎された筈だー妃に相応しい人物であったなら。
ーーなんて言っても火に油だから言わないけど。
思いつつ、ヒロインの手元に目をやる。
王妃様にお祝いにといただいた扇子がキャロルの手にある。髪飾り同様、王妃様が私にと異国で特別に作らせたものだ。
私の目線に気付き、
「本来なら私がもらう筈だったんだもの」ヒロインはそれを手に得意げに にっこり笑う。
(貴女に使いこなすのは)「無理だと思うわよ?」一応老婆心から言ったのだが、
「負け惜しみは見苦しくてよ…ほんとに素晴らしい細工…貴女には分不相応よ」
私にこそ相応しい。
そのうっとりした様子に
ダメだこりゃ。電波系ヒロインさんではない と思ってたのに今では完璧に電波系ヒロインさんになってしまっている。
そんな頭に花が咲いてしまったらしいヒロイン・キャロルは楽しそうに続ける。
「ほんと、素晴らしいドレスですわよね。ひっぺがしてやろうと思ったけど、もっといいことを思い付いたの。ーー私は本来なら貴女が断罪されなくてはいけない場で断罪され投獄された。ーーだから貴女にも同じ目に合ってもらうわ。いいこと?貴女は敵国の間諜とあろう事か通じていたの。昨夜の式典で武装した輩を内部へ手引きしたのは他でもない貴女。貴女は敵国のスパイと通じ、それに気付いた私を陥れたー私は必死に貴女の監視下から逃げ出してこの国の危機を知らせ社交界の華に返り咲く。ー素敵な筋書きでしょう?」
いやそもそも咲いた事ないだろ。
「もう証言してもらう間諜は用意してあるの。貴女は裏切り者として断罪されるのよ。ーーでも ねぇ?それだけじゃつまらないわ」
にんまりと笑うその顔は
実に楽しそう かつ 醜悪。
「断罪される時、貴女にはボロボロになっててもらいたいのよだからー貴女に乱暴したくてたまらない男たちを集めてあるの」
「!」
「あぁ、漸く表情を崩してくれましたね。その顔がみたかった。いつも取り澄ましてる貴女の怯えた顔…なんて素敵。貴女はこれからそのドレスごと男達に引き裂かれて悲鳴をあげて泣き叫ぶのよー…」
恍惚と語るキャロルに正気はもはや見出せない。私はぞくりとした。
「だって、やっぱりあなたは悪役令嬢として退場すべきよね?」
魅了魔法…文字通り相手を魅了して思い通りにしてしまう魔法。無自覚に好きな相手に発動してしまう程度なら問題にならないが強すぎると相手を洗脳・傀儡化してしまう為使用は禁止されている。
国内でレオン達が放ってるのが隠密、国外から来たのが間諜って感じですかね、やってる事は大して変わらない、日本的には忍者みたいなもんです(笑)




